めくれなかった1ページ~楽譜から愛を込めて~

たから聖

第1話 楽譜から愛を込めて~


セミが鬱陶しい程にうるさかった午後の事……。


異常な体調を引きずり、町医者へと出掛ける。

俺……夏目は、交響楽団員だが



今年一杯で、引退を決めたのだ。



『病院、病院っと……体がキツいなぁ。歳かな?ハハ。』



なんとか、町医者へと辿り着く。



午後の診療時間まで、雑誌に目を通しながら暇をもてあますが……


いかんせん。




体が言うことを聞かない。


読む気も失せて、雑誌を元に戻す。診療時間まで、後30分だ。



俺は、その待ち時間の30分間で

かなり体調が悪くなってきてしまった。






そう、たかをくくっていた。





診療時間が始まると、一番最初に呼ばれる。



久しぶりな先生の顔を見ると、



お互い歳を重ねたことを思い知らされる。



『今日は?どうされましたか?

夏目さん。』



『いやぁ~何だか食欲も無くて、キツいんですよね?』



触診が始まる。先生は顔色が変わった。



『夏目さん?症状はいつから?』



『アハハ。もう夏が始まってからですよ?今年は暑いですからね』




『夏目さん。ご家族の方……

いらっしゃいますか?』



『は?俺は独身ですけど。

何かあるんですか?』



顔から汗が一筋流れる。


少しだけ

嫌な予感がしていた……。









セミが鳴り止まない。



どんどん汗が吹き出る。

俺は……熱中症じゃないのか?









そんな時……ドクターから死刑宣告をもらった。







『夏目さん?』






『生きれたとしても……

  今年一杯持つかどうか?』





その言葉をまるで、他人事の様に聞いていた俺は……



またドクターに問う。




『ハハ。だって歩けるんですよ?

先生……間違いなんじゃ。?』





そんな俺をよそに……



ドクターは表情を曇らせていた。

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