第10話 学級裁判の代表に選ばれた経緯
今回の学級裁判、各クラスから代表2名を決めなくてはいけない。その中でCクラスは北条と俺が選ばれた。
北条が選ばれたのはわかるが、なぜ俺も選ばれたのか、それは学級裁判が行われる数時間前に遡る。
「今回の学級裁判はやっぱり頭の回る人を選出すべきだと僕は思う」
最初に提案したのは学だった。その意見を聞いた女子は過度に共感する様子を見せ、そのまま流れでその案が通ることになった。
ただ、問題は誰を選ぶべきか。
そこで挙げられた候補が、五十嵐学、伊藤壬午、木兎杏奈、北条璃が挙げられた。
「さて、この4人で学級裁判に参加したい人はいるかな?」
誰も手を上げない、そんな中一人だけ手を上げたCクラスの生徒がいた。
「私がやるわ」
手を上げたのは北条璃だった。誰もが手を挙げるとは思わず、驚きを見せる周囲のクラスメイトたち。
「北条さん、ありがとう。これで一人目は決まりだね。あと一人だけど…」
「ちょっと待ってくれるかしら。五十嵐くん…」
「な、何かな?」
「もう一人は私が決めてもいいかしら?」
「あ、まぁ本人が嫌でなければ、いいけど…」
「本人が拒否しなければいいのね。それじゃあ、一緒に来てもらいましょうか…」
その時、俺と目線があった。俺は嫌な予感がしたのか、一瞬、背筋がゾワッとした感覚に襲われる。
「赤木くん…一緒に頑張りましょう」
「え…」
「ねぇ?」
まるで拒否するなよと圧を感じる熱い視線。
別に断ることもできるが、北条が珍しく、自ら手を挙げての参加、これはなかなか見れるものじゃない。どうせなら近くで見たほうが得かもしれない。
「わかったよ…」
「じゃあ、学級裁判の代表2名は北条さんと赤木くんで決まりだね」
こうして俺たちが選ばれ、1回目の学級裁判が行われたのだ。
そして現在、俺たちは事件があった現場に足を運んでいた。
外はまだ明るいのに薄暗い廊下、奥に行けば行くほど薄暗さが際立つ。この現場で一號と有馬京介の暴動が起きたのだ。
「確かに、ここなら誰にも見つけられないよな」
「ええ、来た道には確かにコンビニがあったし、目撃している生徒がいるとすれば、やはり、コンビニ付近ね」
「ああ…」
ここまでの道にあったのはコンビニのみ、道も限られているから間違いない。だから、一つ疑問があるとすれば、なぜこの場所だったのか。
今日の暴動を知らなければ、まず来ることのない場所だ。そんな場所を有馬京介は知っていた。その理由……。
「どうして、有馬くんはここだったのかしら?」
「うん?」
「この場所、一才監視カメラがないし、何をしても証拠は残らない。残る証拠は目撃した生徒、もしくはコンビニ付近にいた生徒、条件は絞られる。そう考えるならこの場所で暴動を起こすことはBクラスにとって圧倒的優位に立てる、これは果たして偶然?それとも…」
思ったよりも、確信をつくような発言。確かに、今回の暴動は少し話が良すぎる気がする。
一號の短気な性格を利用し、挑発し、暴力を振るわせる、一発でも殴れば、後は自分でさらに痛めつけ、大袈裟に学校へ報告する。
何をしようとBクラスの優位は変わらない。果たして、この状況が偶然と言えるのか、それを確認するためにも情報だ。
そして今の俺たちにとって不足しているのは明確。それは圧倒的な情報だ。
「とりあえず、まずは情報を集めよう。何を推測するも、確実な情報が必要だ」
「そうね。コンビニ付近によくいる生徒を探しましょう。その人なら、もしかしたら、あの時、彼ら二人を見かけた可能性があるわ」
「そうだな…」
俺たちはまず、コンビニ付近の調査を行った。
しかし、時間が時間で、あまり生徒を見かけなかった。
「もうすぐ6時だし、あまり生徒はいないな」
「そうね。でも私たちには時間がない以上、ダメもとで聞いてみましょ」
「そこのあなたちょっといいかしら?」
北条が見ず知らずの生徒に話しかけた。
「あ、はい。なんですか…」
「あなた、ここ最近、学級裁判が行われたことは知っているかしら?」
「ああ、それなら」
「そう、ならこの人を見たことがあるかしら?」
スマホから一號が写っている写真を、その人に見せる。
「いや、見たことないな」
「そう、ありがとう。わざわざ付き合わせてしまってごめんなさい」
「あ、うん。じゃあ、帰ります」
そのままその人はソワソワしながら、帰っていった。
「あれって上級生だよな。よく話しかけられたな…」
「彼、とても怪しいわね」
「え?そうか?ただ自信のない男子高校生にしか見えなかったけど?」
「私がそこらへんの生徒に話しかけるとでも?そんな無意味なことするわけがないわ」
「お、おお…つまり、北条はコンビニ付近の生徒の中で彼が一番怪しい、もしくは何か知っていると思ったわけだ」
「そうよ、そしてのあの表情、私が話しかけた時、一瞬、表情が固くなっていたわ」
「それがどうしたんだよ」
「見ず知らずの生徒とはいえ、上級生。そんなに怯えることがあるかしら?」
「どうだろうな。でもあり得なくはないんじゃないか?」
「……そうね。でも彼、私たちのことをチラチラと見ていたのよ?」
「………」
さすが北条、よく周りを見ている。確かに彼は、こちらをチラチラと確認していた。それは俺も気づいていた、だがどうもそれすら罠に俺は見えていた。
果たして、俺たちよりも優秀だと判断されたであろうBクラスが、何もせずに次の学級裁判まで待ってくれるのだろうか。いくら、圧倒的有利でも勝つための道筋は用意しているはずだ。
う〜ん、もしかしたら、Bクラスの魔の手は上級生にも届いていて、その影響を受けているとか?……可能性はなくはない。
これ、思った以上に苦戦するかもな。
「赤木くん?」
「うん?あっごめん、ちょっと考え事してた…」
「そう、とにかく、もう少しコンビニで調査を続けましょう」
「え…」
これってもしかして、ギリギリまでここにいるつもりですか?
あ、その流れですね。
俺は嫌だといえずに、結局、ギリギリまでコンビニ付近を調査することになった。
「まさか、こんな時間まで付き合わせられるなんて」
「当たり前でしょ、学級裁判が終わるまでは付き合ってもらうから」
「はぁ〜〜」
結局、コンビニ付近で話しかけたのは計3人、皆、彼と同じ反応をしたところを見ると、北条の勘が鋭いことがわかった。
とはいえ、一號の言い分を証明するには全然役に立たない情報だ。せめて、あの時、現場を見ている生徒でもいれば、話が変わってくるのにな。
それにしても、北条と改めて二人でいるとなんか気まずいな。見た目は美人なんだけど、性格がな〜〜。
「赤木くん、何か失礼なことを考えていない?」
「あ、いや、そんなことはないですよ、うん。全然、全く…」
「わかりやすいわね」
「顔に出やすくてすいませんね」
とにかく、本当の情報が足りない。
やはり、情報を得るには調べてみるしかない、Bクラスを……。それにきっとBクラスは俺たちのことを既に調べ終えているはずだ。
実際にあの東条さんは俺の名前を知っていたし。
「とりあえず、今日はここで解散ね」
「そうだな」
「また明日、放課後ね」
「あ、はい」
「じゃあ…」
「うん…」
帰り道、いつも通りの道を歩いていると、話し声が聞こえてくる。そこにはBクラスの前葉真也と東条綾音がいた。
「本当に、なぜここで誰を待っているんですか?」
「内緒…待っていればわかるよ」
「しかしですね、もうここ1時間は待ってますよ」
「焦りは禁物だよ、気長に待てる広い心を持たないと…」
「ですが…」
何やら誰かを待っている様子だ。誰を待っているか知らないが、早くそこを退いてくれないかな、帰れないんだけど。
「それにしても、思ったより、すぐに
「うん?どうしてそう思うの?」
綾音は不思議そうに問いかけると、すぐに真也は口を開く。
「だって、今回の学級裁判は圧倒的にこちら側が有利、監視カメラがないことも確認していますし、加害者である一號蓮也は評判が悪い。どう考えても、Cクラスに勝ち目はないではないですか…」
ほぼ完璧な回答っと何も考えていない人なら思ってしまうだろうが、綾音は違う。
「それはどうかな。Cクラスはペーパーテストを乗り越えているから、一筋縄じゃいかないと思うけど…」
「そんなのただの偶然ですよ」
「偶然ね。この学校に偶然なんてないと思うけど…ねぇ?赤木くん」
「…赤木?」
東条さんと目線が合う。
どうやら、バレているようだ。
俺は仕方なく姿を見せる。
「なっ!?まさか待っていたのは…」
「ええ、赤木くんのことだよ」
「なんで、待ち伏せしてるんだよ」
「ちょっと聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?」
聞きたいことってなんだ?まさか、俺から情報を聞き出そうと?いや、東条さんがそんなことをする性格には見えないけど。
「そう。まずはすごいと拍手を送りたいと思って…」
「はぁ〜」
「いや、誇っていいと思うよ。なんたって私に反論し、そして私の穴をついてその場を退けんたんだからね。これは人生において一生の自慢話なるに違いないよ」
どこから出るんだ、そんな自信が、もしかして東条さんって結構な変人?
「とまぁ、とりあえず、褒めにきたのと、もう一つ…」
東条さんと目線が合う。ここからが本題か。となると今の話は前座か。
「一つどうしても気にあることがあって、ペーパーテストなんだけど、どうやって乗り越えたの?」
なるほど、そういうことか。
東条さんは単純に聞きに来たんだ。本来の予定ではペーパーテストでCクラスの誰かが退学者が出る予定だったのが、まさかの退学者ゼロというイレギュラーが起きた理由を。
「どう乗り越えたといって、俺たちはただ勉強をして挑んだまでですよ」
「そう、つまりあくまで勉強の成果と?」
「そうなるな」
「………なるほどね。そう言われたらそうなんだろうけど……ありがとう!!疑問が解けてスッキリした。帰るよ真也」
「あ、はい!!」
俺の横を通り過ぎる綾音。
すると通りすぎる間際に一言呟く。
「嘘をつくのが得意なんだね。赤木くんは…」
俺は咄嗟に後ろを振り向き、綾音を見つめる。
「あれは観察能力の化け物だな…」
どこか見透かされているような気がしたが、東条さんの前では発言に気おつけた方がよさそうだ。
けど、それと同時に少し歓喜した。さすが天才が集う名門校だと…。これは余計に負けられないぞ、北条……。
次の学級裁判まであと2日。
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