高めすぎた自尊心に

「あなたは今成功していますが、これが全部消え去って、すべて無駄だったのだと将来思うようなことは、あり得ると思いますか?」


「……ありえないことなんてないと思います。私だって不安になることはあります。でも、その不安に負けずに、毎日を一生懸命に生きることが大切だと日々自分を奮い立たせています」


「なるほど、ありがとうございます。次の質問です。自分の頭がいいと思ったことはありますか?」


「全然大したことはないんだってわかってるんですけど、でも何かがうまくいったり、褒められたりするたびに自分は天才かもしれないって思いあがってしまうことがあります。謙虚な気持ちが本当に大切だと思います」


「では、他の方が思いあがっているのを見ると、あなたはどう思いますか?」


「……他の人のことは、わからないです」


「あなた自身のことならわかっているんですか?」


「……案外わかっていないものかもしれませんね」


「あなたの言葉は空虚だと言う人がいると思いますが」


「今はじめて言われました」


「では、私が言いましょう。あなたの言葉は、これまでどこかの誰かが言ってきた言葉の焼き増しに聞こえます。薄っぺらでつまらない、ありきたりな言葉に聞こえるんですが」


「……そうかもしれません。親とか先生とか友達とか、そういう人たちから教えられてきたことを、私なりに理解してそれを言葉にしているつもりだったのですが、期待に応えられなかったのなら、申し訳ありません」


「いえ、ありがとうございます。あなたはとても素敵な方だと思います。少し意地悪したくなっただけなので、気になさらないでください。二度と会うこともないでしょうし」


「こちらこそありがとうございました」


乾杯!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る