■アパート前_路上/11/12/05:55■
「急ぎ応えよ、祖の力、盾となりて我を守らん」
ヤタはバッタに向けて何か呟きながら使用済の割り箸を振り下ろした。
その刹那、バッタの前脚が宙に止まる。
「GiGiGiGi!!!」
バッタは叫び声を上げ、体液を散らしている。
「え!?」
「早く走り抜けて、長くはもたない」
ヤタは持っていた割り箸をそのまま放る、地面に落ちるまでに割り箸は煙を上げ炭化していく。
「り、了解!」
今は理解できない事を嘆く暇もない、とにかく急がないと。
宙で止まる前脚を横目に通り過ぎると、地面から突き出た何かが前脚を貫いているのが分かった。俺ではかわす事もできないほど素早い前脚を遥かに凌ぐ速度でこれが突き刺さったのか…。
一体何が刺さっているんだ?
バッタ本体を通り過ぎる時にも白い何かがバッタの後ろ脚を貫いている。鋭利な棒の様だが。
俺は走る速度を上げながら、この現象を起こした本人に問う。
「ヤタはその、魔法少女…ですか?」
「何で敬語…普通に話して」
「ま、魔法少女だったりする?」
「魔法少女ではないけど、職業は魔法使いだよ」
どうしたものか。
この大切な時に俺は非常に困惑している。
魔法?
いや…
少女では無いという点だ…。
「魔法少年?」
「だから、魔法使いだよ」
軽く頭を叩かれる。
「最近は同性愛も良く聞くからね、変な気を起こされない様に性別については黙秘しているんだよ」
「な、なるほど…」
「種族や性別を越えてでも愛を語りたいなら、その時は答えるよ」
「時代ですね」
俺は変わりゆく価値観を感じながらヤタの先導のもとひたすら闇の中を駆けた。
ん、種族?
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