箱庭

間に合わないこと

足りないこと

届かないこと

そんなことばかりを

思い知ってしまい

うなだれるしかできなくて


小さな小さな箱庭のなかから

外の世界を思っては

虚しいため息ばかりを

ただ積み重ねながら

残酷なほどに

晴れ渡った空を見ていた


ぽつり


雨の代わりの涙がひと粒

足元に落ちた時

其処に芽生えた緑を見つけて


ハッと

胸をつかれた



ああ

この場所にも

こうして生命は芽吹き

育とうとしているのだ

そんな当たり前のことを

いつの間にか忘れていた


見上げてばかりで見えてなかった

自分の足元

気づかぬまま無造作に踏んでいた

うつむかねば

気がつくことのなかった傲慢ごうまん


見上げるばかりでなく

うつむくばかりでもなく

生きていけたらと

そう、おもう


小さな小さな箱庭のなかで生きる

小さな小さな生命いのちのひとつだけど

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る