最終章 これから
第50話
喫茶店を後にする2人。由貴は目を真っ赤にしている。美帆子から喫茶店で残ったサンドイッチを渡されそれを持っている。
「美守くんは能力消えるけど僕らはいつまで……」
「知らない、お前が天狗様と変な契約したから死ぬまでだろ」
「そうか」
「そうだろ」
「……でもさ、子供も能力引き継いでしまうのかな。美帆子さんみたいに」
「しらん……それに俺は子供を作る気はない」
「女の人抱いてる後ろで霊とかみえない訓練したほうがいいんじゃないのか」
「まー萎えるからな。でもそんなことわざわざしなくてもいい」
コウは由貴とは違う方向を見た。
「でも美守くんという強い味方できてこれからもぼくたちは安泰だなー。子供作ってその子も受け継いでくれたら……でもあまり巻き込みたくない」
「変な矛盾だな。お前の子供だったら絶対うじうじしてこの能力に悩むだろうな……まぁ誰かいればうまくいくだろうが」
「……僕にはコウがいたから。ありがとう」
「ん、まぁ、ああ……」
コウは照れ臭そうだ。
「じゃあ人を好きになることはこれからあるのか?」
「……もういる。その人となら一生一緒にいたい」
「僕もそんな人いたらなー。渚さんはやっぱりコウに首ったけだし……他に探して、その人と一緒に……ん?」
由貴は自分の右手に何か温かいものを感じた。コウの手だ。
「コウ?」
「……握ってるだけだって。昔も握ってただろ」
「そうだけどさ……」
コウの顔は真っ赤になっている。さらに強く握る。
「別に今は誰にも見られてないし、いいぞ」
「うん……」
「お前はそう女の子好きじゃなかったもんな」
由貴も握り返す。
「由貴、気づいてたんか」
「……今気づいた」
「どんくさ」
二人は立ち止まる。
「一緒にいるしかないだろ。2人一緒で最高で最強になる。1人じゃダメだ。それに僕が巻き込んでしまったし、この人生」
「……俺もお前が助けてくれたから今ここにいる」
「僕もあの時助けてくれたから……」
「キリがない」
「なぁ」
二人は見つめ合う。が……。コウは振り返って何かに睨みつける。
「てかいるよね、俺ら以外にも」
コウがサングラスをグイッとあげた。
「さっきからずっとついてきてたな」
「こんな雑魚退治してるのは無駄や」
「無視してたんか」
「けど流石に無視できない。由貴、ビデオ用意しろ」
由貴は咄嗟にカバンからビデオを出し、コウはスーツをシャキッとさせた。
「人のプライベートを覗き見る幽霊めっ!!! いいかげんにしろっ!!!」
まだまだ彼らはこの能力と付き合わなくてはいけない、さて、いつまで?
その様子を山の上から天狗様が望遠鏡を覗き込んで高笑いしている。
横には呆れた顔した倉田。
「……天狗様、手を抜いてばかりはダメですよ」
「はいはい、わかっとる、わかっとる。これからがおもしろくなるんじゃ」
「二人を引き合わせたのは天狗様でしょ」
あのとき由貴が飛び降りようとしたのを偶然天狗様が察知したのだ。そこに少し時間を巻き戻してコウを心霊退治しろと派遣した。そして偶然かのようにコウが由貴を助けたというシナリオである。
「はて、そうだったかのぉー? 偶然じゃ」
とぼける天狗様。
「まぁあの二人は一緒じゃないと発揮しませんから、手のかかる二人ですよ」
「でも二人でいると最強で最高だ! これからもこの街を、日本を守ってくれよなー!」
「天狗様! 本当はそれはあなたの仕事!」
「ハハハハハハハハハハ!」
その日はずっと天狗様の笑い声が空を駆け巡り良い快晴であった。
終
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