第伍話 松火馬

 未来台の東方は松火馬まつひまと呼ばれている。

 

 その由来について、良さんが標辺守要から聞いた話によると、その昔、その辺りを皆兵衛かいべえという百姓が夜に松明を焚きながら馬を連れ歩いていると、突風が吹きその拍子に松明の火が馬の立髪へ燃え移り、馬が火だるまになったからであるという。幽原の民の間では、皆兵衛が馬が火だるまになる少し前に、親子のイタチを仕留め、そのうち子供を鍋にして食うたからだと言われている。


 皆兵衛の件より、火を恐れるようになった幽原の馬飼いの家は、その災いを祓うため、名に『水』を入れる。良さんの友人である田本涼里たもとすずりもその1人である。

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