第11話

 家に帰って、いつもの様に学校の課題に取り組んでいた。すると。


 「おーい。部屋にいるんだろ。返事をしてくれないか?」


 部屋の外から、おにぃが呼んでいた。

 

 「(おにぃが呼んでる。・・・無視しよう)」

 

 私は今、怒っているのだ。

 せっかく、朝早くに起きて作った渾身の弁当だったのに。その渾身の弁当の中、更に渾身の出来であったコロッケをまさか、食べてくれないなんて思ってもいなかった。

 

 「(ちゃんと謝るまで、おにぃなんか。おにぃなんか・・・)」

 

 絶対に許すものか。と思っていた。が、しかし。

 

 「(でも。もしかして、凄い大事な要件だったら、どうしよう。・・・そうだ。一応なんの用かは聞いてくだらない話だったら無視しよう)」

 

 自分の気持ちに整理いいわけをして、半分だけ扉を開けた。


 「兄貴。何?」

 

 「・・・何を警戒してるの?」

 

 「兄貴。嫌いだから」

 

 この怒り。伝われ!と思いながら言い「何も用がないなら」と扉を閉めようとするも止められ、扉の隙間から渡す様に紙袋を差し出してきた。


 「何これ?」

 

 「ちょっと、良いプリン。ほら、春プリン好きだろ」

 

 「?!」

 

 私は驚いた。確かにプリンは私の大好物である。でも、それをおにぃに話したのは遠い昔。

 

 「(まさか覚えておいてくれてたんだ。・・・もしかして、おにぃも私に気がある?相思相愛。兄妹の禁断の恋。私の時代、きたー!!)」

 

 内心、めちゃくちゃ喜んでいると気づいた。やばい。にやけてしまいそう。

 にやけた変な顔をおにぃに見せない為、慌てて扉を閉めた。

 そして、一呼吸。

 

 「すー。はー。すー。はー。よし。落ち着いた」

 

 再び扉を開けて言った。


 「兄貴。一緒に食べよう」

 

 すると、おにぃは少し困った顔をした後。

 

 「・・・春の分しか用意してないや。でも、気にしないで春の為に買ってきたから」


 最高の兄である。

 

 「それとなんだけどさ。今度の日曜日暇か?」


 「(この流れは!!)」

 

 紙袋を受け取ると、おにぃが今度の日曜日の予定を尋ねてきた。やっぱり、私の時代がきてるんだ。

 

 「うん。ちょ、丁度、暇だったよ」

 

 どこに連れて行ってくれるんだろう。買い物とか。映画館かな。

 

 「良かったぁ。実は忠光の試合に一緒に来てほしくてな」

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