第2話天気

 晴れてる日には、晴れてる気分で、靴を履き替える。アディダスのスニーカー。

 雨の日には、気取って、シャレた傘をさす。赤、黄色、青、あるいは幻灯のようなレインボー。レインコートは着ないで、雨にうたれるのもいい。自由に歌う人生。ヒバリやカナリヤ、鳥たちはレインボーな声で、ランボーな力を受けて流し、追憶の空を渡る。

 思い出。あれは、いつかの雨の日。霧雨の中を行く、半そで姿の少年。全力で、坂を下って、まるで、突き抜けて、行くかのように、崖を越える。そのまま、虹の橋を渡り、宇宙空間へぶっ飛んでいく。そして、校庭で遊んだ。くるくる回る鉄棒。あの頃は、十字架はなかった。ただ、突き抜ける青い空だけがあった。夢が広がっていた。

 天気が変わって、故郷を失い、夢を破れて、見上げた空は、きっと清々しいほど、澄んで見えるだろうな。

 でも、僕は夢の途上にいる。

 少年の頃に見ていた虹は、今、ただそこにあるだけで、見えやしない。

 僕は、歌う。空想の中で生まれるファッション。モードなパリの街並みを想像する、あるいは、ニース。海岸線を走っていく孤独な自転車に乗る僕。

 追憶とのお別れ、出会い。

 一人で生きてきたわけではないけれど、雨上がりの空にかかる虹の神々しさは、不意に、哀しみに沈んだ後に思い出す。

 天気が変わるように、心は変わる。変わらないのは夢を追う気持ちだけだ。

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