閑話 ある木壁遺跡の話 二

 個体名ハモンが施設防衛スライムガードに攻撃を開始。

 本施設は戦術的価値が無い為、戦闘能力にとぼしい侵入者捕縛ほばく兵装しか保有しない。

 個体名ハモンが本施設防衛要項による警告を無視した場合のみ本施設の自爆装置の起動が可能。


 個体名ハモンがスライムガードへの攻撃を停止。

 仮想理科室の絵画かいがへスライムガードを回収した事で戦闘態勢の解除を確認。


 本施設防衛要項にのっとり防衛行動を終了。

 新たに防衛出動要請ようせいはっせられるまで防衛設備は待機状態とする。


 個体名ハモン、個体名ユウゲンの脳内ナノマシンのスキャンを完了。

 対象の活動記録より両名の主な拠点きょてんは本施設均衡きんこうの都市と断定だんてい

 仮に知識レベル制限の無い亜人を発見した際には派遣命令を下し個体名ハモンの電磁特性の検査をこころみる。


 亜人四名の本施設からの離脱を確認。

 会話内容より都市在住の亜人が本施設の調査におとずれると推察すいさつ


 個体名ハモンは本施設の調査依頼を拒否きょひ

 保持する付喪神つくもがみめいは使用される個体名カズハ、並びに娘ユズハのナノマシン情報より罅抜ひびぬきと判明。合致率95%以上に調整された亜人2名分のナノマシンを使用した高い流体金属操作能力を持つ付喪神と断定。

 なお、高い流体金属操作能力は刀としての性質に限定されている。その為、個体名ハモンは単体の脅威に対しては驚異的な戦闘力を誇るが、集団的脅威に対しては一般的な刀剣使いとしての対応能力しか持たないと推察。


 結論。

 個体名ハモンを本施設にて調査するには複数の亜人を支配下に置き拘束こうそくする事が最適解。

 なお、現状で複数の亜人を本施設の支配下に置く事は不可能。


 代案だいあん

 虫獣むしけものを始めとする知識レベル制限を持たないナノマシンを保有する動植物の使用。

 ただし動植物は人間的思考プロトコルを保有しない。

 よって本施設への誘拐ゆうかいおよび電磁特性の検査という作業指令を正しく受け付けない。

 結論。

 代案プランは実行不可能。


 本施設は亜人教育施設であり個体名ハモンの電磁特性調査は主目的ではない。

 よって個体名ハモンの電磁特性調査は凍結とする。


 なお、本施設周辺の教育すべき亜人は知識レベル制限を受けている為に教育不可能。

 本施設の主目的を果たす為に人工衛星『機月きげつ』を経由し地球へ知識レベル制限の解除を申請しんせい

 受理じゅり


 機月より地球へ長距離通信。

 失敗。

 通信電波の妨害ぼうがい、受信機の喪失そうしつが想定される。

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