LAXEファミリー小冒険譚

飛騨牛・牛・牛太郎

第1話 ナイトクラブ「LAXE」にて

 この町の絵は子供でも書ける。

 中央に無限にモンスターと宝物が湧き出るダンジョンがある。上をみれば天高く続く卒塔婆のような塔が立ち、地面の下を見ることができるのであれば地下深く地獄の手前まで続くのではないかと思われる長い地下へと道が続く。


 そしてその周りに蠅か蛆のようにたかる街がある


 ダンジョンからの稼ぎを狙いあつまる冒険者なるよくわからない連中、そいつらから金を巻き上げることを目的とした商人たち、そこで生まれた子供、社会から捨てられた人間。社会を捨てた人間。


 そういったよくわからない者たちが集まる街だ。


 その街の名前は誰が呼んだか「HELLFIRE」


 そんな都市計画も何もない無法な町の一角にある高級クラブ。それがLUXE。





「オーナー。今日も盛況ですよ」

 クラブ全体に響く大音量の音楽。

 今日は最近はやりの音楽バンドを連れてきた。

 中央にある舞台。その周りで立ち見する若い男女の集団。遠巻きで椅子に座り酒を飲む人間、立ち飲みができるカウンター。酒を運ぶ女と男たち。

「ありがたいね。在庫が空になるまで売り続けてくれ。必要なら隣の酒場で買ってこい」

 そのカウンターでバーテンから強い酒が入ったグラスを一杯もらう青年。

 不細工というわけではないがかっこいいというわけでもない。ぼんやりとした、つかみどころがない印象。

 しかし薄暗い店内だ。顔を近づけなければ相手の本性なんてつかめない。

 大音量、高い酒、女、薄暗い店内、怪しい光、雰囲気で酒を飲ませ、この明かりで隣の女や男やよくわからない連中を近づけさせる。


 一人で入ってきて二人で出てく客、三人で入って五人で帰る客、一人で入り一人で帰るしかない客。

 隣の人は何する人ぞ。そんなのはいい。欲望に忠実になれ。そして酒を飲め。


「オーナ。また遊びましょうよ」

「今晩暇?部屋いい?」

「どうしたらそこまでもてるのか教えてくださいよ。兄貴」

「僕も若いころもうあんたくらいもててたら後悔してないんだがなぁ。ほらお前の番だ。カードを引け」

 グラスを片手に店を回るオーナーと呼ばれる青年に声をかける客たち。


 それに愛想よく答えていくオーナー。

 老若男女、誰でも一度この店で顔を合わせるとなぜか忘れられない男。

 特徴があるわけでもないのに。不思議な話だ。


「君、しけた面をしてどうしたんだ」

 そんな中、一人の青年に声をかける。

「いや、その」

「そういう話し方はだめだ。ほらまず一杯のみな」

 そういって手に持っていたグラスを押し付ける。

「えっと」

「ほら、グイっと一気で。それからだ」

 いきなり現れた男に酒を押し付けられ困惑するが、腹を決めてグラスの酒を一気に飲み干す。

「おう」

 強い酒だ。むせてしまう。

「ふぅぅ」

「いい顔になったな。それで、しけた面をしてどうした。彼女が来なかったのか」


 空いてる席に青年を座らせるオーナー。


 服装は、典型的な冒険者といった具合。だが顔はいい。これなら女にもてる。

 新人だろうか。傷はついてるがまだ新しめ。

 この装備はギルドが新人に向けて入門パックとか言って売ってるやつだ。

 入門者くらいしか買わない性能も品質もあまりよくない割高装備。


「いや、そうじゃないんですけど」

「そうか。ナンパか」

「そうでもなくて、やけ酒というやつを」

「ここはやけ酒の店じゃぁない。相手を見繕えばいい。遊び好きな女なら紹介してやろう」

 とんでもないことを言う人だ。

 青年はそう思ったが、この会話を交わす間にも若い女性が彼に目配せしたり、もっとストレートな誘いをしたりする。

 不細工ではないが、かっこいいとも思えない。不思議な魅力なのか。

「なんだ。女より男がいいのか?俺は男に興味はないが、そういうのが好きなやつでも紹介できるぞ」

「ちがいますよ」

 じろじろ見てたのを勘違いされたのか、そういわれた。

 否定しておく。


「君はなかなか顔がいいじゃないか。この町にきて、この店にはいったんだ。さぁ飲んで騒げ。相手を見つけろ。じゃなきゃこの店の名が廃る」

「店選び間違えたかな」

 そこで女性の悲鳴。男の罵声 

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