コハクを愛でる会
「……ところで、これは老人のただの興味なのだが。レイ殿は他に契約している者はいるのだろうか」
「はい」
「その者を見せてもらうことは可能だろうか?」
セルビオスは、レイの契約獣に興味を示した。
「少し時間を頂けますか」
「ああ」
レイはコハクに問いかける。
「(コハク、今の話聞こえてた?)」
「(うん、聞いてたよ)」
召還陣の中にいる契約獣に、外の会話は聞こえているようだ。
また彼女の場合、契約を結んだ相手とは声を出さなくても会話ができるらしい。
「(出てきてくれる?)」
「(その人、悪い人じゃない?)」
コハクは、見た目に寄らず少し人見知りだ。
「(フェンの知り合いみたいだから大丈夫だと思う。それに何かあったらフェンが黙ってないわ)」
「(それもそうだね。いいよ。僕を外に出る)」
「(ありがとう。後でブラッシングしてあげる)」
「(やった~!レイのブラッシング好き!)」
「……お待たせしました。今呼びます」
「本当かい」
レイの契約獣が見れると、前のめりになったセルビオス。
「おいで、コハク」
その呼びかけに応えたコハクが、謁見の間に姿を見せた。
「ほう。これまた、黒ヒョウとは。なかなか、契約できるものは居ないぞ。レイ殿の契約獣は実に面白い者たちばかりだな」
黒ヒョウが現れた事で怯えるものがいる中、セルビオスは目を輝かせている。
「この子は黒ヒョウだけど、危険ではないです。大きい猫だと思ってもらえると」
「そうか。猫か。私は、猫が好きでね。撫でさせてもらえるか?」
彼は、とても楽しそうだ。
「はい、大丈夫です」
「ありがとう」
セルビオスは座っていた王座からレイたちのいるところへ、コハクを怯えさせないようにゆっくりと歩いていく。
「レイ、怖い人?」
「大丈夫よ、怖くない」
レイは、セルビオスを目にし少し怯えているコハクに寄り添う。
「……きれいな瞳だ」
彼女たちのもとにたどり着いたセルビオスは第一声にコハクの瞳を褒めた。
「この子の名前は、その瞳の色から付けたんです」
「コハクといったかな?」
「はい。撫でる時は、まず手のひらを嗅がせてから、撫でてあげてください」
「こうか?」
「はい」
レイの助言を受け、セルビオスはそっと手を伸ばす。
コハクはその手を少し警戒しながら嗅ぐ。
「コハクが手のひらにすり寄ってきたら、口周りを撫でてあげてください。そこを撫でられると喜びます」
「ほう」
「この人怖い匂いしない」
危険な人物ではないと判断したコハクが、セルビオスの手にすり寄った。
「そうか、撫でさせてくれるのかい?ありがとう」
彼は優しくコハクの口元を撫でる。セルビオスの表情は、とても穏やかだ。
コハクも、撫でられて満更でもない様子。
謁見の間は、ほのぼのとした空気に包まれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます