Birthday Blues【カクヨム版】
茂由 茂子
第1章 合コンで
第1話
なかなか終わらない仕事を全速力で終わらせて、駅の入り口へと息を切らせる。梅雨の合間の湿った空気が、私の肌にまとわりついて、じんわりと汗ばむ。ようやく待ち合わせの駅前のコンビニへとたどり着くと、不機嫌そうに煙草を吸う彼の姿があった。
「ごめん、
「……十分遅刻」
「ごめんってば」
嫌味を言われても、明るい笑顔で謝罪する。だって、この男を逃すわけにはいかない。どこをどう見渡しても、こんなにいい男はなかなかいないでしょ。私は、ハンドバッグからタオルハンカチを取り出し、顔をまとう汗をぬぐう。
「飯。どこに行く?」
携帯灰皿を、白いサマージャケットのポケットから取り出して、煙草を押し付けて火を消す仕草が、なんとも言えずカッコイイ。
「要とならどこでもいいよ」
「なんだそれ。じゃあ、いつものところに行くか」
「うん」
「ん」
要は私に向かって左脇を少しだけ浮かせた。私がいつもそこに掴まって歩くからだ。そんななんてことないことに胸をときめかせて、「要の左側は私専用だな」なんてお惚気なことを考えながらそこに掴まる。
要と付き合い始めて五ヶ月。多分、このまま何もなければ、私はこの人と結婚する。プロポーズをされたわけじゃないけど、私ももうすぐで二十五歳で、要は二十九歳。お互いちょうど良い年齢のタイミングで出会っているから、私はそのつもりで付き合っている。きっと、彼も同じ気持ちで居てくれていると思う。
「なに食べる?」
いつもの全室個室の居酒屋に着くと、要がメニューを広げて見せてくれた。
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