■アパート_自室/11/12/05:35■
「結界?どういう事ですか?」
「説明するから私の言う事を聞いてほしい」
ヤタは立ち上がり俺を真剣に見つめてくる。
普通なら信用できない非常識な発言だが、この数時間で異常事態を経験してきた俺にはヤタの言葉が嘘や冗談では無いと信じられる程に意識が変わってきていた。
「分かりました」
「まず私に何かあたたかい服を貸して、その後はナイナイもすぐに上着を着て外に出る」
「え…」
「早く」
「は、はいっ!」
ヤタの静かな迫力に圧倒されて言われるがままに用意する。
ヤタに俺が着ているパーカーと色違いのパーカーをまず手渡した。裏ボアつきのパーカーはかなり温かく、ヤタの背丈なら膝上あたりまで寒さから守れるだろう。
次に黒と赤の2色マフラーを渡す。これは試着せずに買って後悔したものだ。俺には少し派手だった。
「下半身には何か無いかな?」
「サイズがあわないと脱げるんじゃないですか?」
「何でも良いから、ほんとスースーして寒いんだ」
「うーん」
『ポキン』
俺とヤタはうどん鉢を揃って確認する。
先程とは反対方向のポッキーが折れていた。
「まずい、囲まれてるかも知れない…出よう」
俺はヤタの言葉を聞くとすぐにコタツに置いてあった銃を取り、ダウンコートを着て玄関に向かう。
「靴はどうします!?サイズあうのないですけど!!」
「それじゃあ、そこにしゃがんで」
「はい!」
言われた通りしゃがむ。背負えという事か?
『グェ…』
俺の首が締められたがすぐに開放される。
「ごめんなさい…その…どこを持てば良いのか分からなくて」
「え、あ、背負うんですよね?!」
「そ、そう」
俺は改めて確認すると、玄関ドアをあけてからヤタに背を向けてこたえる。
「身体をまず背中に密着させて、両足を俺のわきから出すイメージです、首はバランスを取る感じで締めすぎないでくれたら助かりす」
「わかった」
今度は落ち着いてヤタを背負う。
美少女か美男子の感覚を背中で感じるかと思ったが、着込んでいたため何も分からなかった。ある意味助かった気がする。
「それじゃ、とにかく家を出て」
「はい!」
外はまだ真っ暗の時間帯だった。
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