傷だらけのこの世の中で ~link of tears~ 1.告白
偽穢(いつわり けがれ)
第1話 ~プロローグ~ 出会い
「何でっ?! 何でだよっ!? 何でいつもいつも世界は俺に対してこうなんだよぉおおおおおっっっ!!!???」
訳の分からない現実に暴れる。
昨日のように、近くにいる存在に手当たり次第八つ当たりをする。
「『死ね! 死ねっ! 死ねぇぇぇっ!!』」
そう叫びながら殴っていくと、よくわからない人の形をしたモノは音もなく消えていった。
2日続けて見る、あまりにもリアルな悪夢に辟易していた。
心機一転と、せっかく高校に入学したというのに、その日始めて見た夢が悪夢で、それを続けて見せられていた。
「『お前ら全員消えろよっ!!』」
見ているだけで気持ち悪く、存在するだけで死にたくなるような奴らに大声で叫ぶ。
それだけで奴らは音もなく消滅していく。
「・・・はあっ、はあっ」
息苦しい訳でもないのに、肩で息をしてしまう。
精神的に窒息しそうだった。
「・・・っ、くそがっ!」
イライラする。
昨日からこんな夢を見せられて、ずっとイライラしている。
「何で住んでる町が夜にこうなるんだよっ?! 何で誰もこれがおかしいと思わないんだよっ!?」
夢だとは思えない現実に、自分でも分からない事を叫んでいた。
もう普通に考えるのも嫌だった。
この世界の暗すぎる闇に、思考が投げやりになっていく。
もうどうでもいい!
もう終わればいいんだっ!
どうせこのまま生き続けたところで、俺には救いなんてないんだ!
だったら・・・このままこいつ等を相手に暴れ散らかして死んでやる!
頭のどこかから、こいつらを倒せと昨日から言われ続けていた。
それに従うのが嫌で抗い続けていたけど、終われるのならばもうそれでも良かった。
俺は夜の町を駆け回り、積極的に奴らを消していく。消えれば次を探して、見つけ次第に叫びながら消していく。やがて奴らも俺に対して抵抗してきて、殺し合いが始まる。
この世界に居続けるくらいならば、もはや死んだほうがマシだと考えた。もしもこいつらが俺を殺せなかったら、その時は———
殴り合いの末、俺が生き残る。どうやら俺はこいつらよりも強いらしい。だから、俺は死ねない。殺してもらえない。だったら・・・!
決意を固め、手を強く握りしめて言葉を口にする。
「『こんな世界なんか———』」
「・・・大丈夫ですか?」
優しい声を背後からかけられる。
この世界に似つかわしく無い、優しい女性の声が。
俺がその声の主へと振り向くと、綺麗な女の人が立っていた。白くて長い髪をした、色白の女性だった。
同じ高校の制服を着ており、上級生だと思えた。それくらい美人で大人びた女性だった。
「・・・あっ」
その女性は俺の姿を見て、涙を溢れさせる。溢れた涙が雫となって、ポロポロと下へと落ちていく。
その姿はとても綺麗で、見ているだけで俺の黒い感情が浄化されていく。
「・・・・・・」
何もできず、ボーッとしている俺へと近づいてくる。敵意は感じられないのに、何処か俺は恐怖を感じていた。
怖いのに、何故か逃げようともしていなかった。
なんで? 何で俺はこの人を怖がっているのだろう? こんなにも優しげな人を・・・・・どうして?
「・・・怖がらないで。痛いことも、酷いことも・・・何もしませんから・・・・・・ね?」
そう言って目の前まで来た女性が、俺を安心させようとしてか、優しく微笑んでくれる。涙を流しながらのその微笑みは、まるで救いの女神のようだった。
「あ・・・」
その神々しさに、俺も涙を流してしまう。泣いたらダメなのに、勝手に溢れ出す。
その涙を見て、女神のような女性が俺を————
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます