奴隷メイド少女にコロコロされる運命を迎える悪役〜二度目は細々と生きます……公爵家次男という枷が許しません
加糖のぶ
第一章 奴隷を買う=回避
第1話 悪役、に転生
◆
俺の人生は"後悔"の連続だった。
勝手に諦めて、勝手に挫折して、そして全ての物事から目を背けて色んな人に迷惑をかけてきた。そんな俺が何か一つ願えるなら――"人生をやり直したい"
そんな傲慢とも取れるありもしないことを日々考え死人のように生きていた。俺は気づいたら真っ白な空間の中で正座をしていた。
ここまでの記憶はないし思い出せない。普段の自分なら状況を鑑みれば情けなく狼狽えるかするが今の自分はやけに冷静だ。
体は動かない。声も出ない。しかし不快感は無かった。ただ一枚の用紙に自然と目がいく。
「……」
「
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君がこの手紙を読んでいるということは――以下略。ま、長い説明は不要じゃの。わしは神、君は死んだ、イマココ。
死因は君が自室で
んんん。して、本来であれば魂となり次の輪廻を決めるため霊界に向かい「天国」か「地獄」に導かれるはずじゃ。しかし君は"地球で命を落とした人"で丁度"1兆人目"じゃ。そんな映えある君に一つチャンスを授ける。そのチャンスの内容は君が一番わかっているであろうからわしからは深く説明はせん。
わしから贈る言葉はただ一つ。次の人生をよき人生に。
PS.本来なら君の前に姿を現し、わし自ら説明をする筈じゃったが
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・
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「(ウガァァァァァ!!!???)」
正俊(冷静)は用紙――手紙を最後まで読み終わる前に声が出ないとわかっていながら内心で絶叫し、直接会ったこともない神とやらからの手紙ごと目の前の茶舞台を茶舞台返しした。その時、眩く発光する世界。
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PS.のPS.流石に少し補足じゃの。
君が今から赴く世界は『空想の彼方〜君と紡ぐ物語〜』という君のお気に入りの小説の中じゃ。舞台はオーツ大陸の『クロード王国』。その地の貴族、アース公爵家の次男として生をなす。君の転生体の未来は……本来ならバッドエンドが確定している未来しか存在しないが……なに、君の努力でやり直して見せなさい。
現界に戻る手段は「茶舞台返し」じゃよ。
お調子者の神オーツより
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そんな重要な言葉が連なれていることを知らずに。
◇◇◇
『空想の彼方〜君と紡ぐ物語〜』
世界有数の大陸オーツ大陸の中でも栄えている『クロード王国』。
「運命」に導かれたある少年がいた。平凡でありながら特別な力を持つ少年は『色彩の魔女』と呼ばれる少女と出会う。
少年、少女は数々の旅路の中で世界の真実を知り、人々の「英雄」になるがために様々な困難を乗り越え、また仲間達と手を取り合う。そんな少年たちが紡ぐ始まりと終わりの王道ストーリー……の中に誠に遺憾ながら転生してしまった社会人零年目、社会不適合者の俺こと
幸いなことに神からの手紙は脳内フォルダに記憶されており、読んでいなかった内容を読めた。そして俺はアース公爵家の次男フィリップ・アースとして生を受けた。勿論主人公ではない、最悪なことにその悪役だ。そんな俺は今。
「ほら〜お姉ちゃんでちゅよ〜?」
おさげの茶髪がキュートの4歳年上お姉様。カナリア・アースによって抱っこをされている最中。
正直、至福であります。だって聞いてくれよ? 血の繋がった姉だとしてもリアル「幼女」に抱っこされているんだぜ?……まあ。
「あぅ〜」
産まれて約三ヶ月しか経っていない現赤ちゃんの俺からしたら性欲も何もないからなんとも思わんのだがね。それよかカナリア姉様が微笑ましい。
姉様は俺を抱きながら突然体をクンカクンカと匂いを嗅ぐ仕草をする。
「お母様ー! フィー君またうんち漏らしてるよ〜!」
「うー」
おっとスマソ。幼児だからかお尻の線が緩くてね。まだ制御が効かんのだよ。それよりも姉様よ公爵家令嬢がうんちはいかんようんちは――というかうんち以外になんて答えるんだ?
「あらあら〜フィー君はおうんちさんねぇ」
正俊改めフィリップがうんちについて考えていると浮遊感が襲う。
「まぅ〜」
気づいたら実母である茶髪のおっとり美女母ことメアリーに抱っこをされていた。
母上よ。おうんちさんて。おねしょみたいに言わんでください。「お」を付ければいいものではないのだよ。
そんなことを考えていても口には出せず、フィリップは実の姉と実の母の手により「おむつ交換」という羞恥プレイに晒された。その後は母上から
赤ん坊の生活など高が知れている。起きる。漏らす。食事。遊ぶ。寝る……程度のサイクリングを繰り返すだけだろう。しかしフィリップはただの赤ん坊ではない。転生者だ。
「あぷぷ〜」
ベビーベッドの中で眉間に皺を寄せて両手に力を込める。周りから見ればただ遊んでいるようにしか見えないだろう。しかし俺は遊んでなどいない。未来への"投資"を行なっている。現に今も両手の間には微小ながら薄い翡翠色の魔力の渦が発生している。
この世界に「魔力」と呼ばれる正にファンタジーと呼ばれる代物が存在する。
そしてその魔力……こちらの世界では「マナ」と呼ばれるものに愛され己の身体に色濃く反映しいずれ卓越に扱えることを知っていた。
「あ、あぅ〜」
だからと言って自分の才能に甘えるほど危機感のないフィリップではない。
幼少期から魔力の練習に励み、自身の内包魔力を鍛えることで魔力の精度、密度、量を鍛え抜こうとしている。
なのでいつもこの誰の目もない時間を使い今から15年後に起きる悲劇を回避するために日夜、勤しんでいた。
フィリップ・アース
『空想の彼方〜君と紡ぐ物語〜』。通称『空彼』の世界で代表的な「悪役」だ。
今から約15年後には現段階の中性的な可愛らしい顔立ちから想像がつかないほど悍ましく、憎ましい面になる。
デップリと肥えた太った体、脂ギッシュでニキビ塗れの不衛生な顔。不適切な生活から齢15歳で薄くなる髪……それらを全て兼ね合わせたブサメンを披露し、公爵家という名を使い悪虐の限りを尽くし、主人公であるマルスの前に序盤に立ちはだかる哀れな敵役。
15年後に通う学園で
その時フィリップの側使いのメイドとマルスがお互いに恋に落ち、気に食わないフィリップはお邪魔虫役として行動を起こす。
そしてフィリップが暴走してメイドに手を出そうとした時マルスが颯爽と現れる。
マルスとメイドは他の仲間の手助けのもと序盤のボスであるフィリップの撃破を見事成功。
悪虐が世間に知れわたったフィリップは晴れて死刑へ……。
そんなバッドエンドなど望んじゃいない。
多分神が俺に枷たチャンスとは「やり直し」。
俺は自分が好きだった『空彼』の世界で念願の思いでもあったやり直しの
それに正俊は知っていた。
フィリップ・アースという男が『空彼』の作中の中で誰よりも一番才能を持っていることを。間違えた運命を辿らなければ主人公をも超える超人になることを。
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