平行世界2日目その1にゃ~
「「「こわれたにゃ……パパ~~~!!」」」
「「おじちゃ~~~ん!!」」
タブレットの画面が真っ黒になったら、子供たちが焦って大泣き。わしの元へ集まって来た。でも、さっちゃんの子供はおじちゃんって呼ばないでほしいな~。まだ17歳なんじゃよ?
「ああ。電池が切れただけにゃ。充電しにゃいといけないから、今日はもう寝てしまおうにゃ」
「「「「「ええぇぇ~」」」」」
「お風呂も面白いんにゃよ~? 一緒に入ろうにゃ~」
子供たちを説得してなんとかお風呂場に入ったが、スタイリッシュすぎて使い方がわからない。なんじゃこの五右衛門風呂みたいな風呂は?
なのでまたコンシェルジュを呼ぶハメになったが、子供たちの裸をガン見するな。わしもじゃ。付いてるから凝視しないでくれません?
わしの下半身のことを聞いて来るコンシェルジュから説明を受けたら、すぐに追い出して子供たちを洗う。
シャワーをぶちまけたりシャンプーで泡だらけになったりしたけど、湯船のジャグジーでマッサージしたら船を漕ぎ始めた。情報量が多すぎて疲れたのだろう。
なのでリータたちを呼んでベッドルームに運んでもらい、わしはその他と一緒にお風呂。というか説明しないといけないので残っているのだ。
人妻のさっちゃんや玉藻のナイスバディを見たり、女子高生ぐらいのベティのペッタンコな体を見てしまったが、わしは反応しない。だからリータたちは浮気を疑わないでください。
結局はわしはあまりゆっくりとお風呂に浸かれなかったが、全員のお風呂は終わったので、出て行く素振りを見せないコンシェルジュは追い出して、大人組をリビングに集める。
「はぁ~~~……」
わしの第一声は、大きなため息から。なのに皆はわしを無視してわいわい喋っている。
「はいにゃ~。ちょっと静かにしてにゃ~」
まったくお喋りが止まらないので、肉球をブニョンブニョンと打って注目を集めた。
「今日は好きにさせたけど、明日からは節度を持った行動をしてくださいにゃ~」
わしの言葉に皆は首を傾げ、リータが代表して質問する。
「節度を持った行動とは?」
「わし、出発前に言ったにゃろ? こっちの世界には面白い物がいっぱいあるとにゃ。にゃのに全員夢中になって、全然この世界を見てなかったにゃ~」
「「「「「あっ!!」」」」」
ようやくここで、皆はわしが怒っていると気付いてくれた。
「大人がそれで、どう子供に示しをつけるにゃ? 一緒になって騒いでいちゃダメにゃ~」
「「「「「はい……」」」」」
「じゃあ明日からは、タブレット禁止にゃ~」
「「「「「ええぇぇ~!!」」」」」
「さっき『はい』って言ったにゃ~~~」
わしの話は理解してはいるが、もうネット依存になりつつある皆は、規制緩和を言い出して夜が長くなるのであったとさ。
翌朝、今日はラフな服装に着替えてルームサービスとうちの料理を食べてお腹いっぱいになったら、またブニョンブニョンと肉球を鳴らして注目を集めた。でも、全然こっち向かないので、声で向かせた。
「え~。本日からタブレットの使用は、ホテルに帰ってからとなりましたにゃ~」
「「「「「えっ!!??」」」」」
子供たち、すんごい顔。もう、顔に驚愕って書いてある。
「わしたちの目的はなんにゃ? この世界のことを学んで、国を豊かにすることにゃろ? タブレットばかり見てたら勉強にならないにゃ~」
「「「「「うぅ……」」」」」
「泣かないでにゃ~。お願いにゃ~……しょうがないにゃ~」
「シラタマさん! 黙ってて!!」
「私たちで説得するニャー!!」
子供に甘いわしが早くも前言を撤回しようとしたら、リータとメイバイに押し退けられた。わしには任せてられなかったみたいだ。
さっちゃんもイサベレも各々の子供に言い聞かせてくれたので、なんとか子供たちもわかってくれたと思う。
でも、わしのことを睨んでいるのですが、なんて説得したの? わしだけを悪者にしないでくださ~い!
子供たちが我慢することになったので、コリスとオニヒメも我慢するしかない。お姉ちゃんじゃもん……お菓子あげる。
このままでは皆から恨まれてしまうので、甘い物を振る舞い、そろそろ頃合いの時間になったらホテルのロビーへ。
ここで待ち合わせしていた外務省の七三分けメガネに金塊は売れたのかと聞いたら、現在換金中のこと。昨日の新聞に載っていた金の価格を
いちおう七三メガネに概算を聞いてみたら倍以上になっていたので、目玉が飛び出した。どうやら異世界の金塊だからプレミアム価格が付いてしまったようだ。
まぁ多いに越したことがないので有り難く頂戴するけど、お金を貸してください。百万円もいいんですか? ありがとう……トイチなの!?
七三メガネの冗談には笑って返し、契約書だけは穴が開くほど確認したら、返還の必要はない模様。どこから支出されているのか聞いたら、秘密らしい……
そんな怖いお金は受け取れないので、「上司には絶対に返すと言って来い!」と怒鳴り散らして、ホテルを出るわしであった。
「出て来たぞ!」
「「「「「キャーーー!!」」」」」
「「「「「うお~~~!!」」」」」
そこには民衆の群れ。わしたちがゾロゾロと現れたら、一斉にスマホを向けて写真を撮っている。
「今日の担当の人はどこかにゃ?」
「こちらです!」
このテレビクルーは、民放キー局の者。密着取材と引き換えに、わしたちを接待してくれる。わしたちを民衆から引き離すことも仕事なのだが、そっちは危険があるから警察がやるみたいだ。
ちなみに一局だけに独占させると血が流れると思うので、日本滞在の間、各局交代の報道協定を結んでいるはず。そのようにするように前日に渡した資料に書いてあるので、ケンカしないでちゃんとクジ引きで決まったはずだ。
「にゃんか怪我してにゃい? 大丈夫にゃ??」
「足と肋骨が何本かいってると思いますけど大丈夫です!」
「病院行けにゃ~」
プロデューサーはボロボロだったので不思議に思ったら、局内でも争奪戦が起こったのかも? まぁプロデューサーは担架で運ばれて行ったので、大事ないだろう。
とりあえず現場監督に挨拶したら名刺を渡されたが、わしは持ち合わせていない。なので服にサインをせがまれたので背中に書いたけど、カタカナで「シラタマ」と縦書きでよかったんじゃろうか? 手形も入れておくね?
なんか「家宝にします!」って言ってる監督に続き、大型バスに全員乗り込んだら、怒号の中をノロノロと出発。警察が民衆を避けてようやくスピードが出て来たが、後ろからめっちゃ追いかけて来てるっぽい。
そんな騒ぎを無視していると、皆はタブレットがないので町並みを見て感嘆の声を出している。その質問に答えるのはテレビクルー。ビル群や高速道路なんかの質問が多そうだ。
わしはと言うと、女性アナウンサーの質問攻めで身動きが取れない。
5人も必要なの? あ、ケンカになりそうだったから全員で来たのですか。そうですか……全員で喋られても答えられませんよ。
あまり答え過ぎると後日行われる質問大会に支障が出るので、できるだけわしから質問して、あとは撫でさせる。
たぶん、撫でるのが目的で押し掛けて来たのだろう。静かになったし……背中にジッパーは付いてないから服に手を入れないでくださ~い。
なんだか密着取材がただのモフモフ取材となってしまっているが、目的地に着いたらバスから降りた。
「なんですかこの人の数は!?」
「お祭りニャー!!」
「にゃはは。ただ移動している人たちにゃ~」
ここは渋谷のスクランブル交差点。リータとメイバイだけじゃなく、全員驚いているので、質問は全てテレビクルーに丸投げだ。
「てか、ここのどこに服屋があるにゃ?」
「あちらです!」
アナウンサーが「バーンッ!」と紹介したビルは、ファッションビル。渋谷と言えばのあの建物。あまり気乗りしないが、このままでは民衆に囲まれて動けなくなるのでダッシュで入ったものの、わしはやっぱり納得がいかない。
「わし、男にゃんだけど……」
「大丈夫ですよ。似合う似合う」
「似合うとかじゃにゃくて~。男の子にもギャル服着せるにゃ~」
そう。このファッションビルは、ギャルの聖地。一時期はサスティナブルが売りの施設になったらしいが、客が全然入らなかったのでゴリッゴリの専門店になったらしい。でも、サスティナブルってなんじゃろ?
売っている服も、ギャルが好むような服が多いどころかそれしかない。女性陣はいいとして、男には縁遠い場所なのだ。
「わっ! シラタマさん。似合ってますよ」
「かわいいニャー!」
「よくこんにゃ派手な子供服にゃんかあったにゃ!?」
でも、わしは猫。何を着ても猫が服を着てるだけなのでオモチャにされてしまう。
「さっちゃん! メイバイ! 息子にそれは着せるにゃ~!!」
あと幼い男の子もオモチャにされがちなので、女装させられていたのであったとさ。
「はぁ~~~……」
ファッションビルからなんとか脱出したら、女性陣の指はカラフルでバッチリメイク。ギャルに変身していたのでため息が出てしまう。
「シラタマさんもギャルだしぃ」
「ゴイゴイスーニャー」
「メイバイのそれはギャル語にゃの?」
全員姿だけでなく、カリスマ店員の言葉がうつっているが、バスに乗り込んだら違う場所へさっさと移動。
その間に、わしはギャル服を脱いでつけまつげやエクステも引きちぎって、元の着流しに戻ろうとしたけど、アナウンサーに着流しを奪い取られた。
そのままのわしを抱きたいみたいだ。でも、これでも全裸だからカメラは回さないでください。放送事故になりますよ?
続きましての目的地に到着したら、やはり子供たちがうるさい。
「「「「「タブレットにゃ~!!」」」」」
「走るにゃ~~~!!」
ここは大型家電ショップ。1階のスマホ売り場でタブレットを見付けた子供たちは走り出してしまったので、全員ママロック。取っ捕まえてもらった。
それからこのお店の店長をやっているメガネのおっちゃんから名刺を受け取ったら商談に入る。
「ちょっと無理にゃお願いになるんにゃけど……」
「喜んで!」
「まだにゃにも言ってないんにゃけど……」
「お任せあれ!」
「……まぁいいにゃ。この店にある全ての商品を、2個ずつ包んでくれにゃ。その時、簡単でいいから用途も書いておいてくれにゃ」
「了解!!」
店長はそれだけ言うと、走って行くのであった……
「はあ~~~!?」
いや、途中ですっころんで急停止。からの大声で怒鳴りながら戻って来たのであったとさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます