第21話 体育祭③ ~ヒロインと旧友~

 体育祭の昼休み。俺らのいつものメンバーに生徒会のメンバーが加わった感じだ。


「斗真、お前リア充だな」


「祐樹の方が……っていつも言ってるけど、確かに今の俺はリア充なのか?」

 

 客観視してみると、鳥山先輩や宮本先輩、小鳥遊や来間といった生徒会のメンバーも美人だらけだ。


「斗真君は本当にえっち、ですね」


「瑞希、その言葉乱用するのやめような」

 その言葉は気に入らなくていいから。


「佳織先輩に里菜先輩、こっちが木葉ちゃんと成海ちゃん!」

 とカラメルが改めて紹介する。


「小鳥遊だけは気を付けた方がいいぞ」


「先輩殴っていいっすか?」

 冗談だって。元ヤンコワイ。



 


 生徒会のメンバーも加わり、9人の大所帯となった俺たちのグループは、円になって昼食を食べることに。ただそこで争いが起きる。円になっても9人なので、基本グループみたいに別れることになるからだ。


 先輩2人と祐樹、瑞希が俺から見て向こう側の方に座る。ただこっち側が問題だった。


「じゃあ、私は斗真の隣にしようかな」

 まずカラメルがそう言うと、


「芽瑠ちゃん? 抜け駆けは許さないよ?」

 真緒が対抗する。


「じゃあ、私は先輩の左側で」

 右隣で争っていた2人をよそに、来間がしれっと左に座る。


「「あれ?」」


 俺が、

「まあ、そんな争わなくてもいいから。そんな変わんないだろ」

というと


「あれ? そんなこというの?」

「じゃあ斗真が選んでよ」

「先輩は私ですよね?」


 と逆に詰められる。えぇ……





 その後、じゃんけんをして俺の右隣が真緒、左隣が来間になった。


「くぅ……」

 と悔しがっていたカラメルは小鳥遊に慰められているようだった、



「久遠先輩って、安佐川先輩の事が好きなんですか?」

 こそっと来間がストレートに真緒に聞く。


「うん、好きだよ。成海ちゃん? だっけ。成海ちゃんはライバルかな?」


「さぁ、どうでしょうか。まぁ、気になってはいます。というか、そんなに素直に言うんですね」


「まぁ、告白したからね」

 

「そう、なんですか」


 こうして気持ちをぶつけてくれる子がいる。俺なんかを好きになってくれる人がいる。俺もぶつからなければならない――


「なぁ」

 ここで俺は口を開いた。2人は黙って、ジッと見つめてくる。

 俺は続けて、


「真緒もカラメルも告白してくれたし、来間もこうして気持ちを言ってくれてさ」

 と改めて感謝の気持ちを伝える。そして、


 

「今日、体育祭が終わった後にカラメルと真緒、来間に話がある」


 いよいよ答えを出す時だ――



 

 午後の部からは、色んな部活の催しであったり、リレーや20人21脚などがある。俺も午後からは暇なので、宮本先輩と来間と共に生徒会の仕事がある。


「先輩、私の事どう思ってます?」

 色々準備をしていると、来間が改めて俺に問いかけてくる。


「来間は本当に強くて魅力的な子だと思ってるよ」


「私、可愛いですか?」


「可愛い、と思う。てか何言わせるんだよ」

 そんなキザなセリフなんか言えない。


「えへっ、ごめんなさい。でも私、先輩のこと良いな、と思ってますよ」


「ほんとかよ」


「先輩の事を気になっている、というか。付き合うとかならこんな……」

 

 と2人で話していると、


「あっ、すいません。ちょっといいですか?」

 ツインテールの女の子が、割って入ってきた。見た感じ、1年生だろうか。


「どうしましたー? 何かトラブルでもありました?」

 来間が対応すると、その女の子は


「あっ、来間さん? 6組、だよね? なんか同じクラスの子が呼んでたよ」

 と言った。


「えっ、そう? あっ先輩、ちょっとクラスの方行ってきますね」

 そういって、来間はクラスの控え席の方に向かった。



「うん? なんだそんな見つめて」

 そのツインテールの女の子は、ずっと俺を見つめている。


「覚えてないなら思い出してあげるよ。アサ君。ちょっと来て」


 そう言って俺を連れ出し、その女の子は俺にキスをした。

 アサ君、何て呼ばれたことあっただろうか……多少、呼ばれたような記憶もあるが。


「お、おい何やってるんだよ!」

 急にキスをされて戸惑ってしまう。

 

「全て私が塗り替えてあげる、っていうのが私の目標でこれが私のやり方だから。なっちゃんには負けたくないし」


 アサ君? なっちゃん? そしてこの子は誰なんだ?

 

 すると宮本先輩が俺を見つけるなり、急いで走ってきた。


「大変だよ、後輩君! 成海ちゃんが!」

 えっ、まさかクラスの控え室に行ったときに?


「えっ、何かあったんですか? すぐ行きます!」


 するとツインテールの女の子が


「あーあ。なっちゃんがやっちゃった」

 とつぶやいた。


「……君は何か知ってるのか?」


「私はただアサ君ならどうにかできると思っただけ。まぁ、なっちゃんがそこまでするとは予想外だったから……それは来間さんに申し訳ない」



「君は、いったい誰なんだ? なっちゃんにアサ君って?」





「アサ君は覚えてないかぁ。でもまぁ10年前ぐらいだからしょうがない、か。

“高松幼稚園”って言ったらわかるかな?」


 女の子が言った“高松幼稚園”は、俺の昔通っていた幼稚園で……


「遊んでいたことぐらいは思い出せるんじゃない?」

 そういわれて思い出してみる。



「はっ……まさか。ハルとナツか!?」

 顔も遊んだ内容もあまり覚えていない。けど、幼稚園で仲が良かったことだけは覚えている。

 でもそんな昔の友達がなぜ……



「大正解」


「でも何で今更?」


「その話は、事件を解決してからにしようか」




 まだまだ体育祭は終わらない――








 






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