第39話 外部コラボ〜ソナタの宮殿 その二

「いやー、アイアン君と山主君は、前々から目をつけてたんだよね。なので個人的な願望からお誘いさせていただきました。企画もそれに合わせました」

「その結果がクセツヨ扱いって、まあまあ失礼じゃねぇの?」

「私たちにも飛び火してるしねぇ」

「そうは言っても、全員揃ってクセツヨだし……」

「「うん、否定はしない」」


:草

:草

:否定しないというか、できないのよな

:クセツヨ評価は残党

:草ァ!


 トークの初っ端から偉大な先達にぶっ刺される理不尽。いやまあ、俺もまた否定しないけども。アイアンさんの方は……。


「……俺、そこまでアク強いんすかね?」


 あ、絶妙に納得いってないなコレ。不満というより、単純な疑問ってニュアンスだけど。


「んーとね、ソナタはアイアン君の配信は何度か観たことあるけど、まあまあ変わってると思うよ?」

「切り抜きだけど、結構な頻度で酷い目……間違えた。配信映えするイベントが起きてるし、天性のモノがあるなぁって、私は思うかな」

「大丈夫大丈夫。この業界だと不幸属性も立派な武器だから。なんなら俺の後継者とか目指してみないか? ギャンブルやろーぜ」

「そうっすかー……」


:怒涛のツッコミで草

:アイアンは不幸の星のもとに生まれてるから、確かに天性だね

:おいコラ鳥羽ァ! アイアンになんてこと提案してんだ!?

:それ以上はいけない。アイアンは繊細なんだ

:不運な奴にギャンブルなんか進めんじゃねぇよ!

:アイアン君はなぁ! お前のエンタメスキルとはレベチの不幸属性なんだぞ!?


 ゲストからもコメ欄からも、凄い言われようだなぁ。というか、アイアンさんを知ってるっぽいリスナーが本気で止めてるのが……。いや、確かに不幸属性の人にギャンブル勧めるのは鬼畜の所行だけども。


「……もしかして嫌だった?」

「いや、アクが強いと言われるのは全然構わないんすよ。ただその……俺みたいなのと、山主さんが一緒くたになってるのが気になったと言いますか。俺と比較対象にするのも烏滸がましいと言うか……」

「「「あー」」」

「急にこっちにキラーパス飛ばしますね。そして御三方も『あー』とか納得しないでください」


 無自覚かどうか知らないけど、それは謙遜でもなんでもないんですが。あっちの方がぶっ飛んでる、俺の方が常識的と言っているだけなのですがそれ。


「いやでも、確かに山主君はねー。もらった質問の回答を見る限りだと、間違いなく一番ぶっ飛んでるというか……。ネタなのかガチなのか分からないの、本当にスゴイよ」

「全部真面目に書きましたけど?」

「えっ!? 待ってじゃあアレ全部ガチなの!? 割と洒落にならない回答あったよね!?」

「多分あの質問なんでしょうが、まあガチですねー」

「えぇ……」


:ソナタちゃんがドン引きしとる……

:洒落にならない回答ってなんだ

:なにを書いたんだ山主さん

:凄い気になるんだけど

:どんな質問なんだろ

:これは楽しみ


 コメ欄、楽しみにしてくれてるのは嬉しいんだけど、多分キミらもドン引きすると思うよ。……話題に挙げたってことは確実に触れられるだろうから、証拠になりそうなものを用意しとくか。確か記念に写真を撮ったはずなので。


「……はい。まあ、山主君は基本的にトリという形で進行していきます。インパクトが強すぎて、ここまで司会としての手腕が試されるゲストは初めてです」

「ソナタちゃん、そんなになの?」

「そんなにだよ。すぐに分かるから、さっさと進行しちゃうけどね。──ということで、トークを始めさせていただきます! まず最初の質問内容はこちら! 『最近やった中で、一番大きな買い物は? 直近の予定でも可』です! ちなみに、これもトリは山主君です! これでどれぐらいぶっ飛んでるか皆察してね!」

「ちなまないで欲しいのですけど」


 そんな念押しするようなこと書いた記憶はないのですけど。少なくともこの質問に関しては。


「まずチウちゃんから! 『マイク』だそうです! 買い替えたの?」

「そうなの! そっち系の配信を増やそうと思って、ASMR用のマイクを新調したんだー。前よりちょっとお高いやつ」

「えー。いくらぐらいか話せる?」

「んーとね、20万円ぐらいかなぁ」

「うわっ、結構いいやつ買ってるじゃん!」


:つまりASMR配信が増えるってことですか?

:チウちゃんの耳かきボイスが……!?

:マイクたっか!?

:そんなにするのか……

:やっぱりライバーさんって機材に金かけてんだなぁ

:心臓の鼓動をまた聞きたいなぁ


 二回目だけど、コメ欄気持ち悪いなぁ。……それはさておき、根角さんはバイノーラルマイクなのか。

 あの機材はかなり上下の振り幅があって、安い物だと手頃な価格で買えるんだけど、上を目指すと100万超えたりするんだよね。まあ、音響機器は総じてそんな傾向があるけど。

 なお、俺は持ってない。アレ、配信機材の中でも特殊な立ち位置で、言ってしまえば趣味枠に当たる代物だからさ。使えば臨場感が段違いだけど、使わなくても問題ないから、とりあえずスルーしてた。……料理配信もするようになったし、今度買っておくか。


「次はアイアン君! えっと、『パソコン』だそうです。これも配信関係かな?」

「うっす。デビューするにあたって、より高スペックなものに買い替えたんですよ。……面白みのない回答ですんません」

「いやいやいや! そういうの気にしなくていいから。というか、コレが普通だから。ぶっちゃけ、買い物でネタにできるのは極一部だよ。残りの二人がヤバいだけ」

「オイコラ。誰がヤバいだこの野郎!」

「誰が野郎だ! アアッ!?」

「……すんません」


:草

:相変わらずソナタちゃんに弱ぇな鳥羽ァ!

:負けてて草

:気にしなくてええんやで。デビューしたばかりならそれが普通や

:草

:流石は姉御

:鳥羽さんちと弱すぎない?


 そうだよ、鳥羽さん頑張って。ヤバい扱いされて反論できるのは、貴方だけなんです鳥羽さん。俺はキャリア的に無理なんで。


「そんじゃあ、次はそのヤバい奴その一、鳥羽! はいこれ『遊戯ノ神の福袋で200万』! どう考えてもヤバいですお疲れ様!」

「年明けの配信で使ったんですぅ! これも他の前の二人と同じですぅ!」

「明らかに趣味入ってるでしょうが! というか、カードに200万ってマジで言ってる!?」

「TCGってのはそういうもんなんだよ! なんだったら俺とて引いとるわい! 一枚でウン万とか馬鹿じゃねぇの!?」


:草

:草

:あの配信かぁ……

:まあ制作会社が造幣局なんて呼ばれてるぐらいだし

:草

:最近のカード高騰はエグいからなぁ

:いうて50万ぐらい勝ってたけどな鳥羽


 へぇ。鳥羽さんの場合は年明けのアレがそうなのか。メインで追ってるわけではないけど、ソシャゲのガチャやカードゲームのオリパ、福袋開封とかは好きなので、あの配信は俺もライブで観てたんだよなぁ。大当たりを引いたとかで、めっちゃ騒いでたのは憶えてる。

 まあ、それはそれとして。ゲームの紙切れ一枚がウン万したり、カード数枚といくつかのサプライが入ってるだけの福袋が200万したりってのは、確かに狂った世界だなとは思う。マニアの世界は奥が深い。


「いやにしても、よく買ったよね本当に。皆もビックリだよね?」

「そうだねー。流石に好きでも躊躇する金額だよ」

「俺も遊戯ノ神はアプリでやってますけど、それでもちょっと……」

「同じくアプリやってる勢ですが、一般論として中々に手を出しにくい領域かと」

「あ、山主君はおまいう判定だから。鳥羽以上にアレな人は、ちょっと黙ってようね」

「あれぇー?」


 なんか扱いがぞんざいになってません? いや、もちろん配信上でのネタとしてなんだろうけど。それにしたって、ここまでガッツリとオチキャラ扱いされるとは思ってなかったと言いますか。


「200万の福袋でも大分ヤバいと思うんだけど、山主君ってこれ以上なの?」

「……自分で言うのもアレだが、この質問って俺をオチにするために出したと思ってたわ」

「いや、実際その通りだよ。鳥羽をオチにするつもりだった。ただ山主君が予想以上だったんだ。……というか、ソナタも未だにこの回答をよく分かってないんだよね」

「なんて書いてあったんすか?」

「これ。『スタジオ二つ』だって」

「「「……ん?」」」


:はい?

:ん?

:ちょっと何言ってるか分からないですね

:スタジオ?

:なんで?

:意味不明で草

 

 いや、そんな全会一致レベルで疑問符浮かべられても……。普通に書いてある通りでしかないというか。


「山主君さ、これってどういうことなの? スタジオって、多分撮影関係のやつだよね? 二つの場所と長期契約した的な意味?」

「いや、質問の通り買いました。不動産で売りに出されてた料理スタジオと、ミュージックスタジオを居抜きで」


 まあ、正確には買う予定なんだけど。モノがモノなので、特定されないようにいろいろと情報はぼかさなきゃなので。

 ただ、本気で買う予定ではあるし、実際に不動産屋で話を進めてはいるので、嘘というわけではないので悪しからず。


「ガチで買ったの!? なんで!?」

「いや、必要になるかなって……」

「あの、そんな次のシーズン用のオシャレ着みたいなノリで買うには、ちょっとばかし大きい買い物すぎない……?」

「でも、言うて二つ合わせて数億ぐらいなんで……」

「億に『言うて』とか、普通は付かねぇんだよなぁ!? てか、そもそもなんで買った!? スタジオ買ってまでしてなにやるつもりだ!?」

「普通に先々を見据えてですね。ほら、よく歌みたやボイスの収録とか、スタジオを押さえる関係でスケジュールに制限ができたりするじゃないですか。それが煩わしいんで、好きなタイミングで自由に使える自前のスタジオがあったら便利だなって……」

「……山主さん。失礼を承知で言いますけど、あなたってかなりの馬鹿ですよね?」

「アイアンさん?」


 だってお金あるんだもん。てか、そんなドストレートな罵声飛ばすキャラだっけキミ?



ーーー

あとがき

コメントでチラッとあったので、一応、コラボキャラ三名の名前のヨミを。

・コナタ ソナタ

・トバ クロウ

・ネズミ チウ


です。

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