第30話

 俺がトイレから席に戻ると。

 

 「おにぃ。遅い」

 

 春に怒られてしまった。

 

 「悪い。なかなかトイレの場所を見つけれなかったんだ」

 

 もう少しすると、三試合目が始まる。

 

 「・・・彼氏持ちだから・・・」

 

 「・・・あんなに、イケメンだったのにもったいね」


 周りから妙な視線を感じる。

 視線を感じる方を見ると、明らかに見ていた人は目が合わない様に横を見る。

 

 「春。俺が居てない間に何かあったのか?」

 

 「えっと、忠光さんがこっちに来て、私に告白してきた」

 

 「そうか。忠光がこっちに来て、告白を・・・ふぇ?!」

 

 驚き過ぎて、情けない声を出してしまった。

 

 「えっと、よかったな」

 

 「何が?」

 

 俺の労いの言葉に不機嫌に返事を返してくる春。

 

 「だって、お前、忠光の事が好きなんだろ」

 

 「はぁ?!なんで、そうなってるの?よく考えてよ、おにぃ。私、忠光さんの事、ほとんど知らないんだよ。好きになる訳ないじゃん。それに私は。私は、おにぃが好きなんだから」

 

 現在、三試合目が始まっている。

 そんな中、周りの観客たちは試合そっちむけであった。

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