第5話 【夢】エルフの森(5)
「分かりました。姉上」
とアイリーン。どうにも、姉であるユリアリスに対しては
いや、里で共有する財産――という風に考えた方がいいのかもしれない。
少なくとも、この森に来てから、
アイリーンも口では俺を嫌っているが『毎回、話し掛けてくる』という事は『異性に対しては興味がある』という事だろうか?
周りに男子がいないため、
「待っててね。私、すぐに大きくなるから」
とユリアリス。俺が後ろから抱き締めているため、首を後ろへ倒す形で俺を見上げる。正直なところ、彼女が言葉通りの成長を
当面の
ユリアリスとアイリーンの会話から、子供を作るのは年功序列らしい。
年齢が上ということで、今はユリアリスの番のようだ。
その次は妹のアイリーンとなる。
もしかして、順番に別の女性の相手をさせられるのだろうか?
不要に森へ近づいてはいけない――という話は『危険だから』と
森の結界に入る事が出来た理由も、善人である事の他に生殖能力が問われていたのかもしれない。
また、
交配する相手が異種族であれば、近親相姦の心配もない。定期的に他種族を
作るべき子供の数を里長が決めていると考えた場合、ノルマを達成するまで解放されることはなさそうだ。妊娠が分かるまで、続けさせられる。
並みの男性では持ちそうにない。森から帰ってこない者もいれば、廃人のような状態で発見された者もいると聞く。
俺は自分の身を守るうえでも、ユリアリスとの仲を良好に保つ必要があるようだ。
「ああ、待ってる」
と言って、ユリアリスの頭を
どうか、このまま成長しないでくれ。
「うん、待ってて♡」
無邪気に
彼女の言葉と同時に、俺の周囲が黒く染まってゆく。
暗くなった――というよりは『記憶が途切れた』と考えるべきだろう。
どうやら『夢』は、ここまでらしい。
まるで演劇における終幕の舞台のように森が消え、景色が移り変わる。
ふと気が付くと、黒の空間に一匹の【蝶】が飛んでいた。
光り
その様子は、まるで俺を呼んでいるかのようだ。
過去の『夢』から解放され、精神の状態も、ゆっくりと
俺は素直に、その【蝶】の後をついていく事にした。しかし、ここまで意識がハッキリしているのに『夢』だというのも、おかしな話だ。
恐らくは
お陰で『夢』の中でも意識を
問題となっている光の【蝶】からは、俺以外の存在を感じる。
誰かが俺の『夢』に干渉しているようだ。
敵意はないようだが、気にはなる。
周囲は相変わらずの黒一色。
あまり長い時間いると上下の感覚すら、分からなくなってしまいそうだ。
このまま『夢』の中に
それでも光の【蝶】の後をついて行き、
以前より、何度も【蝶】が送られていたのかもしれない。
俺は先程、使い方を思い出したばかりの感応魔法を使用することにする。
右手に魔力を込めて【蝶】へ
同時に【蝶】の姿が一人の少女の姿へと変わる。
ぼんやりとした
「そこに居たのね?」
と問い掛けられる。正確には、そんな気がしただけだ。
それはこちらの
双方向の
一方的に意識だけが流れ込んでくる。
「ああ、心配したわ」
「私は大丈夫」
「いい、危ないから、助けに来ないでね」
次々に思念が言葉となって伝わるが、いまいち要領を得ない。
もしかしなくても、送る相手を間違えているようだ。
「
「アイリーン、
その言葉を最後に、ぼんやりとしていた少女の姿が消える。
俺は無意識に【蝶】の一匹を捕まえると、感応魔法をかけた。
すべての【蝶】が消え、再び真っ黒な世界へと戻る。
そんな中、俺の手の平に魔法をかけた一匹の光の【蝶】だけが残った。
(ヤレヤレだ……)
また、厄介事に巻き込まれてしまったようだ。
どうやら俺は、ゆっくりと寝ている事も出来ないらしい。
「アイリーンか……」
すべてが偶然というワケではなさそうだ。
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【お知らせ】
次回の投稿は7/13(木)を予定しています。
短編ですが、
▼隠れ家カフェの
https://kakuyomu.jp/works/16817330660057359099
を投稿したので、読んで頂けると嬉しいです。
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