第31話 俺氏とボニたんの行く末
結構叫んだ。どのくらい叫んだんやろ。けどちょっと先の扉の向こうの廊下は、さっきからずいぶん慌ただしい。たくさんの人間がバタバタと走り回っている音がする。でも、だからなのか誰も気づかない。
緊急事態でもあったんかな。でもこっちも緊急事態や。
どうしよ。呼び続けんとしゃあないな。糞。動けんのマジで不便や。ああもう!
そう思っていると、ドアがガタンと開いて電気がついて聞き慣れた声が響いた。
「西区にある内務卿の別邸にデュラとボニは囚われているはずだ! これから救出に」
「俺らもうここにおるけん助けて!」
「あれ?」
マルセスの声とそれから目を丸くしたコレドが俺を見よる。
「あれぇ? デュラはんどうしてここにいるのさ? 隠しスキルかなんか? ってボニさんどうしたの⁉」
「わからんねん! 気がついたらここにおったん。ボニたんマジックアイテムかなんかもっとったん?」
「そんなはずは……持ち込まれた私物はこちらでお預かりしている。今は身の回りのものくらいしか所持していないはずだ」
コレドがボニたんを抱き起こして近くのソファに寝かせ、熱やら脈やらを測ってふぅ、と安堵のため息をついた。
「ボニたん大丈夫なん?」
「あとでお医者さん呼ぶけどぱっと見は異常はなさそうかな」
「そうなん。ほんまよかったわぁ~」
「それよりどうして君たちはここにいるんだ? 内務卿の別邸に捕えられたのではなかったのか?」
「俺にもようわからんのや」
散歩に出る言うて外に出て街から離れようとして突然捕まって知らんとこに連れて行かれたん。そこでボニたんと別れて、そっからは色々調べられてたけどカゴが開かんみたいで、無理やりこじ開けたら魔力が爆上がりしたけど俺が原因やないみたいやったからスピリッツ・アイしたらめっちゃ頭痛うなって気がついたらここにおったん。
「え。あれマジでこじ開けたの? 別にいいんだけどさぁ」
「あかんかってん?」
「まあダメかといえばダメじゃないけど、野蛮っていうか。機甲を脱ぐのにスイッチ押せばいいのに破壊して脱出するみたいな。そんなに難しい仕組みじゃないんだけどねえ」
「いや、それよりスピリッツ・アイを使って具合が悪くなったというのが気になる。今も違和感はあるのか?」
「なんか肩こりみたいに頭の後ろの方が痛いん」
マルセスは妙に真剣な目で頭を持ち上げて俺の後頭部をさする。
「コレド、魔力検査機持ってきて」
「はいよ」
「なんか俺病気なんかな? 今までこんなことなかったんやけど」
「魔物の病気は詳しくないが、この領域に最初に来た時も痛かったんだろう?」
「そやけど実験でつこたときは別に痛うなかったで」
「ここの実験室は魔力が外に漏れない特殊な作りだからな。さっきのカゴも同じだ。発動しなかっただろう?」
そういやそうやったな。あのカゴの中ではスキルは使えんのかな。残念。
そう思っとるとコレドがたくさんコードのついたヘルメットを持ってきて俺に被せる。ちょっと小さいねんこれ。
「マルセスさん、なんかここ変です。魔石反応」
「うーん、やっぱりか」
「なん?」
「デュラはん、君は魔石になりかけてる」
「なんやて? 俺、掘られてまうん?」
この領域の魔物は体の節々に魔石を作るらしい。
それは魔力を行使するときに体内の魔力が少しずつ圧縮されて固まるかららしい。この国ではそれを掘って機甲の燃料にする。俺もスピリッツ・アイを
「でも俺アブシウムでようけ使たけど、そんなんなかったで」
「デュラはん、この領域はちょっと特殊なんだよ。大気中の魔力が著しく少ないんだ。だから多分スキルとか魔法とかを使おうとすると、魔力が余分に吸いだされる。それを防ごうと無意識に魔力を集めて抵抗するから、魔力が固まって魔石になるって考えられてる」
「ふうん、え、て、この頭痛いんもう治らんの? 嫌やぁなんとかならん?」
「一度固まったのが溶けるという話は聞いたことがないな……魔石として使うにも取り出さないと」
「待って待たれて。流石に頭かち割られたら死んでまう気がする」
謎の緊張感がほとばしる。マルセスが研究者の、特にマッドな感じの目をしている。
俺は動けへん。ごくり。
「まあそれはおいおい研究するとして、こちらも聞きたいことがある。君たちは、いや、ボニさんは何をした」
「何て?」
「おそらく君たちが原因でこの国に異常が生じている。それで君たちはとても微妙な立場にある。この国で極めて重大な犯罪の容疑者、少なくとも参考人となっているはずだ」
「あの! 全部僕のせいなんです! デュラはんは関係ないから! デュラはんは助けてください!」
「ボニたん……?」
振り返ると、ボニたんが胸を押さえながらソファから体を起き上がらせようとしていた。
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