第47話 ねんどろいど爆誕
リシャたんが目の前に横たわっとる。神殿で寝よったときとおんなじような感じやから、聖域にいっとるんかな。その隣でボニたんが寝とる。この簡易祭壇いうんは多分1人用やからちょっとぎゅーぎゅー感。
さらにその隣でマルセスが難しそうな顔でコンソールに向かい合っている。そんな俺はコンソールの端っこに置かれている。
今他にこの部屋におるんはリシャたんの機甲に入ったリシャたんのお母さん。エウドキナ様? キナたん。
リシャたんのお父さんの王様は神子の神事だからといって追い出されていた。
「なぁ、今リシャたんは聖域いうんにおるん?」
「そうだ」
「そのうち戻ってくるん?」
「わからない」
「なんで?」
「リシャール様は今この簡易祭壇から聖域に向かった。ここにはいないからわからない」
ううん? それはそうなんかな?
火山に行ったってどうやって? ようわからんな。電気みたいなもんなん?
「結局何がどうなっとるん?」
「それは私が聞きたいよ。デュラはんはアストルム山に行ったんだろ? そこで何があった」
マルセスは心底お手上げだという顔で俺を見る。
「何言われたかて、山に登ったらヌルたんがおってリシャたんとキナたんが祭壇で寝よって、そんでもってえーと、ボニたんがなんか聖域? に行ってしばらくしたらリシャたんとキナたんが帰ってきたから一緒に降りてきた」
「さっぱりわからん」
「俺も」
結局これ、何が起こっとるん?
俺氏さっぱりわからんのやけど。むーん。
「なぁ。神子って何する人なん?」
「それは神子しか……そういえばエウドキナ様ならご存知なのでは」
そう思って振り返るとキナたんが手信号を送った。
マルセスに聞いたら応答不能、だって。
うーんまぁそうか。手信号いうんはあれやんな、あっちいくぞーとか、後退ーとか、そんなんを指示するもんやろうし。
「それよりデュラはん。エウドキナ様はどうやって動かれているんだ?」
「うん? 俺といっしょやん。なんか魔力が漏れるらしいから、それを伝達腺につないで動かしとる、んやと思うんやけど」
こくこくとキナたんの頭部につながるヘッドギアが動いてキナたんの首がごいんごいんゆれている。なんか不自然で痛そう。マルセスは失礼しますいうてキナたんの後ろに回って首筋にはられたパッドみたいなのを調べている。そうそ、俺もアレで動かしたんやで。……俺の耳の脇はげてもうたんやけど俺もどうせなら首のほうがええな……。
「……はっきりとはわからないが、デュラはんを載せた大型機甲の時と同じか。……エウドキナ様。魔力を意図的に放出したり操ることはできますか」
キナたんはちょっと考えたみたいに動きをとめた。なん?
「やはり無理なのですね。今のうちに最低限必要なことをお伝え願えませんか」
キナたんはトントンと自分の胸をたたくジェスチャーをする。
「エウドキナ様が向かわれた後、私はどうしたらよいのです?」
さっきと同じ応答不能のジェスチャー。マルセスは困ったように頭を掻きむしる。どっちみち話せないと話にならない感。
なんとかならんかな、話せるもの、話せるもの。ええと、あそや。
「キナたん。俺を持って隣の部屋に行ってくれん?」
「あ、おいデュラはん」
キナたんは、私ですか? というように自分を指さした後、俺の頭を持ち上げてヨタヨタと隣の部屋に向かった。
んーと、机の上にあった。
「キナたん、その机の上のお人形持ってさっきの部屋戻って」
人形を掴む加減で俺の頭はキナたんの左手に移動してちょっと斜め。人形はキナたんの握力でぐにゅりと潰れてキナたんは慌てて直そうとして余計グニグニになって針金みたいなんが飛び出した。なんか辛うじて人、感。でもやっぱ芯が入っとるならこれは多分機甲ってことやんな。
やってアブソルトが作りたかったんは動く萌え人形やもん。動かんと意味ないもんな。
「キナたんちょっと力入れすぎ、痛い。そんでそこの机の上の伝達腺いうん? 針金みたいな奴をお人形からでとるやつに結んで魔力通せんかな」
「デュラはん、何をやってるんだ?」
ーザーザザァーアーあー、あ。ああ。あの、聞こえます、ね。
「まじか」
「腺つないで機甲動くんやったら繋いだら動くんちゃうかな思て。なぁ、ボニたんどうなっとるん?」
ー神殿のことは他言無用になっておりまして。
「でも教えてよ。友達なん」
キナたんはだいぶん悩んで、ボニたんが今魔女の封印を解いて魔女を解放しようとしていること、解放すると魔力が溢れて火山が噴火する恐れがあり避難してきたこと。
それは多少は詳しいけれども既に知っていた知識。そういうことやなくてさ。ええと、なんて言うたらえん。
「エウドキナ様。それはわかりました。それで『初期化』と『再インストール』とは何なのですか」
ーそれは……私にもはっきりとはわかりません。ただ推測する範囲ですが、もともと島中に魔女様が作った魔力回路があったそうです。アブソルトはそこにアブソルトの術式が使えるよう『上書き』? したそうです。
「マジか。パねぇなアブソルト」
「どゆこと?」
「うーん、地球で言うと液体ストレージっていうのかな。ナノクラスタっていう超微粒子を液体に浮かべてそこに情報を保存する未来の技術? の概念があるんだ。それと同じものを魔力の流れに置いた」
「なんでそれがわかるん?」
「壁の紙に擬人化ナノたんがいっぱいいる」
液体? 微粒子?
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