第九幕 失意の中
本来の旅の目的を果たす為に夕暮れ前の帝都を歩く。
大通りは事件が多過ぎる。少しは見慣れた
今日は商店の多い経済の中心、市民の台所も
多少なりとも現実逃避である事は否定できない。イチヨを不安にさせている罪悪感から
そんな自覚が有るから
「いやぁ、
「西通りや大通りじゃ連日の
「そうなんだよ。昨日は新人なのか白革羽織がユウゲン様と共に物取り相手に
「おお、見たぞ見たぞ、屋根から屋根への
「直前にゃ転びそうになった老婆を
ハモンは
お陰で知りたい噂話が出回らず欲しい情報が集まらない。事件を見掛ければ直ぐに手を出す
ただ剣の
ふと人影が目に入った。路地裏を
有名に成れば貴族軍人殺しについて岡っ引きのユウゲンに目を付けられるかもしれない。いや、もう目は付けられていると見るべきだ。
帝都に掛かる陽が
ユウゲンとの約束の
大きな都市に
帝都に
そう
西色通りの
陽が沈めば
声を掛ける相手は
ユウゲンはまだ来ていない。群青の革羽織に
ハモンは西色通りの
待ち人が居ると分かる様に軽く左右に視線を向けていれば、看板の下に居た大男が歩み寄って来た。ジーンズにシャツだけで肌寒いだろうに革羽織も
「よう、白革羽織の」
「……誰だ?」
「ま、そうならぁな」
気安い男だ。
軍人や剣士の
大男の顔を静かに見上げ、女の様な
「まさか、ユウゲンか?」
「正解っ。今はゲンで
「何のつもりだ?」
「おいおい、これでもお前さんを気遣ってやったんだぜ?」
言われてハモンは周囲を観察して気付く。
ユウゲンと共に居れば周囲の注目を集めるが、仮面と革羽織が無いだけでこれ程に気付かれない事も疑問だった。
「俺っちの面にゃちょっとした仕掛けが有るんだよ。ま立話もなんだ、お前さんも仕事前なんだろ? うどん食いにいこうや」
下手に
静かな足取りでユウゲン改めゲンの後に続く。
大通りには
夕刻で日が暮れる前に食事を済ませ様としている
「おやじ、二人だ」
「あいよ。今日はかき揚げが
「んじゃそれで
「そっちの白い
「同じ物を」
「あいよ。かき揚げうどん二杯ぃ!」
「かき揚げうどん二杯ぃ、入りました!」
「入りました!」
厳つい男の言葉を店員たちが復唱する。ハモン以外の客に驚く様子は無いので普段通りの姿らしい。
奥の席に並んで座ると各席に
「まあ先日は助かったぜ。お前さんのお陰で仕事が楽に成った。街の西側で
「……」
ハモンが沈黙で返したのはゲンがどこまで
ゲンもハモンの
「俺っちはお前さんみたいな奴に声を掛けてんだ」
「みたい?」
「お
「……そうか?」
「ま、ちっと
「……
「正解。割と本気で心配してるみてぇだったぜ」
イチヨを引き合いに出されるとハモンも言い返せない。事実、不安にさせて反省してばかりなのだ。
「で、自分に何をさせたい?」
「乗ってきたねぇ。ま詳しくは食ってからにしようや」
ゲンの言葉を待っていたかのように二人の前にかき揚げの乗ったうどんと
「頂こう」
「おん?
ゲンの指摘に他の客を見れば机に置かれた
だがハモンは食前食後の挨拶は
「家族に教わった」
「そうかいそうかい。もしかしてお
「国にそういった身分は無かった」
「おん? まあ確かにお前さん帝国民にしちゃ肌は白いし、北の大地の
そう問われてもハモンは答えを持たない。
ハモンが住んでいたのは一つの都市で完結した場所だった。帝国の様に複数の村や街を
ただ帝国の北に位置するのは確かなので
「ま
それはハモンの旅の目的に合致する提案だった。
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