第28話 マギュウケイオスノニク

スラムでは宴が行われていた。


長い黒竜の支配から解放された人々は 

歓喜し、酔っ払い、ババ達が作ったスラムチキン南蛮を頬張った。


「くったぁ、くったぁ!まだ食うぞ俺はぁー!

ウィィ!ばば!スラムチキンおかわり!!」


フワ坊はカオスの酩酊状態になりながらも

次から次に料理をたいらげていく。


「おい!フワ坊!飲み過ぎだ!!」



心配するジンはすでに領主の顔になっていた。


「これからどうするジン…?スラムをおさめたとお前が声を荒げたところで納得しない奴らもいるだろ…。」


そう言ってブラディは煙をふきだした。


「ハイ、実際俺らとは別のチームはこれをよく思わないでしょう。でも焦らずに時間をかけて

復興をしていきますよ。」


カゲルはジンの瞳の中に未来の色を讃えたスラム街を見たような気がした。


「頑張れよ…。今日は飲むぞ…!!」


ブラディはカオスオレンジを一気に流し込んだ。


カゲルもチキンを食べながらカオスロゼを

ちびちび飲んでいる。


「美味い、、、。極上の味だねブラディ!」


チキンの味に驚くカゲル。


「スラムのチキンは闇肉って言われててな

カオスを喰って育てたチキンさ…。ブルジョア野郎には生涯味わえないぜ…。」


ブラディは酒をすすり、チキンをくらい、ジンにもらったタバコを吸うというセットの中に

言葉を添えた。


「あんた達!まだまだ肉はあるからね!!

たんとお食べ!!スラム牛のソテーできたよ!!」


ババの腕も唸る。


「きたぁ!!スラム牛だぁ!!!ババ?もしかしてこのスラム牛って⁈」


「ああ、魔牛ケイオスの肉だよ!!」


フワ坊の問いにババは満面の笑みで答えた。


「ケイオスだぁぁぁ!!!!みんな!!

ケイオスの肉がくえるぞおおおお!!!!」


フワ坊が飛び跳ねた。


「ええ!!!?ケイオス!!?よこせフワ坊!!!」


ジンの領主の顔が一瞬で崩れた。


「やだよ!ジン!!俺がずぇーーんぶ食べちゃうもんね!!」


フワ坊は並ぶ皿の肉をまるでフグの刺身でもすくうようにとっては食べていく。


「俺も食べよっと、、。」


カゲルもケイオスの中に口をつけた。


「あ、美味しい、、。」


呟いた数瞬であった。


幾多の障害を乗り超えて巡り合った舌と肉は

誰にも見られない口の奥深くで幾星霜にも感じられる一瞬のキスをした。


舌先のフレンチキス、だが舌が瞬き一つ

する間に彼女は目の前から消えてしまった。


舌は初恋の人を夢の中で探し続ける哀れな

小説家のように口腔内をよたよたと彷徨い

こう言った。


「ババ!!僕にもスラム牛おかわり!!」


ニマァ


ババはニヤつき


「あんたは若いんだからもっと食いな!!」


大盛りの肉をカゲルにわたした。


「カゲル!ボクにも食わせるのだぁー!」


ナナゴウがカゲルの皿に襲いかかる。


「ナナゴウ落ち着け!くちを開けて!

あーーん。」


「ああーーーーんなのだ!」


パクッ


「うまうまなのだぁ〜うまうま〜!まだほしいのだー!」


ナナゴウはくちを開けてカゲルにねだった。


メキメキメキ


ナナゴウの背中の翼が軋み大きくなっていることにブラディは気づいた。


「竜を育てるのは…。骨が折れそうだなカゲル…。」


「ブラディのチルしてないで手伝ってヨォ!!」


「そっちは任せた…!!トンチンカン!

黒ビール飲むぞ…!!」


ブラディは話をそらせた。


「ハイ!!ブラディさん!!喜んで!!」x3


トンチンカンは黒ビールをジャッキで注文した。


スラムの夜は長くなりそうだ。













  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る