プリズムのように

 輝くひとほど、辛いのかもしれない。輝きとは、魅力とか、高貴さとか、お金とか、立場とかではない。いわば、いのちの輝きのことだ。


 辛さを与えられるから、いのちが輝く、とも言えるのかもしれない。では辛さを礼讃すればいいのかというと、けっしてそうではなくて。


 生きていること。なにかができて、できないこと。すべてはこの世というレンズを通して、私たちの目にとどく。


 プリズムのように、ほんとうは様々に光るもの。だけれども、私たちは、私は、しばしばそのような輝きを見逃す。

 ただの石ころのように、一瞥して、時には一瞥もしないで過ぎ去る。


 価値なんて、すべてひとが決めるもの。そんな殺伐とした世界観、いつから、この世に入り込んできたのだろうか。

 光を忘れて、華やかで見目麗しい暗闇のネオンに魅入られるようになったのは、ほんとうに、ほんとうに、いったいいつからなのだろう。


 大切なことを覚えていたころは、そんなこと、なかったと思うのだけれど。いつのまにか。どうしてか。

 弱いから。そんな言い訳で済ましていいかもわからずに、電車は、今日も駅に着く。

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