ごめん、異世界には行けない

異世界というのは

とても魅力的な言葉で

現在が閉塞していればいるほど

夢見るものが其処にあるなら尚更


もしも

本当に異世界に行きたいですか

と、聞かれたら

すごくすごく迷うと思う


人並みに欲もあるから

モテたり、美貌だったり、時を遡れたり、永遠に揺るぎない愛情やら特別な才能やら力、魔法がつかえたりして?

持ってないものが、つらつらと浮かぶ

いやはや想像だけでも

自分の俗物ぶりよ


それでも上手く言えないんだけど

たぶん

「ごめん、異世界には行けない」

って答えそうな気がする


すごく不格好で

上手くいかないことの方が多くても

この世界にしかいない

この世界でしか出逢えなかった

大切な人たちがいるから、さ


此処を放り出したままで

やっぱり、どれだけ素敵な所でも

異世界には行けない


いやいや、その前にそんなお誘いもないんだけどねぇ


「ごめん、異世界には行けない」

声に出して、つぶやいてみる


此処で最後まで生きるから


「ごめん、異世界には行けない」


ちいさく微笑んで。

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