第1話 小学生
ショック
白翔としては、従姉妹の碧波はいつでも遊べて気兼ねなく話せるお姉さんのような存在であった。親の転勤とはいえ、その碧波がいなくなるのは思っていた以上に悲しみが大きい。
傍から見れば、従姉妹がいなくなったからスグ友達を見つけてその子と仲良くなっていこうとすればいいと思われるがそんな簡単な問題ではない。
理由としては公園で遊びに行った時、 他の友達と遊ぶとなっても碧波が声をかけて輪の中に加わって一緒に遊んでいた。保育園でもお姉さんの碧波がいたからこそみんなと仲良くできたと言ってもいい。
社交的な碧波と違って白翔は恥ずかしがり屋で人見知り、とてもじゃないが自分から遊ぼう。なんてことを言えるような性格ではなかった。
冬休みが過ぎ、卒園式も間近に迫っていた。
小学校に行くようになれば保育園の子たちだけでなく、私立の小学校に行く子を除けばそこの地域に住む子供たちが1つの小学校に行くため、碧波ちゃんのように積極的に声をかけてくれるような子がいるかも。
白翔と同じように人見知りの子がいてその子たち同士で仲良くなるかも知れない。
いじめっ子に目に付けられないか、家族の心配は尽きない。
入学式
小学校に上がって周りを見ると同じ保育園で一緒だった子が1人もいない。白翔にとっては絶望的だった。
学校が始まって1週間、1ヶ月くらい経つがしかし友達が出来る気配がしない。このまま1人で小学校生活を送ることになるのかと思っていた。
恥ずかしがり屋で人見知りだけどこのままだとダメだと思い、勇気を振り絞って同じクラスの子に声をかけた。
すると意外にもみんな一緒に遊ぼうよと優しく接してくれた。人に話しかけるのが怖いと思っていたが実は自分の思い込みだったんだと気がついた。
白翔は見違えるように性格が変わっていた。まずは同じクラスで1人でいる子に声をかけて遊ぼうと誘った。
自分が恥ずかしがり屋で誰にも話しかけることが出来なかったことを話した。その子の気持ちも分かるし、断られても自分もそういう経験があったからとそこまで気にはならなかった。
色んな子と遊ぶことが楽しい、休み時間が待ち遠しいと思うようになった一方で白翔は1つ悩みがあった。この中で仲がいい友達は誰なのか?自分が何をすることが楽しいのか?
かくれんぼや遊具に遊んでいるとあっという間に夕方になる。楽しいけど友達に誘われたからという理由で遊んでいた。
学年が上がるにつれて話の内容が多様化してくる。
昨日やっていたバラエティー番組を観た?今日やるドラマだけどどういう展開になるのかね。
日没が他の地域と比べて早い北海道。外で遊べる時間は限られていて、家に帰ればテレビを付けるというのは子供も大人も変わらない。
人気のバラエティーやドラマは特に観たいと思う番組でなくても観ていないとなると学校や職場で会話に入れてもらえず取り残される。そのため、録画機能が必須となっている。
白翔も学校で取り残さないようにバラエティーやドラマを観ていてどうしても観られない時は録画をして見直すなどをしている。
それだけでなく、たまにやっているアニメを放送されている。男の子用のアニメ、女の子用のアニメそれぞれやっていたら男女関係なく観るのも子供たち娯楽として土曜日に早起きをして観る子も多い。
保育園の時期に比べれば別人のように自分から話せるようになったが女の子と何を話せばいいのか分からない。女の子用のアニメの話をするが全然弾まない。
他の子はどうして女の子と仲良くしているのか外から見るだけだった。碧波となら何も考えずに喋れるのに他の女の子とだったら急に喋れなくなるのか。
クラスの子に相談しようにも広められるのもイヤだし、何よりまだ自分が好きかも分からないのに好きだと言いふらされるのは女の子にも失礼。
先生に相談するにもそんなことを聞くのもと気が引ける。自分で解決しようにもとうしたらいいのかが全く分からない。
そう思っていると下校途中で何もないところで転んだ。ヒザを擦りむいて痛くはないが血だらけで帰るのはイヤだなと思って保健室に向かった。
まず、保健室の外にある蛇口で傷口を洗って中に入る。大きな絆創膏を貼ってもらって帰るべきだが、白翔は勇気を振り絞って保健室の先生に相談をする。
女の子と全然話せないんですがどうしたらいいですか?この前、隣の女の子と英語で自己紹介しなきゃいけなくて緊張して上手く話せなくて……。
保健室の先生は優しくこう言葉をかけてくれた。
女の子と喋るのって恥ずかしいし、授業でやらなきゃいけないと思うと余計空回りするよね。
男の子と同じように喋れるようになるには時間がかかると思うから慣れるまでは女の子と意識しすぎないでじゃがいもに話かけているように想えば少しは楽になるよ。
ケガした時だけでなくて、今回みたいに話を聞いて欲しい時にも保健室に来てね。
保健室の先生からその一言を聞いてこんな自分でも相談してもいいんだと白翔は心を撫で下ろした。まずは言われたことを実践してみようと決めた。
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