距離感がバグってる同居人はときどき訛る。

琥珀のアリス

プロローグ

 私の名前は橘白玖乃たちばな はくの

 今回は、私がこれから通う高校について説明していこうと思う。


 私の通う高校は女子高で、青桜せいおう女子高等学校といい、1学年60人で3学年合わせると180人程度の学校である。

 また、青桜高校には、少し特殊な校風がある。

 それは、入学と同時に寮で一人暮らしをするか、学校の関係者が管理している3つのアパートで二人暮らしするかを選ばなければならないというものである。


 青桜高校の校訓は自立である。そのため、高校入学を機に親元を離れ、自分たちだけで日常生活を送る事が義務付けられており、学費はどちらを選択するかによって変わってくる。

 しかし、入学後は一度も家に帰れないなどと言うことはなく、夏休みや冬休みなどの長期休暇がある場合には、実家に帰る事ができる。

 また、寮やアパートの管理は学校の関係者がしているため、安全安心である。


 私が寮とアパートのどちらを選択したかを話す前に、寮とアパートそれぞれのメリットとデメリットについて説明しようと思う。


 まず、寮生活を選んだ場合のメリットは、高校の敷地内に寮があるため、朝は比較的ゆっくりできる事だ。また、寮内には併設して作られた食堂もあるため自炊する必要がなく、いつも美味しいご飯を食べることができる。

 そして、寮生活では一人で部屋を使うことができるため、周りに気を使う必要が少ないのもメリットと言える。

 逆にデメリットは、明確な門限が決められている事だ。門限は確か20時で、よほどの理由がない限り遅れることは許されない。

 また、部屋は一人部屋だが、お風呂や食堂は共同利用だし、当番制でお風呂の掃除などもしなければならない。


 次にアパートを選択した場合のメリットは、極端に遅くならない限りは門限がないことだ。また、遅くなる場合にも、事前に理由や目的などを連絡すればある程度は許される。

 そして、二人での共同生活だから家賃は折半のため、当然寮よりも学費(生活費分)が安くなる。さらに、食費などを節約すればそこから更にお金が浮くので、両親の助けにもなる。

 逆にデメリットは、高校とアパートが少し離れているため、通うのに時間がかかるという点だ。

 また寮では、平日は朝と夜のご飯が食堂で食べられるし、休日は朝昼晩の三食を食べる事ができる。

 しかし、アパートの場合は自分たちでご飯を作るか、近くのコンビニなどで買わなければ、ご飯を食べることはできない。

 私はあまり料理をしたことがないため、とても不安である。


 そして、最も重要な同居人についてだが、こちらは管理人がランダムで決めてしまうらしい。

 昨年、この高校のオープンキャンパスに参加した際、近くにいた先輩に聞いてみたら、気が合わない人と同じ部屋だった場合は、最初の頃は地獄だと言っていた。

 それでも、過ごしていくうちにお互いのことを理解して慣れていく。卒業する頃には、それもまたいい思い出になると語っていた。


 部屋割りの決め方は、各アパートの管理人がゲームなどで決めるらしく、オープンキャンパスで教えてくれた先輩のアパートでは、去年は入居希望者の名簿を壁に貼り、二色で一組のダーツの矢を投げて、同じ色の当たった人どうしを一つの部屋に振り分けたらしい。

 その際管理人は、周囲にいた在校生の先輩たちに『パジェロ』と言わせて、それはそれは楽しそうにダーツの矢を投げていたとか。


(なんだろ。パジェロって?)


 以上が、寮とアパートについての説明だ。


 因みに、人気なのは寮生活で、一人で部屋を使えた方が気が楽という理由で、人気らしい。


 では、私はどちらを選択したのかといえば、アパートでの生活だ。

 理由は単純で、知らない子と3年間一緒に生活するのは楽しそうだし、門限がゆるいことに魅力を感じたからである。

 それに、一人暮らしは大学に入学後もできるが、知らない子といきなり同棲するという経験は滅多にできないだろうから、是非とも経験してみたかった。


 そんな私は、まだ見ぬ同居人と、これから楽しくなるであろう高校生活を想像しながら、期待と少しの緊張を胸に、3年間お世話になるアパートに入居するため、家を出るのであった。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る