スキルがなくて王族に捨てられたけど、実はスキルを想像で作れちゃうチート能力だった。
あずきもち
プロローグ
第1話
「おぎゃー!おぎゃー!」
「おめでとうございます!元気な男の子です!」
俺は貴族の子としてこの世界に生まれ落ちた。
「良かったわ!あなた!」
「ああ!これで跡継ぎには困らない!」
両親は跡継ぎが生まれたことがよほど嬉しかったのか手を取り合って喜んでいた。
ここまでは俺にとって最高の展開だった。
俺にはシンヤという名が付いた。
生まれてから5つの年を取るまで俺は両親に大切に育てられてきた。
何をするにも執事やメイドがつき、たっぷりと愛情を注がれて育った。
そうあの時までは。
5歳になったとき、両親はスキルの鑑定士を連れてきた。
ここではみんな5歳になったときに何か一つスキルが発現する。
魔法を使えるようになったり、剣術が凄く上手くなったり、心が読めたり、それこそ他人のスキルが見れるようになったりする。
何か一つ、人よりすぐれた特徴になると思ってくれたら良い。
みんなだいたいそのスキルが生かせる職業に就く。
逆にスキルがなければ、やりたくてもスキルを持っている人にどうしても勝てないという残酷な現状もある。
「うちの子はどんなスキルが付くのかしら!」
「俺たちの子だからな!戦闘系のスキルなんじゃないか?」
俺の両親は、魔物を倒す功績をあげて貴族になったらしい。
父は剣術、母は魔法が使えるスキルを持っているとメイドさんから聞かされた。
「ではこの子のスキルを見てみますね、、」
俺もどんなスキルが付くのかこのときはドキドキしていたんだ。
でも鑑定士が下した判定は
「、、、、、ない」
「え、なんですって?」
母は聞き取れなかったのか鑑定士に聞き返す。
「残念ですが、この子にはスキルがありません」
「そんな馬鹿な!誰しもがスキルは一つ持っているんだぞ!うちの息子だけないなんてそんなことあるか!」
「本当に見えないんです、、。」
「お前、さては詐欺師なんだな!今すぐ出て行け!」
父親も事実が受け入れられないのか、狼狽している。
まあ、それも無理はない。今までスキルがない人間なんていなかったんだから。
それから両親はありとあらゆるスキル鑑定士を連れてきたが、皆揃って口にするのは
「スキルはない」
ということだった。
両親もようやくそれが本当に事実であると認識したのか、嘆き始めた。
「どうしてうちの子だけスキルがないのかしら、、」
「俺にも検討がつかない。」
最初にスキル鑑定士が来てから半年も経つ頃にはすっかり王都の噂になってしまっていた。
いままで仲良く遊んでくれていた年が近い友達もみんな離れていってしまった。
その時は俺もスキルがない自分を呪うくらい悲しかった。
「あのお宅の子、スキルないらしいわよ」
「知ってる、知ってる。なんでそんなことになったのかしらねぇ~」
こそこそとどこに行っても陰口が飛び交うようになり、ありもしない噂も流されるようになってしまった。
そこまでされて両親はだんだんと壊れてしまったのだろう。俺との会話が徐々に減っていき、最後には俺を居ない物として扱うようになったのだ。
メイドに話しかけても、執事に話しかけても返事はない。
食事の準備もされない。
本当に辛い日々だった。
ただ一人だけこっそりと俺の面倒を見てくれていたメイドさんがいた。
その人は食事がない俺に自分の食事を分けてくれたり、空いた時間に勉強を教えてくれたりしていた。
だけどその人も、俺の面倒見てることがばれてクビにされてしまった。
そしてそのすぐ後、俺は両親に連れられ山に捨てられたのだった。
殺されないだけマシだったけど。
父も母も武力的にはめちゃくちゃ強いから殺そうと思えばいつでも殺せたんだろうけど、さすがに実の子どもは殺せなかったから捨てるっていう結論になったんだろうな。
でもそれからの生活は酷かった。
なにせ殆ど何も出来ない当時7歳の子どもだったんだ。
生きるために必死だった。
落ちている物は何でも食べたし、ぼろぼろになりながら命を守るために木の枝で動物と戦ったりもした。
それも2週間が限界だったけど、、
「大変!男の子が倒れてる!」
「なんだって!早く村に運ぶんだ!」
こうして限界を迎えた俺は山の中でぶっ倒れていたんだが、運良く近くに村があったらしく、底に住んでいる村人に助けられた。
「大丈夫かい?」
目を覚ますと、そこには年を取ったおばあちゃんが居た。
「うわっ」
「そんなにおどらかなくてもええじゃろう。ほれ、これを飲め。」
「これは、、?」
「これは薬屋がつくってくれた薬草汁だ。少し苦いが体調はよくなるぞい」
言われたとおりに飲む。
、、、、、苦い。
だけど少しずつ体が元気になっていくのを感じた。
「あんた、なんであんな所で倒れてたんだ。」
「それは、、、両親に捨てられて」
「なんでそんなことになっとると?」
「僕にはスキルがなくて、、、それで捨てられました。」
「そんなんで捨てられたんか。そんなのなくても子どもは子どもだろう」
この人は僕にスキルがなくても全然嫌悪感を抱かないのか、、
「名前はなんて言うんだい?」
「、、、シンヤです。」
「シンヤね。私はシーレ。村のものからはシー婆と呼ばれておる。」
「シー婆、、」
突然扉が開いて中に人が入ってきた。
「シー婆!今日、倒れてた男の子を拾ってきたってほんと!」
「こら、アイラ!静かにせんか!」
「ごめんなさい、、」
シー婆に怒られて、アイラと呼ばれた女の子はしょんぼりしてしまった。
俺は全然大丈夫なのに、、
「君は、、?」
「私はアイラっていうの!男の子が来たって言うから気になっちゃって。」
アイラの話を聞いていると、この村にはアイラと同じくらいの男の子はだれも居ないらしい。
「お友達になってくれる?」
「もちろんだよ。」
これが俺とアイラの出会いだった。
そうして村でしばらく過ごしているうちに俺も村に馴染んできた。
ここはスキルがない俺にも優しく接してくれた。
畑仕事や狩りに参加して村の人一緒に仕事して、充実してた。
スキルがなくてもこの生活が続くなら全然良いかななんて思っていた。
だけど、そんな生活も長くは続かなかった。
ウーーーーーーー!
けたたましいサイレンの音が村中に響いた。
「敵襲じゃ!」
シー婆が叫んでいる。
俺はサイレンの音で目が覚め、外に出た。
そこには魔物がいた。それも大量に、、。
俺が外に出た頃にはあちこちで村の人たちが魔物と戦っていた。
でも魔物が強いのか、村人が一人、また一人と喰い殺されていく。
俺と一緒に狩りをしてくれたひと、俺と一緒にご飯を作ってくれたひと、、
俺の居場所が荒らされていく。
「助けて!!!」
呆然とその光景を見ていたが、アイラの叫び声に我に返った。
「アイラ!」
俺はその叫び声の方に向かった。
アイラの居る場所につくと、今にもアイラは魔物に襲われそうになっていた。
アイラの前にはアイラを守って戦ったであろうアイラの両親の亡骸が転がっている。
「シンヤ、、、」
アイラは膝から崩れ落ちながらこっちをみている。
俺は落ちていた木の枝を持って無我夢中で魔物を攻撃した。
が魔物は気にすることもなくアイラに狙いを定める。
くそ。この枝が剣だったら!!!
そう願った瞬間、俺が手に持っていた枝は剣に変わっていた。
「わあーーー!」
その剣で魔物を斬りつけた。
魔物は真っ二つになった。
これでアイラを守れた。
と安堵したのもつかの間。
「危ない!」
アイラの声と同時に魔物に腹を貫かれた。
「くそ、、、、」
これじゃあ結局アイラを守れないじゃないか、、
治れよ、、!
そう願うと俺の腹は何事もなかったかのように傷がなくなり、痛みも消えた。
その後はどうやってこの場を切り抜けたか分からないが、俺はアイナだけはなんとか守り切ることができた。
これが俺の10年前の始まりの出来事だった。
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