転校生

 アパートに帰ってきてからは残りの冬休みを怠惰に、そして淫らに過ごした。


 実家に帰っている間は常に他の人の目があったため、紫音もいろいろと溜まっていたようで、残りの二日間は部屋から出ることはほとんど無かった。


 しかもこの二日間の紫音は本当に自重がなくて、以前の目隠しに加えて手足まで固定された。


 どこで買ってきたのかは知らないが、手錠と足枷を見せられた時はさすがに頬が引き攣った。


 しかもそのあとは筆まで取り出してきて、あれは本当に死ぬかと思った。


 目隠しで感覚が鋭くなり、手足の自由が効かない状態で筆で肌を撫でられる。

 くすぐったくて気持ちよくて、でも焦らされてばかりだからもどかしくなっていき切なくなっていく。


 そして最後には、紫音が望む恥ずかしい言葉を言わされることで、ようやく私は満足することができる。


(あんなのばかりだと、そのうち普通のじゃ満足できなくなりそう)


 なんだか順調に彼女に調教されているような気もするが、それをすんなり受け入れている私もどうかしていると思う。


 結局私は、紫音が私を求めてくれることを拒むことはできないし、彼女がしたいことはなるべくやらせてあげるのだ。


(それに、私も嫌ではないし…)


 紫音に甘々な私だが、ちゃんと嫌なことは伝えるようにしている。


 そして、これは二人だけの秘密だが、実はセーフワードも決めてあったりする。


 セーフワードを決めた理由は、紫音が最近過激になってきたため、念のためにという意味を込めてだ。


 その重要なセースワードは『やんだ』だ。

 嫌だという言葉が訛ったものらしく、私も日頃では使わない言葉だし、紫音も慣れ親しんだ言葉だからこそ、いざという時に理解しやすいからだ。


 まぁそんなわけで、どんどん私たちの行為は過激になっていくわけだが、今現在はお昼より少し前で、朝方まで私のことを可愛がってくれた紫音は隣で気持ちよさそうに眠ったいた。


 紫音はいつも行為が終わったあと、気絶したように眠る私の体を拭いて、服などを片付けた後に眠っているため私よりも寝るのが遅いのだ。


 明日からはまた学校が始まるため、こうしてゆっくりする時間も今後は少し減ってしまう。


(少し寒い…)


 布団の中に入ってはいるが、それでも今は冬なため肌寒く感じる。

 それに、今は何も着ていない状態なので、余計に寒く感じる。


 私は体を温めるために紫音に抱きつくが、今は彼女も何も着ていないため、胸や肌、そして脚の柔らかさや甘い匂いが伝わってきて少しだけドキッとする。


 紫音の胸に自分の胸を押し付けてみるが、圧倒的なサイズの差に心が折れそうになった。


(なんか、また大きくなってない?)


 私の胸が小さくなっていない限り、おそらく大きさが変わったのは紫音の胸の方ということになる。


(私はいつも紫音に揉まれてるのに、なんで大きくならないんだろ)


 好きな人に揉まれると大きくなるという話は迷信だったのだろうか。

 そんなことを考えながら彼女の大きな胸にキスをすると、軽く舌で濡らしてから甘噛みをする。


 そして軽く吸ってあげることしばらく、唇を離すと綺麗なキスマークが出来ていた。


 綺麗に出来たことに満足した私は、今度は首筋にもキスをしてから同じようにキスマークをつける。


 その後も紫音が寝てるのをいいことに、布団に潜って太ももやお腹、さらに腕や鎖骨にもキスマークを付けていく。


(まるでマーキングしてるみたい。紫音を独占してるみたいで嬉しいな)


 私はキスマークが好きだ。紫音に付けられると私が彼女のものだと思えるし、私が紫音に付ければ彼女が私のものだと思える。


 これは私の独占欲だ。私が紫音に向けている愛は日に日に重くなっていくが、彼女はそんな私の愛を全て受け止めてくれている。


(本当に幸せ…)


 好きな人に愛され、自身の重い愛も受け止めて愛してくれる。これが幸せでなければ何だというのか。


 マーキングが終わった私は、最後にもう一度ギュッと抱きしめると、愛しい人の体温に包まれてまた眠りについた。





 翌日。いよいよ冬休みが終わり、私たちは学校に行く支度をする。


 そして、紫音は首筋のキスマークを隠すためにコンシーラーを使っているが、彼女はどこか楽しそうだった。


(多分、キスマークがよほど嬉しかったんだろうな)


 紫音が喜んでくれたようで私も嬉しく思いつつ、自身も鎖骨にあるキスマークを隠していく。


 結局あの後、私がキスマークをたくさん付けた事がバレて、紫音にも同じようにたくさん付けられた。


 彼女にいたっては足首にも付けてきたので、本当に身体中に付けられた感じだ。


「よしっと!白玖乃、行こうか!」


「うん」


 準備を終えた私たちは部屋を出ると、いつものよう腕を組んで学校へと向かうのであった。





 教室に着くと、すでに登校していた一花と雅の二人が向かい合って楽しそうに話していた。


(一花、幸せそうだな。それに雅も前より楽しそうに見える)


 二人は紫音の家に行った時、一花の方から告白をしたため今は付き合っている。


「おはよ。一花、雅」


「おはよ!」


「おはよ、二人とも」


「新年初登校も腕を組んでくるとは、相変わらず仲がいいね」


「そういう二人も、楽しそうに話してたね」


 紫音がニマニマしながら揶揄うと、一花は少しだけ頬を赤くしながら笑う。

 雅はとくに気にならないのか、一花の反応を見てクスクス笑っていた。


 紫音が人を揶揄うのは珍しいなと思いながら彼女のことを見るが、よくよく考えてみれば紫音は割と意地悪な時があるためそうでもないかと自己完結する。


(夜とかとくに意地悪だし…)


 その後、私たちも雅たちの会話に混ざり、紫音の実家から帰ってきて何をしていたのかを話した。


 二人は帰ってきてからはお互いの部屋で過ごしたり、街にデートに行ったそうだ。


 一花はその時のことを楽しそうに話してくれたが、ほとんどが雅に対する褒め言葉や惚気話ばかりだったので、何をしたのかはいまいち頭に入ってこなかった。


 そして、さすがに今回は恥ずかしかったのか、雅は頬を赤くしながら一花の頭を軽く叩いていた。


 何とも純粋で微笑ましい光景だが、二人の話を聞くと二日間の私たちは本当に何とも言えない生活をしていたんだなと実感させられる。


 私たちの話になった時はさすがに本当のことを言えないため、部屋でまったりしていたと話した。


(まぁ、部屋にいたのは本当だし。嘘はついてないよね)


 話が一通り終わった頃、ちょうどチャイムがなって桜井先生が教室へと入ってきた。


「皆さんお久しぶりです。何事もなく皆さんにお会いできて嬉しく思います。

ではさっそくですが、皆さんにご紹介したい方がいます。入ってきてください」


 桜井先生がそういうと、教室の扉を開けて知らない女の子が入ってくる。


「みなさん初めまして。斉藤萌奈さいとう もえなと言います。親の都合で転校してきました。

 変な時期にとは自分でも思いますが、仲良くしていただけると嬉しいです。よろしくお願いします」


「斉藤さんは転校生となりますので、彼女が困っている時は皆さんで協力して助けてあげるようにしてください。座席は鬼灯さんの後ろに用意したのでそちらにお願いします」


「はい」


 斉藤さんは桜井先生から指示をもらうと、紫音の後ろの席へと向かって行き腰を下ろす。


「では、これから本日の予定をお話しします。まず…」


 それからは、桜井先生から今日の予定を説明され、私たちは始業式に向かうため体育館に移動する事になった。


 紫音と雅と一緒に向かうため、私と一花は二人のもとへ向かおうとするが、紫音はさっそく斉藤さんと話をしていた。


 雅も近くにはいたが、主に話しているのは紫音で、何とも楽しそうに笑っていた。


(まぁ、紫音は人見知りしないし、誰にでも優しいからね)


 とくにその光景を見ても気にしなかった私は、そのまま紫音たちのもとへと向かう。


「紫音、一緒に行こう」


「あ、白玖乃!そうだね!萌奈も一緒に行く?」


「え、いいの?でも、紫音たちの迷惑にならない?」


「大丈夫だよ!みなんもいいよね?」


「うちはいいよ」


「私も大丈夫よ」


「私も」


 紫音と斉藤さんがさっそく名前で呼び合っていることに少し胸がモヤっとするが、私と紫音も初めて会った時から名前で呼び合っていたし気にしない事にする。


「ありがと!それじゃあ行こうか!」


 紫音の言葉を合図に、私たちはいつもの四人と斉藤さんを加えた五人で体育館へと向かうのであった。






◇ ◇ ◇ ◇ ◇

よければ同時連載しているこちらの作品もお願いします。



『すれ違う双子は近くて遠い』


https://kakuyomu.jp/works/16817330651439349994

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