「お姉さま、可愛いですわ！」

　リリーベルは恥じらいながら首を傾げる。

　妹の反応が予想と違ったからだ。

「ねぇ、アルマ。これで正解なのかしら？」

「わたくしの至らぬ技術ではこれが限界でございます、リリーお嬢さま。これからも腕を上げるべく精進してまいりますので、本日のところはこれでご容赦を」

「まぁ、アルマの腕が悪いということではないのよ。あなたが素晴らしい技術を持っていることは知っているわ。だけど──」

「お姉さま、お口が浮いて見えますわ！不思議ですわ！」

「まぁ、浮いて？どういうことかしら？」

　リリーベルが分からないとアルマを見れば、アルマは恭しく頭を下げるのだった。

「申し訳ありません、リリーお嬢様。それもすべて私の技術不足によるところです」

「まぁまぁ、アルマったら。そんな風に謝らないで。わたくしが無理なお願いをしたんだわ。それなのにここまでしてくれて嬉しく想っているのよ？」

「もったいないお言葉にございます」

「きゃあ、悪女なお姉さまも可愛らしい」

　きゃっきゃっと喜ぶシャーリーを見て首を傾げて困ったように微笑むリリーベルは、どこからどう見ても……。

　アルマは目を伏せ、腕を上げたところではたしてお嬢様の元々お持ちになられたものを越えられるのだろうかと自問していた。

「失礼するよ──リリー、どうしたんだいそれは？」

　突然の声にはっとして姉妹が扉の方に振り返ると、珍しく目を見開いた状態で公爵令息であるジークハルトが立っていた。

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