第23話 お金事情
「ただいま」
「巻けた?」
玄関に入った矢先、花音はひょこっと頭だけを出した。
その質問にストーカーは栞だったと、正直に答える事を俺は出来そうにもなかったので、
「あぁ巻けたよ」
と言って玄関框を登った。
別に正直に答えても良かったけど、誰かが争う姿は見たくないので、誤魔化してしまった。
「それで?今日は顔見えた?」
そういえば直接聞いた訳じゃないから、こう質問されてもおかしくないか。
「いや、今日も見えなかったよ」
「そうなんだ。じゃあ明日も気をつける必要があるね」
と、言って花音はリビングに向かった。
その少し無邪気に見える後ろ姿に罪悪感を感じながらも、俺は花音の後ろに着いて行った。
彼女は途中で曲がってキッチンへ行くと、冷蔵庫を開けて言った。
「そういえば冷蔵庫の中身が少なくなってるけど、食べ終わった後にでも行く?それとも今すぐ行く?」
「そんなに入ってなかったっけ?」
「実は昨日の料理で少し失敗しすぎちゃって…」
「それなら仕方ないな。まだストーカー居るかもだし、食べ終わった後にでも行ってくるよ」
「私も付いていくよ」
「わかった。そういえば、料理当番とか決めてなかったけど、決めといた方が良いか?」
「出来る人がやればいいんじゃない?もうそろそろ友達と遊びたいでしょ?私は慣れてきたし、問題と言えばストーカーくらいだけど、終わっちゃえば問題ないでしょ?」
「まぁ確かにそうなんだけど…」
花音は視線と言うか、気配に鈍いし、別々に帰ってくるのであれば合鍵を作らないといけないだろう。作る事事態はいいんだけど、収入のない限られた金額でやりくりするには出来るだけ出費を抑えたい。親父の鍵を貰っておけば良かったんだろうけど、何を思ったのか鍵も一緒に持って行った。
「出来るだけ出費を抑えたいから合鍵代が少し勿体ないんだよな。遊ぶのもお金は減るだろからあんまり遊びたくはないんだけど、花音は遊びたいのか?」
「私はそんなにかな~。たまに帰り道で何か買うくらいかな。てかそんなに貰ったお金少ないの?」
「いや、実はまだ確認してなくてな。今まで自分のとこから出してたから確認なんてしてなかったし、少なくて餓死やら取り立てやらの面倒ごとになりたくないからな。つってもあんまり今までお金使ってないし、俺の勝手な親切心だからお礼とかいらないからな?」
「そうなんだ。ありがとね!私の事考えてくれて」
「?何か少し顔赤くないか?」
「っ!そんなことない」
何か少し顔を隠して言っている花音に違和感を感じたが、しつこくても嫌われるだろうと思い、考えることをやめ、テレビをつけた。
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