唇が触れそうになった
あと少しで……キスが!
唇が触れそうになった――その時だった。
「ちょっとまったァ!!!」
誰かが叫び、俺と夢香を引き離した。……だ、誰だ!? 良い所だったのに!
振り向くと、そこには……小鳥遊がいた。
「お、お前……」
「させるかってーの!」
「あ、ストーカー」
「誰がストーカーだ!! 僕は小鳥遊!
「その小鳥遊なんとかさんが何の用だい」
「なんとかとか言うな! ……今、キスしようとしていただろ。そうはさせない。僕だって平田さんが好きなんだ!」
なるほど、夢香を狙っているわけだな。けどな、これ以上は好き勝手させない。
「なら、夢香に聞いてみようか」
「なんだと……」
「夢香、俺とコイツどっちが良い?」
俺はストレートに夢香に聞いた。
元から顔を真っ赤にしていたが、更に赤くして両手で顔を覆っていた。……恥ずかしがってしまっていた。
「…………うぅ、うぅ」
「ハッキリ言ってやれ。俺が好きだって」
「……はぅ! ちょ、もう無理ぃぃ……!!!」
顔から煙を上げる夢香は、走って去ってしまった。
って、逃げた!?
「これは俺の勝ちだな、うん」
「なに勝ち誇っているんだよ! どう見ても今のはドローだ」
果たしてそうなのかな。
自分で言うのもなんだが、俺の圧勝だと思ったけど。
さて、この男と二人きりなんて不気味だ。さっさと退散しますか。
「じゃあな、小鳥遊なんとか」
「いちいち、なんとかと付けるな。同じ三年なんだ、呼び捨てで構わない」
「ああ、分かったよ。小鳥遊なんとか」
「おま!!」
背後でギャーギャー騒ぐ小鳥遊だが、俺は気に留めず屋上を去った。
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