紅い月の下で魔女と踊る~厨二少年の黙示録~
秘宝 繋
第0章 運命の誓い
第1話 紅い月の下で魔女は誓う
小鳥のさえずりが聞こえる中、教室の中では数学の授業が行われていた。
「であるからにして、はあ」
教師が授業をしていると一人の居眠りをしている男子生徒を見つけ、その生徒に教科書の角の強烈な一撃を浴びせた。
「いってえぇぇぇ!」
周りからくすくすと笑う声が聞こえてくる。
(本気で叩くことねえだろうがよ)
彼の名前は
「黒神この問題解いてくれるか、ちゃんと授業聞いてたならわかるよな?」
(お前さっき思いっきり居眠り注意(物理)して来ただろうが。まあ、俺にかかれば余裕だ。なぜなら俺は)
そう彼は。
(
”厨二病”である。
(IQ150のオレにかかればこんなの雑作もない、どれどれ)
教室には十秒ほど沈黙が流れた。
「どうした黒神、早く解いてくれ」
「あーいや、えっと」
またしても周りからくすくすと笑い声が聞こえてくる。
(あのクソ教師、オレが解けないのを知っててわざとやりやがったな!)
キーンコーンカーンコーン、四時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
(お、ラッキー!)
「先生! 四時間目は終わりましたし、その問題は来週にしましょう!」
教師は、「はあ」とため息をつくと号令をとり四時間目を終了した。来叉は号令を終えるとすぐに昼食を取り出しつつき始めた。
(ラッキー、ラッキー、これが主人公力ってやつか、にしてもどこみても男、男、もう少し花はないものかね)
この国の女性人口はある事件により事件以前の1%にまで減ってしまっていた。
(主人公にはやっぱ可憐なヒロインがいないとなー)
来叉がそんなことを考えながら昼食を終えると教室の扉が開いた。それと同時に教室内がざわつき始める。
(おっと、花は花でも薔薇が来ちゃったか、目そらしとこ)
「すみません、黒神先輩いませんか?」
彼女の名前は
「ああ、黒神ならそこに」
(あいつら、いつもオレのこと無視する癖にこういう時だけ、こういう時は)
「先輩、もしかして寝てるんですか?」
「ガァァ、ガー」
(よし、バレてない! このま―――)
ドンッと強烈な打撃音が鳴り響く。
「いってえぇぇぇ! 数学の教師かお前は!」
「な、あんなおじさんと一緒にしないでください! って先輩起きてるじゃないですか!」
「あんな一撃食らえばだれでも起きるわ!」
「そ、それはいいとして」
「良くねえよ!」
「先輩、忘れたとは言わせませんよ」
「うっ、さ、さあ何のことかな」
「今日、図書委員会の当番の日ですよね」
「あー今日はちょっと大事な用事がだな」
「へーどんなですか?」
「オレの大事なフィアンセと食後のランデブーが」
「先輩彼女いないじゃないですか」
「いるわ! 彼女の四人や五人!」
「この学校。私含め女子三人しかいないんですけど」
「あ・・・ふっ貴様らの様な汚れた者たちには見えぬ清き精霊なのだよ」
「そうですか、汚れた私にはその用事の重要性がわからないので仕事行きますよ」
「あ、ちょま、首根っこ掴むな!」
来叉はそのまま図書室へと連れてかれた。
「どうせここで待ってたって来るの四、五人だろオレがいる意味あるか?」
「来るか来ないかではなく当番だからいるんです。というか本の貸し借り以外にも仕事ありますよね?」
「この学校生活において一度もやったことないから知らん」
「私が来るまでどうしてたんですか」
「いや、手伝おうかっていうと、いや大丈夫だよって全部やってくれてた」
「苦笑いで」
「勝手につけたすな!」
「まあ先輩、友達すらいませんもんね」
「うるせえな」
会話の後は沈黙が続き休み時間が終わった。
「あー、終わった終わった」
「お疲れ様です」
来叉はすぐに教室へと向かった。
(次の時間の準備よーし。寝るか)
来叉は眠気を誘うため、目を閉じいつもの”
パリンッパリンッと窓が割れる音がして、それに驚く生徒たち。ただそこに一人冷静に対処するオレ。
「なんだなんだ?」
「だ、誰だよお前ら!?」
そう授業中にテロリストがやってくるんだ。
「おいお前らあまり騒ぐなよ」
テロリストが生徒たちを脅す中一人だけテロリストに向かっていく生徒がいた。そうオレだ。
「おい動くな撃つぞ」
「やれるもんならな」
俺はここですかさず机を蹴り上げ銃弾を防ぎながら相手を後ろへ吹き飛ばす。
(いやなんか違うな、もうちょっとスタイリッシュにやらないと。よし窓が割れるところからやり直そう)
バリンッバリンっ
(お、いいねえリアルリアル)
「ゴー! ゴー!」
(そうそうここでテロリストが入ってきて)
バンッ
(テロリストが発砲して)
「うあぁぁぁl」
(一人撃たれて・・・え?)
「撃たれた?」
その瞬間、来叉は自分が目を開けていることに気づいた。
(もしかして現実?)
教室には大きな瞳が描いてある仮面と白いフード付きのコートを着た男がいた。
「”魔女”を出せ」
「こいつ何言って――」
次の瞬間、銃口は来叉の方へと向いていた。
(やべっ)
一人の生徒が叫んだ。
「みんな、逃げろー!」
それと同時に教室から生徒が流れ出す、そして無数の銃弾が教室内を舞った。
「うあ、誰か助け―――」
一人の生徒がつまずき倒れていた。
(オレのシナリオに人が死ぬのは想定してねぇんだよ!)
「クッソォォォォォ!」
来叉は自分でも気づかぬうちに机を仮面の男へ振りかざしていた。来叉の渾身の一撃を食らった男は床にうずくまった。
「早くいけ!」
「あ、ありがと」
「後はこいつを」
来叉は倒れた男から銃を奪うと銃口を向けた。
「お前、死ぬ覚悟はできてんだろ」
「すべてはアヴニール様のために」
「・・・っ!」
来叉は足だけを撃ち抜き身動きをとれなくした。
「今回はこれで勘弁してやるよ」
(思ったより銃の反動デカいな、それに自分のせいで人が傷つくのも・・・いやいや元はといえばあいつが悪いし)
来叉は考えるのをやめ、後ろを振り向くとそこはすでに地獄のありさまだった。教室は血まみれになり、休み時間のにぎやかな話し声は悲鳴へと変わっていた。
(さっきまで大声出してふざけてたじゃねえか、ホントに死んでんのかよ)
来叉は近くの生徒に触れた。脈はなくすでに体は冷え切っていた。
来叉は体を震わせながら、その怒りで血が出るほど拳を握り締めた。
「なんでオレらがこんな目に」
しかし奴らは愚痴を言う暇すら与えなかった。
「キャァァァー!」
三階から女子の悲鳴が聞こえてくる。
「あの声まさか!」
来叉が階段を駆け上がると廊下には大柄な男と玲奈の姿があった。
「お前が魔女か」
「いや、やだ、こないで」
男がじりじりと玲奈へと近づいていく。
(どうする、このまま突っ込んで助けられるか? いや、あんなゴリラに勝てるわけねえ。そうだ銃を使って、でももしそれで殺しちまったら、いや待てよ)
来叉に悪魔の考えが生まれた。
(オレが助ける必要があるのか? もしここで失敗すればオレも死ぬ可能性が高い、なら逃げた方が)
そんなことを考えてる間にも男と玲奈の距離は詰まっていく。
「やだ、やだ、誰か、だれか」
(よし逃げ―――)
「―――誰か助けて」
「!?」
来叉は今までの雑念を忘れたかのように敵へと立ち向かった。
(ここで逃げたら、あいつと一緒じゃねえか!)
「魔女は排除する」
男が玲奈に銃口を突きつける。
「偽りの魔女にはてっ―――」
「
(
男は殴られた頬を抑えながら来叉を睨みつけた。
「なんだお前!?」
「何だかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け」
「は、はあ?」
「月夜に迷いし
バンッ
「ちょまっ、決め台詞言ってる間に撃つやつがいるか!」
「ガキが、大人しく逃げてればよいものを」
「まあいい、
(決まった!)
「せん・・・ぱい」
「次は当てる」
男は銃のモードをフルオートへと切り替えた。
「死ね」
「おっと」
銃弾が宙を舞う中、来叉は教室に入り咄嗟に身を潜めた。
「どうした逃げるだけか?」
(どうしたもんか・・・お、良いのあんじゃん)
来叉は教室から出ると一直線で窓際へと走った。
「ゲームセットだ」
「さあ、それはどうかな」
男が銃口を向けた瞬間、来叉は照準の先に消火器を投げた。
「なっ!?」
男はすでにトリガーに手をかけており消火器に対し発砲した。すると消火器は一瞬で粉々に爆発し白い粉が全員の付近を覆った。
「ヴォホッヴォホッ、めんどいことしやがって」
男がせき込んでいる間に来叉は玲奈の方へ向かった。
(オレの眼ならこの中でも見える!)
「ゲホ、ゲホ」
「大丈夫か玲奈!?」
「あ、せんぱ―――」
「ん、どうした」
玲奈は顔を真っ蒼にしながら後ろを指さしていた。
「はぁはぁ、手こずらせやがって」
後ろには銃を構えた男がいた。
(あ、やべさすがにこれは―――)
「っ!?」
玲奈は来叉を胸元へと引き寄せた。
(!? これはおっぱ―――)
「ファイアブラスト!」
「「!?」」
次の瞬間、玲奈の手の先から火の玉が現れ男の頭を覆いつくした。
「熱い! これは魔法!? やはり貴様、魔女だったか!?」
「お前、ホントに、あーもう! どうでもいい逃げるぞ!」
「はい!」
「居たぞ逃がすな!」
廊下の両端の階段から男の仲間が上がってきた。
「やば」
二人はすぐに囲まれ逃げ場をなくしてしまった。
「もう諦めたらどうだ」
「悪いがオレは諦めが悪くてな」
来叉は玲奈と背中合わせになると話しかけた。
「なあ玲奈、お前バンジージャンプしたことあるか?」
「ないですけど」
「じゃあ初バンジー楽しめよ、紐なしだけど!}
「え? キャ!」
来叉は言い終えると玲奈をお姫様抱っこし窓の淵へと立った。
「オレの任務は終了した、後は警察との鬼ごっこを楽しむんだな」
「先輩、まさか」
来叉は深呼吸をした後、男たちへ言い放ち、そして―――
「本日の演目はこれにて閉幕! じゃあなクソ野郎ども!」
「まさかこいつ、撃てー!」
「おせーよ!」
―――飛び降りた。
「
「先輩! 死ぬ! 死ぬ!」
「目、開けてみろ」
「え?」
玲奈が目を開けるとその先は青色一色だった。
「プール!?」
「すべて計算道理だ!」
(たまたまだけど)
二人は大きな水しぶきを上げプールへ突っ込んだ。
「プハッ、ほら完璧だったろ?」
「少し見直しました。・・・あ」
学校の周りから警察のサイレンが聞こえてくる。
「やっとごとう、ちゃく、か」
「ちょっと先輩!? 先輩!?」
来叉は急にプールサイドに倒れこんでしまった。
「先輩、呼吸してないどうして、こうなったら、覚悟を決めろ! 私!」
―――そして二人は魔女の誓いを交わすのであった。
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