賑やかな朝食
それから約数十分後、支度が済んだようだ。
「レイ様、レオン様。準備が整いましたので、ダイニングルームへご案内いたします」
「分かりました」
「ああ」
レイは、長い黒髪はそのままに、淡い緑色の生地がメインの、アクセントに白の生地を胸元とスカートの切り替え部分に施したドレスに身を包んでいた。
深緑や黄緑の糸で施された植物や花の刺繍が控えめに装飾されており、とても彼女に似合っている。
レオンは、長袖の白いシャツの袖は捲って、焦げ茶のベストを羽織り、下は深緑のカーゴパンツにバックルとピンバックルが金の黒ベルトとシンプルな服装だ。
だが、そのシンプルさが彼をより引き立てている。
また、銀色の短髪を降ろしていた姿から、前髪をかき上げにしてもらったことで、彼の整った顔立ちがはっきり見えるようになった。
二人の服は、セシルがもう着ないからと譲ってくれたのだ。
レイとレオンはエイミーの案内で、一階のダイニングへ向かった。
コハクは、これから食事という事もあって、一度召還陣の中に戻ってもらった。
三人は二階の客室を出て、一階の広間へ続く左右にある階段の片方から降りる。その二つの階段の間には、奥に続く扉がある。その先に、ダイニングルームがあるようだ。
エイミーがダイニングルームへの扉を押し開け、中へ入る。レイたちも彼女に続き、扉の奥へと進んで行く。
「エイミーさん、ルーカスさんたちはもう着いているのかしら」
「いえ、もうすぐ来られると思います」
エイミーが言い終わると、彼女たちの背後から誰かが声を掛けた。
「レイさんたち、おはよう。よく寝られたかな?」
声を掛けたのはルーカスだ。
ルーカスの後ろには、セシルとカインの姿が見える。
彼らは執事と一緒に来たようだ。
「おはようございます。はい、とてもよく眠れました。ありがとうございます」
「そうか、ならよかった」
ルーカスは、にこやかに微笑む。
「二人とも、とても似合っているわ」
「セシルさん。私たちに服を用意して頂き、ありがとうございます」
「気にしないで。ずっと仕舞われたままだったから、着てくれる人がいて私も嬉しいの。さあ、ダイニングへ向かいましょう」
セシルは、楽しそうに話す。彼女が笑う姿は、周りに花が咲いているのかと錯覚するほど可愛らしい。
合流して、ダイニングルームへ向かうルーカス一行。
「昨日カインから、君の話を少し聞いたよ」
歩きながら、ルーカスがレイに話しかけた。
「え?」
彼女の反応を見て、カインがすぐさま会話に入る。
「両親には話しておいた方がいいと思って、伝えさせてもらった。両親にも屋敷の者にも、口外しないように釘を刺しているから安心してくれ」
「分かったわ」
レイは、彼の嘘偽りの無いその言葉を信じ、ルーカスと会話に戻る。
「君は、暗闇の森で暮らしていると聞いたが本当なのかい?」
「はい」
「そうか。朝食を摂りながら、ぜひ暗闇の森がどんなところなのか、私たちに教えてくれないだろうか」
ルーカスは、彼女の暮らしに関心を示す。
「ルーカスさんは、あの森に興味があるんですか?」
「そうだな。森のこともそうだが、その森で暮らしているという君にとても興味が湧いた」
彼は、隣に並ぶ歩くレイを横目にそう言った。
その瞳には、彼女の真偽を見極めるような意志が見える。
「そうですか。私は口下手ですので、上手く伝えられるか分かりませんが、それでも良ければ。(私が嘘をついていないか、知りたいのね)」
彼女は、顔には出さないが、ルーカスの意図を汲み取っていた。
「ああ。構わないよ」
ダイニングルームに着き、各々席に腰掛ける。
朝食は、ロールパン、サラダにコーンスープだ。
「皆、席に着いたね。では、食べようか」
「そうね」
ルーカスとセシルが言葉を交わす。
二人が食事に口をつけると、カイン、レイ、レオンの三人も朝食を食べ始めた。
今日の朝食は、いつもより賑やかだ。レイとルーカスは、森の様子やその森に住む魔獣の話、これまでのレイの暮らしなどの話で盛り上がり、その会話をセシルとカインは時折合いの手を入れながら微笑みながら聞いている。
レオンは、その話に興味も示さず、一人食事を楽しんでいた。
いつもより長い、朝食の時間を楽しんだルーカスたちだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます