第220話 クリスマス大宴会 その七

「──さて、と。大分良い感じになってきましたね。皆さんも、かなり満足気味なんじゃないですか?」

「そうだねー。私はそろそろお腹いっぱいかなぁ。あとはお酒だけで良いや」

「ちょっとー!? 帰蝶先輩ストップ! 待って待って! まだ私とハナビちゃん料理作ってない!」

「そうですよー! いまから私作るんですから、そういうこと言わないでくださいよー!?」

「まあ、一人二人満腹になろうが、別に問題はないですけどね。残ったら俺が全部食べるし」

「……その割には、皆と同じぐらいの量しか食べてなくないッスか?」

「だってセーブしてますし。皆さんがどんだけ食うのか分かんないのに、好き勝手ドカ食いなんかしませんよ」

「そういうところだけは気遣いできるんだよなぁコイツ」


 ひでぇ言い草である。『だけ』とはなんだ『だけ』とは。俺、VTuber関係者に対しては基本的にフレンドリーかつ、気遣いの人を自称しているのだが。……え、それ以外? 知らないですね。

 あと補足しておくと、俺の大食いはあくまで『食おうと思えばいくらでも食べられる』だけなので。別に沢山食べなきゃ満足できないとか、沢山食べないと活動に支障が出るとかではないので、はい。

 だから残らなければそれで良いし、残った場合はもったいないから全部食べるよってスタンスです。


「そうじゃなくてですね。一巡してしばらくしたら、この枠の終わりってことになってるじゃないですか。……あ、二次会は脇に置くとして」

「うん。一応、その予定になってるね」

「全員の料理ができてー、それを味わってー、それでちょっと喋って終わる感じだよねー。そこからは二次会」

「あ、常夏先輩は二次会参加するんですね」

「もっちろん! へべれけになるまで飲むよ!」

「それは別に構いませんけど、度が過ぎたら強制的にアルコール飛ばしますよ? そのつもりでお願いします」

「……余韻に浸りたいところだけど、二日酔いで苦しまないならそれもアリ、かな?」

「人としてのセーブはしてくれって言ってるんですが」


:草

:草

:サンちゃん二次会決定!

:これは酒カス

:草

:吐くなよ?

:草

:山主さんそんなことできんの!?

:草

:草

:確かにそれは揺れるけども

:相変わらず便利だな山主さん

:草

:サンちゃん……

:二日酔いを確定で回避できるとか裏山

:草


 そんな『セーフティネットが張られた』みたいな反応をしてほしいんじゃないんだよなぁ。自分でセーフラインを設定してほしいんですよこっちは。

 VTuber関係者に対して気遣いの人を自称したが、さすがに酔っ払いの世話まではノーセンキューであるからして。

 ちなみに、俺が行う予定の酔い醒ましは、医療行為などには当たらないので悪しからず。ポーションのような医薬品扱いのアイテムを消費するのはアウトだが、俺は解毒の力があるアクセサリーを握らせるだけなので。

 装備してるだけて効果を発揮する系のアイテムは、使用の境界線が曖昧なので立証がほぼ不可能なのである。……これちょっとしたライフハックね。正確にはリーガルハックだけど。


「いや、そうじゃなくて。それについてはいまはどうでもよくて。……枠の最後の雑談タイム、俺に預けていただいてもよろしいでしょうか?」

「というと?」

「実はちょっとしたサプライズを用意しておりまして」

「サプライズ!?」

「山主君が!?」

「ボタンちゃんのサプライズかぁ……」

「……また何か変なことするつもりじゃないッスよね?」

「次は何をしでかす気だお前」

「……ちゃんと加減するんだよ?」

「ボタン信用されてんね」


 悪い意味でしか信用されてないんだよなぁ。これまでの行いと言われればそれまでだけど。


「いやまあ、サプライズとは言いましたけど、そんな大それたことではないですよ? ちょっとクジ引きするだけです」

「サプライズなのにもう言っちゃうんだ」

「企画が始まってる時点でもう良いかなって」


:サプライズ!?

:クジ引きとな?

:山主さんのサプライズか……

:反応草

:草

:草

:いやな信用だなw

:これは草

:ボロクソに言われとるやん

:日頃の行い

:草

:草

:笑うわ

:サプライズかぁ

:まだ何かあるんですか!?

:草


 時間配分とかもあるし、直前まで秘匿するってのは、それはそれでよろしくないのよね。だからここは大胆に開示。驚きよりも優先するのは進行です。


「んで、クジ引きしてどうすんのよ。王様ゲームでもやりたいの?」

「それ俺が燃えるんだよなぁ」

「もう今更すぎて誰も気にしねぇわ。燃えてるのがデフォだろお前」

「あんま否定できない自分が辛い」


 嫌な話である。デビューする前は、こんな燃え続けるキャラをやる予定なんかなかったんだけどな。


「話を戻しますが、実は人数分+マネさん用にクリスマスプレゼントを用意してまして。それをクジ引きで選んでもらおうかと」

「プレゼント!?」

「そういうことは先に言おうよ!? そうすれば皆で持ち寄ってプレゼント交換とかできたじゃん!」

「いやー、これに関してはただの自己満みたいなものなので。俺に合わせて、皆さんに無駄なお金を使わせるのも悪いじゃないですか」

「無駄じゃない無駄じゃない無駄じゃない!!」


 えー。でもやっぱ悪いじゃないですか。


「……いろいろ言いたいことあるけど、ボタンさんや」

「ん?」

「サラッとマネさんにもプレゼント用意してるって言ってたけど、なして? マネさん、向こうでめっちゃ驚いてるけど」

「いや日頃からお世話になってるし」

「それ言われると反論しづらいんだけど! そうなんだけど! それだと同じマネさんの私が超気まずいんだけど!?」

「俺の場合、お世話になってるのレベルが違うから……」


 お世話になってるというか、迷惑を掛けまくってるって言った方が正しいから……。


「まあ、そういうわけでしてね。マネさんに限らず、雷火さんや先輩方には、今年一年クソほど迷惑をお掛けしましたので。そのあたりのお詫びも込みで、クリスマスプレゼントを用意させていただきました」

「気持ちはありがたいけど、そんな気にしなくても良いのに……」

「いえいえ。お詫びの心は大切ですよ。むしろ皆さんの方が気にしないでください。お詫びとは言いつつも、配信映えも考慮してネタ枠もいくつか混ぜてますし」

「台無しだよ馬鹿野郎」


 台無しにしたんですよ。















ーーー

あとがき

クソ。ギリギリ日曜中に間に合わなかった。

そろそろ長くなってきたし、あと二、三話で終われたらなって感じ。

もっと掘り下げほしいって人は、この部分まで書籍化することを祈ってください。そしたら多分書き下ろしエピソードとして追加するので。


なので三巻買って。そんで周りの人たちにも布教して。

よろしくぅ。

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