学校一の美少女に告白されました
理亜
第1話 不倫
――小学5年生の頃――
「いつからだっ!?」
リビングから父の怒鳴り声が聞こえてきた。
父は温厚な性格だ。
怒っているところなんか見たことない。
現在、そんな優しい父が怒っている。
どうして父は怒っているんだ?
誰が父の逆鱗に触れたんだ?
気になった僕はリビングを覗くと――
「え……?」
父は母に怒りの感情を向けていた。
母は申し訳なさそうな表情で俯いている。
おそらく、母が父を怒らせたんだろう。
一体、母は何をしたんだ……?
「おい! 早く答えろっ!!」
「っ……」
父の怒鳴り声が耳を劈く。
怒っている父が怖くて、ガタガタと体が震える。
母も怯えていた。
あんな情けない顔をしている母を見るのは初めてだ。
あれは本当に僕の母親なのか……?
しばらくして母は口を開いた。
「四年前から……」
「なっ!?」
母の言葉に父は驚きを隠せなかった。
四年前から……?
2人は何を話しているんだ?
ダメだ、考えても分からない。
「お前は……お前はずっと俺を騙していたのか!?」
「ご、ごめんなさい……本当にごめんなさいっ……」
「クソッ、なんでだよっ、なんであんな男と浮気したんだよ! 結奈!」
「……」
浮気。
周りに浮気している奴なんかいない、と思っていた。
けど違った。
身近に浮気している者がいた。
しかも、ソイツは僕の母親だ。
その事実にショックを受ける……。
今思うと、この頃の母は変だった。
いつも露出度の高い服を着ており、母の体からタバコの匂いがした。
父と母はタバコを吸わない。
にも拘わらず、母の身体からタバコの匂いがした。
それだけじゃない。
母は「今日は友達の家に泊まるわ」と言って、家にいない日が多かった。
おそらく、浮気相手の家に泊まっていたんだろう。
僕と父が晩ご飯を食べている時、母はソファに座ってスマホをいじっていた。
ずっと幸せそうにスマホをイジッている。
気持ち悪い。
特に目が気持ち悪かった。
母親の目じゃなかった。
女の目をしていた……。
僕だけじゃなくて父も母の異変に気づいていた。
父は探偵を雇って浮気調査をしてもらったらしい。
浮気調査の結果は黒……。
母は浮気をしていた。
どうやら、四年前から浮気していたらしい。
クズすぎる……。
それと同時に『僕の母も女なんだな』と思った。
母の浮気相手の名前は
母と坂田海はインターネットで仲良くなり、最終的に浮気にまで発展した。
父と母の話し合いが終わったあと、
父が話しかけてきた。
「祐二……」
「ん? なんだ……?」
「今日はこれでご飯を食べてくれ」
父が1000円札を渡してきた。
この1000円札で晩ご飯を買ってくれ、と言いたいんだろう。
僕は1000円札を受け取る。
僕は顔を上げて、父の顔を見つめる。
「っ……」
父の顔を見て、僕は声にもならない声を上げる。
目は死んでおり、活気のない顔だった。
そんな顔すんなよっ……。
「……父さんは仕事に行ってくるよ」
父はそう言って家から歩き去っていった。
僕はリビングに戻る。
リビングのソファに母が座っていた。
彼女は泣きながら誰かと電話している。
おそらく、電話相手は母の彼氏だろう。
ちっ、気持ち悪い……。
◇◇◇
――ある日――
現在、僕と父は近所のファミレスにいた。
母はいない。
僕と父の2人だけだ。
「祐二……」
父が僕の名前を呼ぶ。
「なんだ……?」
「俺と母さん、離婚することになったんだ」
「……ぇ……」
父の言葉に頭の中が真っ白になる。
離婚……?
おいおい、冗談だろ?
父は真顔だった。
嘘や冗談を言っているようには見えない。
ほ、本当に離婚するのか……?
父と母の仲が悪化しているのは知っていた。
けど、ここまで深刻だとは思っていなかった。
どうやら、僕の想像以上に父と母の仲は悪化していたらしい。
「祐二、お前とはお別れだ」
また父が意味不明なことを口にする。
お別れってなんだよ……。
嫌な予感がする。
混乱している僕を無視して、父は話を続けた。
「お前はお母さんについていけ。俺とはお別れだ」
「そ、そんなっ……」
時間が止まったような感覚に襲われる。
お別れだと……?
なんでだよ。
なんでそうなるんだよ。
聞きたいことはたくさんあった。
だけど、驚きすぎて口が動いてくれない。
どうしてこうなった……?
いつから歯車が狂った……。
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