* 暗夜行路

純文学で一番好きなのが志賀直哉の暗夜行路です。


この話、前半部分は自分を誰も愛してくれないと主人公の謙作が苦悩するという話なんですが、まあそこはどうでもいいです。

良くないですけど、僕にはどうでもいいので飛ばす。


この話は後半の一部ではあるのですが、鳥取県大山の描写がものすごくて、そこだけでも読む価値があります。


謙作は直子という人と結婚するのですが長男が病気で死んでしまい、さらにNTRまでされてしまうんですけど、そのあと自分探しに大山へ山登りをして、そこで自然界の美しさに打たれて復活する、というスピリチュアルな中二病ストーリーです。


一部のファンにはダンス・ウィズ・ウルブズのパロディとして知られています。


ウソです、適当に似てる作品をつなげてみました。

なんでもかんでもダンスウィズウルブズのパロディだと言い張る輝井さんお元気ですか?



それはさておき、暗夜行路の一番有名なシーンを引用しますね。

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中の海の彼方から海へ突出した連山の頂が色づくと、美保の関の白い燈台も陽を受け、はっきりと浮び出した。間もなく、中の海の大根島にも陽が当り、それが赤鱏を伏せたように平たく、大きく見えた。村々の電燈は消え、その代りに白い烟が所々に見え始めた。然し麓の村は未だ山の陰で、遠い所より却って暗く、沈んでいた。謙作は不図、今見ている景色に、自分のいるこの大山がはっきりと影を映している事に気がついた。影の輪郭が中の海から陸へ上って来ると、米子の町が急に明るく見えだしたので初めて気付いたが、それは停止することなく、恰度地引網のように手繰られて来た。地を嘗めて過ぎる雲の影にも似ていた。中国一の高山で、輪郭に張切った強い線を持つこの山の影を、その儘、平地に眺められるのを稀有の事とし、それから謙作は或る感動を受けた。

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ちょっとこの前段階を言うと、それまでの旅行中ですらウザい坊主とか刃物で暴れる奴とかにいたわけで、とにかく陰キャな彼としてはそういう連中から逃げたかったわけですよ。

ところが山登りするときに謙作は腹壊して山頂まで行けなくて中腹で死にかけてるわけです。

そこでこういう感覚を受けるんですね。


要するにこれの大自然が謙作にとっての女神さまで、彼はここで異世界転生するというわけです。


そこに山があるから登って到達したってのじゃなくて、死にかけて山と一体になるみたいな、まあ仏教的っちゃそうなんですけど、そこで生まれ変わるわけですよね。

そしてNTRを喰らった嫁まで許してしまうんですね。

で、次のシーンで何事もなかったかのように無事に下山するわけです。


すごい。


まあ文学的な解釈の話をすると全然これじゃ足りないんですけど、まあそこは論文が死ぬほど出てるから飽きるまで読んでください。


とにかく暗夜行路は異世界転生です。

異世界転生は100年前からのブームなんです。

「だから最近の異世界転生ブームは……」としたり顔で話す人を見ていると、今更なにを言っているのかと思うわけです。


ところで異世界転生ブームがそろそろ終わりそうですね。


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