第204話 ただいま配信中 その三
「ではまず、塩鮭の調理からやっていきます。まあ、焼くだけなんだけど」
ちなみに、今回はキッチンではなくテーブルでそのまま調理します。お茶漬けだしね。あとこの前揃えたキャンプ用品の中に、小さめの七輪もあったし。せっかくだから炭火焼きでいきたい。
てことで、七輪をドン。炭をポイチョ。着火剤をポン。点火してから網をセット。
「じゃ、塩鮭を焼いていきまーす」
:はい神
:鮭の炭火焼きとかえっぐ
:室内でようやるわ
:絶対に美味いやつ
:もうこれだけで飯テロ
:絵面が強すぎる
:炭火焼きって美味いのよな……
:煙凄そう
:鮭食いたくなってきた
:やっべぇ
:腹減ってきた
:コンビニで買ってこようかな……
:最高すぎ
:白飯で食べたい
炭火って謎の魔力があるよな。分かる分かる。いや、謎もなにもちゃんと美味いから好まれるんだろうけど。
ただそれだけじゃなくて、自力でやるには若干ハードルが高いから、余計に惹かれるものがあるんだろうなって。ギリギリ届くか届かないか、みたいな。
実際、家で七輪ってのはなかなかねぇ……。特に室内。俺はまあ、煙とか匂いとか、そういう不都合なアレコレはどうにかできるけども。普通の、料理とかにそこまで拘りのない一般人には難しいよなって。
でも、やっぱり良い匂いではあるんだよなぁ。魚と炭の香りが混ざり合ってなんとも言えない。パチパチと脂が弾ける音も大変Goodだ。
「えーと、これでちょっと待ちます。鮭に脂が滲んで、焼き目が良い感じになるまでだね。で、その間にお茶を淹れてしまいましょう」
急須に茶葉をポイ。そんでお湯を注いで、しばらく蒸らす。ただ若干手隙なので、鮭の具合を見ながら茶葉の解説と洒落込もう。
「この茶葉ですが、ダンジョンの下層から深層にかけてポップする【ハイ・フェアリー】からドロップしたものです。……妖精が煎茶をドロップする部分はスルーで。ダンジョンはわりとそういうとこある」
まあ、花や葉に関するドロップと考えればおかしくはあるまい。茶葉全般を落とすイメージだ。
実際、妖精系のモンスターのドロップはそんな感じだ。食料系のダンジョンなら、茶葉以外にも花の蜜やハーブ類を。普通のダンジョンなら、薬草などの特殊な草を落としたりする。
「あ、そうだ。ダンジョンに出てくるフェアリーですが、分類的にはしっかりモンスターです。見た目はまんまティンカーベルというか、羽を生やした小さなロリショタではあるんだけど……無邪気にこっちを殺しにくるので、見掛けたら外見に騙されることなく仕留めてください。通常のフェアリーは、下層寄りの中層から稀に出てきたはずなんで。注意喚起です」
:なんか怖いこと言ってる
:えぇ……
:そうなの!?
:なにそれトラウマやん……
:ヒェッ
:こっわ……
:それつまり山主はやってるってことだよね……?
:ダンジョンってそんなんまで出るの!?
:うわ絶対無理だよそんなの……
:ついでみたいなノリで流して良い情報じゃない
:こっわ
:精神攻撃にしてもエグすぎる
:いくらモンスターでもそれは……
:そんなモンスターと遭遇したら探索者引退するわ
:人として大事な部分が壊れそう
ドン引きされてら。でも、実際にいるんだから仕方ないよね。そんで知らないよりは、知っていた方が圧倒的に安全だから、うん。
まあ、中層をメインに活動してる探索者なんて、そんなにいないんだけど。このリスナーたちの中に、フェアリーと縁がある探索者はどれだけいるんだか。個人的には、中層が探索者のアベレージになってほしいんだけどねぇ……。
ちなみに、上位種のハイ・フェアリーにってくると、サイズが幼児ぐらいになった挙句、たどたどしくも人間の言葉を喋ってきたりする。……まあ、深層まで行ける探索者からすれば、だからどうしたって話ではあるのだが。
「──ま、それはさておき。そろそろ時間も良い感じだし、塩鮭の方も仕上がってきてるのでね。次に進もうと思います」
てことで、お茶碗に盛った白飯の上に、塩鮭をセット。……正直、この状態で食べてしまいたいんだけどね。塩鮭をオカズにご飯かっ込んで、熱々の緑茶を啜って一息つきたい。
が、今回はお茶漬けがテーマなので我慢。鮭を載せた白米に、ゆーっくり緑茶を回しかけていく。
「……はい。これでお茶漬けの完成です。作っておいてなんだけど、どうなんだろうね?」
見た目は美味しそう。てか、普通にお茶漬け。ちょっと寂しい感じはしたので、先に海苔はかけておく。……うん。余計にちゃんとお茶漬け。
ただ煎餅はまだ早いな。素の方に入ってる煎餅……あられだっけ? アレの代わりに用意してみたけど、味が変化しそうなので一旦様子見。
そんなわけで、ビジュアルに関してはクリア。なんなら食欲を唆るまである。お茶の表面に鮭の脂がじんわり浮かんでて、結構ちゃんと美味しそう。
「では、ずっと訝しんでるのもアレなので、実食といきましょうかね」
えーと、最初はどうしようか? 鮭を崩す前に、まずはプレーンの感じを楽しむべきかな? ……うん、そうしよう。ズズッといきましょう。
「……あ、美味っ。ちゃんと美味い、てかお茶が美味いな!? すっげぇなんだこれ味ふっか!?」
めっちゃお茶! 思ってた数十倍はお茶! 凄い深くて繊細な緑茶の感じする! お茶漬けがどうこうじゃなくて、シンプルにお茶がうめぇ!!
「いやこれ、おぉ……。香り高いというか、うん。口に含むと同時に、鼻の奥にスってお茶の風味が入ってくる。これ多分、湯呑み一杯でウン万とか取れる気がする。実際取れるんだけどさ」
:草
:お茶の感想とは思えないぐらい喋るじゃん
:草
:めっちゃ飲みたい
:お茶漬けの感想まだですか?
:それやっぱり単品で飲むべきじゃない?
:白米いらなくね?
:お茶の評価で草
:草
:和菓子と一緒に食べたい
:一杯ウン万するお茶かぁ……
:絶対に食べ方違うよなそれ
:草
:草
お茶漬けで使うもんじゃないって意見は、正直なところ頷くしかない。それぐらいお茶として美味い。なんなら湯呑み持ってこようかなって思ってるし。
そんでお茶漬けとして評価だけど……うん。ちゃんと美味いよ。美味しい美味しい。不安を感じるほどではなかった。順当に美味しい。
「てか、これってアレよな。よくよく考えたら、白米食べてお茶飲んでるのとほぼ同じだから、不味いわけがないんだよな。身も蓋もない話だけど」
鮭載っけた時も思ったけど、組み合わせとしてはありがちな朝飯だもん。白米と焼鮭と温かいお茶だし。そりゃ美味いよ。少なくとも、まとめて食べても違和感はないよ。
「とはいえ、鮭の塩気と旨味も加わってるから、お茶と白米だけって印象はないかな? ちゃんとお茶漬けにもなってるし、まとまりもある」
ただこのままだと少し塩気が足りないので、今度は鮭の身を崩してしまう。で、完全な鮭茶漬けになったところで、改めてズズッ。
「……あ、うん! これだともっと美味いわ。鮭の旨味がガッツリ出てる。素で作ったお茶漬けとは味の方向性というか、複雑さが違うけど。こっちはこっちで美味い。シンプルな旨味で勝負してるイメージ」
やっぱり鮭は入れて正解だったな。塩気と魚の旨味が追加されて、ちゃんと料理に変化してる。白米とお茶じゃない。茶漬けになってる。
多分、ここにちゃんとした顆粒出汁か、鰹節あたりを入れたらもっと美味くなるんだろうけど……これはこれで全然あり。複雑さはないけど、素材の質でしっかり勝負できてる。
「っ……ぁぁ。良いね、ホッとする。悪くない。全然悪くない。あと一杯か二杯は食べたいかも。梅やわさびで味変とかしたら、もっと楽しめるかな?」
:ええやん
:美味そう
:あぁ……ってなるの分かるわぁ
:日本の誇りやで
:梅茶漬けもええぞ
:酒の〆に作ろうかな……
:分かるー
:わさび茶漬けは最高よ
:お茶漬けはスルスル入るからな
:腹減ってくるなー
:心が満たされるんだよね
:美味そうに食べるなぁ
:この音が食欲を唆るのよ
:ちょっとお茶漬けの素探してこよ
:沢山食いねぇ
うん。やっぱり追加で作るか。わさび茶漬けや梅茶漬けは、お茶漬けの素でも売られてるし。思いつきってほどでもあるまい。むしろこれは、順当な結果というやつだ。
んじゃ、まずは梅から……あー、でもその前に。煎餅も入れてみるかな? どんな味になるか興味もある。それで一通り食べ終わったら、3Dお披露目の告知をして〆だ。
ーーー
あとがき
確定申告倒したぞー!!
で、待ちに待った告知です。先に言っておくと、アニメ化はしません。
まだ小説二巻、コミカライズ一巻しか出てないのに、そんな話出てこないから……。ハードル上げんといて。
で、話を戻して。
推しにささげるダンジョングルメ、二巻重版しました! 皆様の応援の結果でございます。本当にありがとうございます。
ということで、いよーおっ! パンッ!!!
【推しにささげるダンジョングルメ 三巻】 四月三十日に発売決定です!!!!
今回は新規書き下ろしエピソードがてんこ盛り! 約七万文字を使った、Web版にはないストーリーが掲載されております! さらにデンジラスの新メンバーのビジュアルが追加されているため、そちらもお楽しみに!!
※公式のリンクをこっちに載せてOKなのか不明なので、活動報告の方にのちほど載せます。
……ふぅ。やっと言えたぞこんちくしょう!! ずっと言いたくて辛かった! ちなみに結構前から決まってました!
なので『三巻まだー?』の質問が毎度毎度刺さってました! 言いたくても言えないジレンマ! いやー、良かった! これで肩の荷も降りた!
あ、ちなみに四巻の制作も決定しました。やったね。
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