最強ランクのロボットゲームパイロット、オーバーテクノロジーと異世界の影響を受けた現代地球を駆け抜ける!
@AzuDra
1章 急変地球~リアルブレイク~
第1話
世界は変わるんだ、一般市民でもそう思えることがある。突如現れ、街を破壊する怪獣を相手に人型のロボットに乗り込み激戦を繰り広げ、はたまた銃を握り地を駆け抜け小型の魔物、テロリストを相手に立ち向かうソルジャーとして戦いに挑む。どちらにせよ夢物語、現実を普通に暮らしていては巡り合うことはほぼ無いと言っていいだろう……ゲーム以外では。
コンシューマー、携帯ゲーム機に始まり次第にネットワークを通じたオンラインゲームと数多くの作品が世に出ては廃れていき、そして進化してきたのだ。
そして現代、ついには世界がもう一つあるかのような仮想空間を舞台としたゲームが台頭してきた。一世代前にはバーチャル空間、バーチャルリアリティなどと呼ばれていたそれはより鮮明に現実的に進化を遂げる。
その技術はゲームに始まり今は軍事、医療など様々な分野へと転用され始めているがやはりゲームが最先端を突き進んでいく。
そしてもちろんその新型ゲームの台頭は社会にも大きな影響を与えた、在宅ワークの効率化、オフィスの縮小など仕事の効率化が進んで行き、とあるゲーム会社の発売したゲームにより職業としてのゲーマーが誕生したのだ。
元々プロゲーマーやストリーマーなどゲームを使う業種は存在していた。しかしそのような一部の天才だけが成功する業種でもテスターやデバッカーなど発売前の確認作業でもなくそのまま、ゲームをプレイしてお金を稼ぐという職業ゲーマーだ。
内容的にはゲーム内で稼いだお金を現実のお金として換金できるという公式のリアルマネートレードが導入された作品が発売された。それまではやること自体が悪だとされていたリアルマネートレード、RMTを公式が行うというのは賛否両論の嵐を巻き起こしニュースに取り上げられるほどだった。
しかしゲームをしながら生活にも困らないというゲーマーには喉から手が出るほど欲しかった誘惑に勝てるわけがなく、次第にユーザーは受け入れてしまったのが現実だった。
そのゲームを始めるのにまず必要になるのが自分のデータを管理するドライブギアと呼ばれるスマートフォンのような端末、これはゲーム内の資金や自分自身の身分などを一括で管理するもので換金時にも必要でセキュリティはとてつもなく高いが絶対に無くせない物だ。そして次に自分をそのゲーム空間へといざなうユニットももちろん必要で、最新型の精神を肉体から切り離し夢の世界へといざなう機体、ディメンジョンダイバーユニット通称DDユニットだ。
DDユニットはヘルメットのような頭部接続ユニット、腕部接続拡張ユニットにより構成されている。腕部ユニットはどちらかと言うとゲームに熱中して現実の体を蔑ろにしてしまうゲーマーのための生命維持システムでありケーブルでデスクトップのゲーミングパソコンくらいのメディカルユニットへと接続されているのだ。このユニットには栄養剤をはじめ様々な薬品が入っているらしく使用者のバイタルに合わせて圧力で投与されるらしい。もちろん強制ログアウトも実行される生命最優先の安全設計である。
ここまで用意して初めてプレイできるのだ。ちなみにメディカルユニットは月に一度交換が必要で専属の業者がやってくる。このゲームをしたくてセットを用意するため借金をする人も続出した。皆ゲームで稼いで返せばいいと考えていたのだろう。しかし、というかもちろんそんなに甘くはないのだけど……
気になるゲームの内容だが、それはロボットのパイロットとして突然現れる怪獣、異次元獣と戦うプレイヤーバーサスエネミーPVE、国家同士の戦争に参加して戦うプレイヤーバーサスプレイヤーPVPをメインとした戦闘アクションゲームで苦手な人は苦手なジャンルの作品で好みの別れる作品だった。
だが、あくまでメインの楽しみ方というだけで実際には無限大の楽しみ方がこのゲームには眠っていたのだ。ある者は機体や武器のメンテナンスや改造、販売を行うエンジニアに、別の者は銃を握り白兵戦を楽しむソルジャーとして自分のやりたいことをやりたいように楽しんだのだ。そのゲームの名はメールドライバーズ。
俺自身も発売当初からこのゲームを楽しんでいる一人だ、新卒で内定の決まった会社を蹴り、家にあったマンガやゲームを全部売り飛ばし、バイトで溜めた貯金全てをつぎ込んでユニット一式をそろえたのはいい思い出だ。
だが、ゲーム内でお金を稼ぐにはそれなりの技術、腕が必要なのは現実と同じで結局上手くいかずに借金を返すために社畜に戻ったりアルバイト三昧の毎日を送る人々も多かった。
「ダイブアウト……接続ヲ切断シマシタ……覚醒マデ3、2、1……」
音声が流れ、ゆっくりと意識が覚醒する。俺はゆっくりとベッドから起き上がり、DDユニットを外していく。
「何時だ……?」
ドライブギア、Dギアを眺めると朝の10時になるところだった。
「40時間くらいやってたのか……」
俺はグッと体を伸ばす、最近は向こうに居ることが多くこっちの体の方が違和感を感じる気がする。幸運にも自分にはメールドライバーズの世界でやっていける才能があったらしくいまだに職業ゲーマーとしてやっていけているのだ。
「とりあえず生活費だけ換金してくるかなぁ」
独り言を呟きながら着ていたジャージを脱ぎ最近の若者だろうという服を選び身支度を整えたら必要最低限の物しかない寂しい我が家を後にする。
ゲームで稼いだお金を現金に変えるには専用の端末が設置されているメールドライバーズの運営会社ウィンディタスク本社かその支社に行く必要がある、これだけはめんどくさい職業ゲーマーの欠点だった。
家を出て地元の駅から電車に乗りしばらくするとビル多い場所に到着する。そこで電車を降り、しばらく歩くとウィンディタスクの支店が見えてくるのだ。
「やぁ、バラット君! 今日は換金かい?」
自動ドアを潜りビルに入ると受付で話していた茶髪をポニーテールに結んだ眼鏡の似合う白衣を羽織った女性が俺を見るなり声を掛けてきた。
「こんにちは、レイカさん」
彼女はリコと呼ばれているこのウィンディタスクの社員でよく換金に来ているせいかすっかり顔なじみになってしまった。
「毎回必要最低限しか引き出さないからこんなこまめにこなきゃいけなくなるんだよ~」
「でもそのおかげでレイカさんと顔なじみになれたじゃないですか」
ヤレヤレという手ぶりで話すレイカさんに冗談で返すとまぁね、とまんざらでもない様子でニヤニヤしていた。
「若作りババァは真面目に仕事してればいい……」
レイカさんと話していると後ろから声が聞こえた。
「だぁれが若作りババァだ! 私はまだ28じゃぁ!!」
声の方向に向けてレイカさんの怒号が轟いた。
「私達から見たら十分オバサンだよ」
俺の後ろから綺麗な水色の髪をしたちょっと眠そうなジト目の女の子がひょこっと顔を出す。
「ミコ、おはよ。そうは言っても俺らも今年で25だよ」
「まだ24、アラサーとは違うのだ」
彼女はミコッタ、ミコと呼んでいる俺のゲーム仲間だ。同じ支店を利用していた事、同い年だったことが切っ掛けで仲良くなり今では良き相棒だ。
「お二人様はずいぶんと仲のよいことでっ!!」
ギギギと怒りマークの見えそうな顔でミレイさんが噛みついてくる。
「ミコも換金?」
レイカさんをスルーしつつミコに話しかける。
「そう、あとバラットも居そうな気がしたから」
「よく俺が居そうなんてわかったね」
「女の感!」
ミコは親指を立てながらキリッとした顔をして見せた。
「お~お~どうせ私は研究バカのアラサー女ですよ~だ」
「レイカさん冗談ですって、ミコも煽りすぎ……」
少しミコはムッとした気がしたけどプリプリ怒っているレイカさんが面白くてそっちに気を取られてしまった。ゲームをしてお金を稼いで、リアルでも仲のいい友人と冗談を言い合う、まさに夢のような理想のゲーマー人生だろう。
「主任、緊急事態です!!」
別の研究員が大慌てでレイカさんを呼びに来たこの時までは。ホントに夢だったらよかったのに……
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