第三章 明かされる真実
■コンビニ _会計11/12/08:10■
「貴方…もしかしてヴァーチュース?」
ヤタの問いかけがトクさんの気配を静かで威圧的な雰囲気へと変える。
「何故それが分かった…」
気配に圧倒され身動きする事がためらわれたが、話についていけない俺はすかさず検索をかける。
「okアレクサンドリア、ヴァーチュースを検索、音量マックス」
『力天使、ヴァーチュース。神学に基づく天使のヒエラルキーにおいて、第五位に数えられる天使の総称。実現象としての奇跡を司り、それをもって英雄に勇気を授けるとされる」
「あちゃ〜、やっぱりバレてる」
険悪なムードが漂っていたところにゴンさんがすかさず割り込んできた。
「ヨシタカ、とりあえずちょっとシフト交代で、俺は二人に事情を聞いてくるから」
「店長がそう言うなら任せますけど、一人で大丈夫ですか?」
「俺も驚いたけど、敵勢力ならすぐに戦闘になって るでしょ」
「まぁ、そうっすね。それじゃとりあえずレジ入ります」
「驚かして悪かったな」と何事もなくいつもの雰囲気に戻ったトクさんから声をかけられ、やっと身体が動く気がしてきた。
「色々と思うところはあるけど、そんな事は置いといて。いやしかし、メチャメチャ似合うやんこのコーディネート!支払いはどうするんこれ?」
「あ、僕か払います」
「雨森お前、こんな良い物をプレゼントするとは…ホンマ見直したでッ!俺は感動した!」
『バンバン』と背中を叩かれながら興奮気味にゴンさんは語る。ここにも一人オタクがいたようだ。
「これ」
ヤタはそんなゴンさんの挙動に動じることなく値札のバーコードを渡す。
「雨森ちゃん、急なことやから今手持ち少ないやろ?この代金は給料から天引きにしとこか?」
「助かります、それでお願いします」
「よっしゃ、ほんなら一応レシート出すからちょっと待っててや」
ゴンさんが会計をしにレジに向かうのでついていこうとすると、コートの右袖に抵抗を感じて視線を移した。
「ナイナイ、ありがとう」
ヤタが袖を引っ張って上目使いで伝えてきた。
クッ…職業魔法使いじゃなくて上目使いだろ…。などと馬鹿な事を考えてしまう。
初めて会った時のゾンビや吸血鬼、モノノ怪の類いというイメージは全くわかない今の姿に感動を覚えつつも、頭の片すみで男の可能性があることを忘れずにおく。もし同性だったらショックが計り知れない。
「良いって良いって」
照れ隠しに俺まで手をヒラヒラさせてしまった。
「雨森ちゃん、これレシート。確認頼むわ」
「わかりました、えぇと」
―――――――――――――――――
1.無名のホワイトブリム 10,000円
防御補正0
2.無名のフリルエプロン 10,000円
防御補正0
3.無名のレギンス(黒) 7,000円
防御補正0
4.無名のローファー(黒) 10,000円
物理防御+5
5.大名のポンチョコート 100,000円
物理防御+10 氷属性ダメージ3%減
合計 137,000円
―――――――――――――――――
「いやぁ、『大名良品』を買ってもらえるなんて感激やわ、仕入れてて良かった〜」
「そ、そんなブランドありましたっけ?」
「最近できたやん?装備にこだわりたい人に向けた逸品を提供してくれるメーカー」
記憶に無い商品はこのあたりか…。
「まとめると今月のバイト代くらいじゃないのこれ?うまくやるねぇ」
「い、いやぁ」
「ナイナイ、本当にありがとう」
「ふ、二人に喜んでもらえて良かったよ」
「それじゃ、休憩室で話そうか」
「は、はい…」
大打撃のポンチョコートはヤタが選んだ物では無く、俺が手渡した物だ。二人の心からの笑顔を見ると、今更交換は無理だと悟り、俺はひきつった笑みで応えた。
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