第42話 仕方がないので
あの場を離れたかったので、適当に進んでいたら、またもや発見。
まあこの流れだ、大型生命体を見つけてしまったんだなこれが。
当然ながらハンター達がストライキ中なので、誰も戦っていない。
街が次々と破壊されていく。
ハンター達もこんな結末は望んでいないだろう。
いくら総理が無能で酷いと言っても、一般人が巻き込まれていいはずがない。
確かにこれはこれで、ハンターの重要さを知らしめる機会になるかもしれない。
だが破壊された街を見てしまえば、一般人のハンターに対する感情は悪くなる。
これではいけない。
俺の思っていた方向とは違ってしまっている。
どうやったらいいんだ?
大型生命体=魔物だな・・・・が、目の前に居るのに俺はついそんな事を考えてしまっていた。
「俊也さん!」
は! こんな場合じゃない!
俺は急いで安全な場所へ向かい、カードを探す。
【複製】スキルがあるのでどんなカードでもいいっちゃあいいんだが、最近の定番は【総合武術】だ。
これがあると【投擲】【身体強化】の効果まであるようなので非常に使い勝手が良い。
ついでに言えば、格闘系や各種武器にも対応している、何ていうかイイのかこれ?みたいな。
所謂ぶっ壊れ系スキルだな。
だから最近はこれ一択だ。
今まで数枚のカードを使う必要があたのが、これ1枚で済む。
まあ俺と一樹は自前のスキルがあるので、いざとなればカード無しで行けるが。
さて、今回の敵さんは兎だな。
兎は普通大人しいのだが、何と言っても大型化すると性格が真逆になってしまうところがある意味ヤバい。
それに動きも遅いはずが、強烈に飛び回ってしまう凶悪さ。す、素早い!
さらにいけないのが排泄物だ。
まあ糞だな、糞。何せ数が多い。
今はいいが片付けが地味に面倒だ。
一樹は流石だ。
エースを張っていただけに、危なげない。
一方の俺はと言えば・・・・ぐは!!!!
いかん、余所見をすればこれだ。
死角から別の兎から体当たりを喰らってしまった。
ドゴッツ!!!!!!
木にぶつかってしまった。
身体強化の効果が総合武術には含まれているので大したダメージにはならないが、それでもノーダメージという訳にはいかない。
それに木へとぶつかった衝撃で肺の空気を吐き出してしまったせいか、息ができない。
いや、酸素が無くて苦しいだけか?
俺は【回復】カードを手にし、使った。
深呼吸をし、仕切り直し。
どうしてカピバラといい兎といい、元が温和な生命体はこうも凶暴化するのだろう。
ギャップがあり過ぎて対処に困る場合がある。
では再始動だ!
・・・・
・・・
・・
・
ふう、終わった。
俺はもう肩で息をしていて汗だくなんだが、一樹は息も乱れておらず汗もかいていないように見える。
つまり無駄な動きを極力排し、必要最低限の動きで兎を仕留めたって事だ。
うーむ、俺はまだまだだな。
「そんな事ないのに。」
一樹がさり気なくフォローをしてくれる。
良いんだ、これが才能の差ってやつさ。
センスか?
「そう言ってくれるとありがたいが、しかしこのままでは駄目だな。」
「何が駄目なのかしら。」
「総理の愚かさに対するハンターの、ハンターギルドと言うべきか?その対応がさ。」
「やっぱり政界に進出する?」
「いや、もっと違う事を考えている。ただ、やり方を間違えると日本中がパニックになるから慎重にせざるを得ないかも。」
「スキルホルダーになる条件の公開?」
「そうなんだが、菊次郎達って結局どうなったんだろうな。」
「さっきはそう言った話が無かったわね。一度スキル学校へ戻ってみる?」
「それもいいが、一度元居た支部に戻って確認してみよう・・・・それに大した荷物が無かったとはいえ、自分の住んでいた場所も気になるからな。」
スキル学校で世話になってから、実は一度も戻った事が無い。
着替えと食器、少量の私物だけだったからな。
カードなんかの貴重品は全て持ち歩いていたし。
そしてスキル学校では衣類は全て良質なのを新調し、あるいはサイズが合えば貰っていたしカードも豊富にあって換金して金も手に入っていたから戻る必要が無かったんだよな。
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