魔王のあとつぎ【増量試し読み】

吉岡 剛/ファミ通文庫

プロローグ

 シン=ウォルフォード。


 アールスハイド王国、いや世界においてこの名を知らぬ者はいないであろう。

 魔人王戦役と呼ばれる、理性ある魔人、オリバー=シュトロームが配下の魔人たちを従えて世界に対して宣戦布告を行った際、アルティメット・マジシャンズという魔法士集団を率いてこの魔人たちを討伐。

 世界の危機を救った。

 その後、一部の人間しか知らなかった東方世界への航路を飛行艇を作ることで開拓。

 交易を樹立させ、安価で魔石が輸入できるようになった。

 そのお陰で魔道具業界を始めとする産業が活発になり、経済は大きく発展した。

 また、アルティメット・マジシャンズのメンバーであり親友でもあるアールスハイド王国王太子アウグストの妃であるエリザベート妃の暗殺計画を何度も防ぎ、王家の信頼も篤い。

 民衆は彼のことを敬意を込めて、魔法使いの王『魔王』と呼ぶ。

 その他にも、創神教本部から『神の御使い』と認定され、敬虔な教徒は彼のことを『御使い様』と呼ぶ。

 これほど世界中から認知され、敬われている彼だが、愛妻家で非常に子煩悩であることも知られている。

 妻は、創神教の神子でないにも関わらず創神教本部から聖女と認定されたシシリー=ウォルフォードで、彼女との恋物語は、若い世代の憧れとなっている。

 また、養子で長男のシルベスタ、シンとシシリーの実子である長女シャルロットと次男ショーンといった子供たちがいるが、長男シルベスタは魔法学院の最難関であるアールスハイド高等魔法学院を首席で卒業するほど優秀で、子供を立派に育て上げたことから理想の父親とも言われている。

 そんなシンの子供たちだが、今年、もう一人シンとシルベスタの母校であるアールスハイド高等魔法学院の門を叩くものがいた。


 長女、シャルロットである。

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