第10話 アルラウネ


 目の前に現れたアルラウネは、俺にペコリを頭を下げた。


 さて……彼女は『極』で召喚した魔物だが、どれほどの強さなのだろうか。


「《彼の者の神髄を見通せ》」


 アルラウネの周囲に文字が浮かび上がり、ステータスが表示される。


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アルラウネ ランクB

力 :D

敏捷:E

体力:D

魔力:C

知力:B

技能:根生の恵、植物の精、幼精、陰気

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 ……なんかこう微妙じゃない?


 いや低いステータスではないのだが……ハーピーやオーガとパッと見であまり変わらないというか。


 ハーピーたちは魔力がまったくないので、そこの分が評価されてるのかも知れない。


「クックック、アルラウネは植物の魔物でございます。能力としては近接戦もそれなりにこなせる魔法使いでございます。ようはバランス型ですな」

「……近接こなせるのか?」


 アルラウネは身長80cmくらいの少女だ。とても近距離で戦えるようには見えないが……。


「クックック、以前にお教えしたことをお忘れですか? スキルを見てください」

「おっとそうだったな」


 俺はステータスの『技能』のところを見ながら、詳細を知りたいと強く念じる。


 するとその説明文が更に追記されるように浮かび上がっていく。


 ――根生の恵・・・三十分間、地に足をつけなければ干からびて死ぬ。地に根を張ることで養分を吸い取り、進化せずとも著しく強くなる。また根を触手のように操る。


 ――植物の精・・・植物と話すことが可能。


 ――幼精・・・落ち込むと魔王への忠誠度が低下する。


「アルラウネは土の養分を吸い取って強くなるのです。近接ができるというのは、土に張った根を巨大化させて戦うため」

「なるほど……根を触手みたいに操って、鞭みたいに戦うみたいな?」

「その認識でおおよそ合っているかと」


 ふーん……とはいえ力と体力はDだ。ハーピーと同じくらい、オーガより低いので過信は禁物かな。


 やはりアルラウネの最大の強みは魔力Cだろう。


 なにせ我が魔物で初めての魔力持ちだ! 魔法が使えるようになったのだから!


 あ、ちなみに魔物の進化については以前にゴブリン博士にレクチャーを受けている。


 ようは魔物のランクが上がって全体的に強くなるのだが……まあ今はよいか。


「アルラウネ、お前の魔法を見せて欲しい」

「はい。ですがその前に……恵まれた土の場所をご存じないでしょうか? 私は恵まれた土に根を張れば成長して強くなれます」

「恵まれた土……それってどれくらい必要? 鉢植えくらいの量でもよい?」

「3mほどの土山が欲しいです。それを吸収していけばいずれは進化せずとも、ランクが上がるほど強くなれます」


 栄養満点の土については少し考えていた。


 ブーモたちの畑の土壌をよく出来れば、より作物の収穫量が増えるのではないかと。


 そのために肥料を用意する予定はあったし……まあ試してみてもいいか。


「じゃあついてきてくれ」


 俺はアルラウネたちを連れて洞窟を出て、そこから少し離れた平野に移動した。


「あのー……ここの土は悪くはないですが、特別よくもないのですが……」


 アルラウネは申し訳なさそうにこちらを見てくる。


「わかっている。移動したのはここの土が目的じゃないんだ」


 俺はそう言いながら掌にEP貨幣を一枚出現させる。


「《万象司る糧よ、我が望みに変貌せよ》」


 EP貨幣を地面に向けて軽く投げると、EP貨幣が光り輝いて膨らんでいく。


 そしてへと変貌した。独特の少し臭い匂いが周囲に漂ってくる。


「こ、これは……」


 アルラウネはフラフラしながら土の山へと近寄っていく。


 どうやら植物だけあってこの土の山が、栄養満点であることが分かるのだろう。


 これは肥料だ、植物を育てるための栄養の詰まった土。


 この世界では肥料は存在しない。ブーモの魔法により肥料なしでも植物が育つから、必要がなかったので生み出されていない。


 だがやはり土が良い方が植物は育ちやすいはず。今度ブーモたちに肥料を混ぜた畑で麦などを栽培してもらう予定だった。


 それをアルラウネにも試してもらう形になる。


「この肥料を土に混ぜてそこに根を張れば……」

「素晴らしい土ですね! いただきます!」


 アルラウネは歓喜の声をあげると、ピョンとジャンプして土の山の上に乗った。


 すると彼女の裸足から根がにょきにょきと伸びて、地面に根を張っていくではないか。


「あ~よい土です。私、ここの土の子になります……」


 アルラウネは顔を緩ませて極楽そうにしている。


 へー……根を張るってそういう感じなのか。


 ところで肥料って土の上に撒くか、土に混ぜる使い方のはずなんだが。


 そうじゃないと植物は栄養過多というか、肥料やけで逆に枯れる恐れもあるような……。


「お、おいアルラウネ……大丈夫か? 栄養とり過ぎて枯れない?」

「もちろん大丈夫で……うっ!?」


 アルラウネは急に胸元を抑えて苦しみだした!? 言わんこっちゃない!?


「アルラウネ! すぐにその土の山から離れろ!」

「い、いえ大丈夫……あああああああぁぁぁぁ!」


 悲鳴をあげたアルラウネは明らかに変調をきたしていた。


 具体的には身体が成長していく。まるで子供が大人の身体に育っていくのを、早送りで見ているかのように。


 そうしてアルラウネの絶叫が止まった時、彼女の身長は二倍近くになっていた。


 身体も高校生くらいの身体つきで、胸もぺたんこだったのがCカップくらいに膨らんでいる。


 美しい緑髪は腰近くまで伸びて、すごい美少女に変貌していた。


 ちなみに彼女の纏っていたツルや葉も一緒に育ったので、服が破けてーとかそんなのはない……。


 それと草やツルで編まれた衣服は、少しグレードアップしていてツルをリボン結びなどの細工が凝ってある。


 先ほどまでが装飾のない平民服なら、今は貴族令嬢のドレスくらいの違いだろうか。


 そしてアルラウネは先ほどまでに比べて何と言うか、全体的に自信に満ちたような雰囲気を纏っている。


「おーっほっほほ! 主精様に改めましてごあいさつを。新、アルラウネです。よろしくお願いいたしますわ!」


 アルラウネは勝気な笑みを見せながら高らかに笑い、俺に礼儀よく頭を下げて来た。


 幼女時は小さい子がたどたどしく挨拶した感じだったが、今は礼儀の整った貴族令嬢のような仕草に見える。


 あ、アルラウネが前かがみになったので、葉っぱの胸当てから少し谷間が見えそう…………も、もうちょっと。


「クックック、どうやらアルラウネは強くなったと思われます。鼻の下を伸ばすよりステータスの伸びを確認してみては?」

「…………《彼の者の神髄を見通せ》」


 アルラウネの周囲に文字が浮かび上がり、ステータスが表示される。


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アルラウネ ランクB

力 :C+

敏捷:E

体力:C+

魔力:B

知力:B

技能:根生の恵、植物の精、陽気

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 ぜ、全体的にステータスがワンランク上がってるぞ……!


 というかこれ、『力』も『体力』もオーガより強くなってる……。


「このような力を頂いたのです! 必ずや主精様の御力になってみせましょう! 私こそが肉国最強の魔物ですわー!」


 アルラウネの周囲の土から直径1mはあるであろう触手が、いくつもボコッと地中から生えて来た。


 さらに触手たちはドリルのように回転している上に物凄く長い。


「どうですか! 主精様に与えられた知識で、根を回転させた方が色々掘りやすいと学びましたことよ! このドリル触手で敵をお貫きあそばせますわ! おーっほっほっほ!」

「いいと思うぞ……」


 地上に出ている根の長さだけでも、おそらく10mくらいはあるように見える。


 この根を触手として鞭のように扱ったり、それこそ敵にドリル攻撃とかできてしまう。


 すごく近接に強そうだぞ。魔法タイプとは何だったのか。


 もうこれ戦い方がパワータイプの怪獣系敵だろ。


「主精様のお与え下さった豪華な土にて、ロイヤルになりましてよー!」

「クックック、この成長も人の技術の賜物ですかな?」

「人というか牛とか鳥の力説はあるが」


 ほら肥料って何で作られるかというと……ねぇ? 

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