第23話

「……コウが報告してくれた通りインチキな霊媒師やら霊能力者が全国に蔓延っておる。しかもなんか今動画とかでど素人が心霊スポットを撮影して投稿するとか茶化す輩が増えたからそれに便乗して幽霊たちも悪さをしているし……もうヒッチャカメッチャカだ」


 と、天狗様が坊主の1人にタブレットを渡してコウと由貴に見せた。


「だが2人もやってるけども個人で心霊動画を簡単にアップできる時代になった」

「天狗様は僕らのも見てくれてるんですか?」

 コウの目はパァッと明るくなった。

「もちろん、見ておる。ここ最近なんか見やすくなったのは……由貴がやったのか」

「はい!」

由貴はピシッと姿勢を正した。

「こりゃー才能の塊じゃ! 前までは淡々としてて雑だったわ」

 そう天狗様に言われ由貴はハッとした。自分が手がけたものでここまで誉められることはなかった。今まで結婚式や友人に頼まれたムービーを作っても褒められるよりも作ってくれた、それだけである。しかも見合わない値段で。だからすごく嬉しくなった気持ちでいっぱいのようだ。

 しかし由貴ばかり褒められてコウはブツブツと不満顔のようだが。


「ふむふむ、やっぱりな。じゃーこんどわしのチャンネル開設したいからお願いし……」


 倉田が睨んでいる。


「やっぱやめとく、そのへんはお前たちに託す。でな、動画で取り上げられるようになったと調子に乗った目立ちがり屋の霊たちがまた大暴れして物騒なことをしてるんだよな」

「わざと悪さをしてそれを動画チャンネルの人に撮影させて目立ちたい、そのために悪さをされたものや人はたまったもんじゃないな」

「あと事故物件ブームで、死亡事件事故が起こった場所はすぐ特定されて、なおかつその後その部屋が安くなる、そういう曰く付きの物件と知って住む若者も増えたとか……時が経てども心霊コンテンツは興味示されるもののされっぱなしでアホな霊たちが蔓延る……ああ、いくら除霊しても追いつかん!!!」


 天狗様が大暴れすると部屋の中が揺れる。それを坊主2人が止めないく。倉田は冷静に部屋の中で倒れたものを直すだけである。


「誰しもが天狗様が退治すればいいと思われがちだがその容姿で下界に降りても反対に不審者と思われ、なおかつ力を発揮したときはとても恐ろしい力で……なので自分の手下たちに頼んで除霊させているようだが……。だからその手下として当時子供であったお前ら2人に能力を与えた」

 と倉田がそういうと2人はそういうことか……と呟くが

「命を助けてやったからには……」

「はいはい……手下として働かせてもらいますよ!」

 コウがそう言い返すが由貴は申し訳ないとまた凹んだ。


「そうだそうだ、美帆子ちゃんに由貴を会わせたか?」

「まだです。あ、由貴。美帆子……さんは例の人妻の社長だ」

 由貴はホォ、と頷く。


「そかそか、じゃあここで油売ってる場合じゃないぞ。彼女に気に入ってもらえたらコウのように仕事をもらって生活できるからな、ハハッ。まぁあそことは提携して長い。また仕事を発注するからよろしゅう」


 だがその言葉にコウはいい顔をしてないのを由貴は見てしまい、不安になるのであった。

 2人は神社から出て街に戻る。天狗様のいる場所と街は本当に同じ現代なのか疑問になる程雰囲気が全く違う。振り返る由貴。


「子供の頃はもっと大きいと思ってたけどそうでも無いんだな」

「なにいってんだ、あの時は子供だったしな、俺よりも大きいお前が何言うとる」

「……だよな、いこう」


 由貴はコウについていく。寺から20分ほど歩いた、由貴にとっては知らない場所。住んでいた町の横の市でたまに遊びにいっていたが駅周辺だけであり、ここは駅から離れ、川の向こうの商店街であった。


 古い居酒屋や昔ながらのお店が並ぶ。


「こんなところあったんだな」

「子供の頃はここまで行かなかっただろ。この先の奥のボーリング場はよく行ったけどもここはこどもの俺たちは行かなかったよな」


 由貴はうろうろしていたが、急に足を止めた。


「どーした?」


 由貴が足を止めたのはアンティークな店ではあったが張り紙がしてあった。


『諸事情により閉店しました』


 という文字と感謝の言葉、そしてどこかへの連絡先の電話番号も書かれている。


「ここの店主、こないだ亡くなったんだよ」

「……亡くなった?」

「心筋梗塞だったらしくってな。所長の夫の弟さんでな……まだ50歳、若いよなぁ」


 由貴は慌ててカバンから何かを探している。財布を取り出して何かを抜き取った。名刺である。


「ここだ……亡くなったんか」

「どうした、てかなんで由貴はここの名刺を持っとるんだ」

「もらったんだよ、東京にいるときに」

「いつ?」

「んー、4、5年前かな……」

「あんな広い東京の中で同郷の人間と会うなんて。キミヤス一家もだけど」

「コウに助けてもらったくらいすごい確率だな」

「……そうだな。いくぞ」


 だが由貴は動かない。コウは手を引っ張る。


「お前は引きが強い。もしかしたらまだその人おるかもしれない」

 コウはゴクリと唾を飲み込んだ。

「いるな……」


 由貴が指を刺す先には店内の明かりが付き、そこにはスーツを仕立てているこの店の店主がいた。そして2人に気づいて微笑む。


「……やっぱお前は……引き寄せる力、強いな」

 由貴はそれほどでも、と苦笑いするがコウは真剣な顔をしている。

「ドア、鍵かかってない」


 閉まっているはずのドアが開いた。由貴とコウは見つめ合う。


「行くしかないか」

「ごめん」

「なんでお前謝ってる」

「……なんでやろな」


 さっと2人の目の前に男は立っていた。


「いらっしゃいませ、どうぞ……こちらに」

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