第14話

「おいしいです。平日にお菓子作りなんて、すごいですね」


私なんか休日に時間があってもしないのに。


「圭吾さんが帰ってくるのが遅いと、暇しちゃうから。二人のお口に合ったみたいでよかった」


うふふと笑みをこぼしながら、大島先輩はキッチンへと戻っていった。


「ともみってほんと、主婦向きだよね。いろんな気配りができるっていうか」


三枝先輩のその意見には、激しく同感だ。私だったら急に誰かを招いておもてなしするなんて、とてもじゃないけれどできない。


「そう?ありがとう。あ、テレビとか勝手につけていいからね」

「はい、はーい」


緊張するって言っていた三枝先輩はもう居なかった。宮本家の空気に慣れてきたのか、ローテーブルの上に置いてあったテレビのリモコンにおもむろに手を伸ばし、適当に番組表を見ている。三枝先輩のすごさは、この順応力の高さだ。


「三枝先輩もお料理、できるようにならなきゃいけないですね」


大島先輩とは真逆で、家事が苦手な三枝先輩。結婚するんだから、家事はしなきゃいけなくなる。


「そうなのよ。そこなのよ、問題は」

「でも、簡単な料理は振る舞ってるって言ってたじゃない」


対面式のキッチンだから、大島先輩も私達の会話に参加する。


「そうなの。でも、レパートリーがどうしても限られるのよ」

「まあ、料理は毎日のことですしね」

「そうなの。今は一週間に一回彼の家に泊まりに行って、その時に作るって感じなんだけど。だから、なんとかまあって感じなんだけど」

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