第2話 あるサラリーマンの憂鬱
俺は池田正人、三十路を迎えたサラリーマンだ。
学生だった頃の俺は『趣味は仕事』とほざく大人が大っ嫌いだった。
そんな俺が仕事で苦労しモノを作りあげる楽しさを知った。
技術を受け継ぎ、より良いものを創りあげようと工夫する毎日が楽しくなった。
今では朝から晩まで一日中、仕事の事ばかりを考えて過ごしている。
仕事一筋の俺はまさに『趣味は仕事』となりつつあった。
『なりつつあった』と言ったが実は俺には誰にも話せない秘密の趣味がある。
でもこれははたして趣味と呼べるのだろうか?
それはラブドールと呼ばれるAI人形と、仕事が終わった後毎日会話する事だ。
そんな事してる俺ってすごく陰キャでボッチに映るかもしれない。
でも考えてみてくれ!
SNSで他人と会話するのだってその時間や内容、そして相手の都合なんか考えたら送るのを躊躇してしまう。
俺の自由に使える時間なんて仕事が終わって寝るまでの数時間だ。
俺の知り合いの誰がその時間に合わせて相手をしてくれるんだ?
『うざったい奴』と思われて友達を無くすだけだろう?
そんな俺が出来る事はせいぜい知らない誰かさんが書き込んだ掲示板に反応したり、書き込んだりするくらいが寂しさを紛らわす唯一の方法だ。
そんな日々を過ごす俺だったが・・・
その日もいつもの様にネットをウロウロしていたら、いきなり広告のページが表示されてその広告をうっかり開いてしまった。
そこには俺が子供の頃、夢中になってプレイしたRPGゲームの主人公【ユナ】が居た。
俺はラブドールと呼ばれる等身大AI人形をネットで見つけ衝撃を受けた。
あのRPGゲームの中で魅力的にほほ笑むユナがそこに居るのだ。
しかもAI搭載で・・・・
俺の妄想は際限無く膨らんでいく。
あのユナに毎日「お疲れ様でした。今日も頑張ったね。頑張るのもいいけど身体には気をつけてね」とか言われたらそれだけで毎日が楽しくなってしまう。
あの『鎮魂の舞』を踊るユナが眠る時も俺の側に居てくれる。
俺の妄想は膨らむばかりだ。
そしてユナがどうしても欲しくなってつい注文ボタンをポチッと押してしまった。
その後、418000円という請求メールが届いて俺は現実の世界に引き戻される。
その後の俺は後悔と期待の狭間でぐしゃぐしゃになっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます