第97話 華姫祭・5
ステージには馬車に乗っていた平民の女性だけが立っていて、貴族子女から選ばれた華姫は居ない。
ふぅ~ん.....まぁ公開告白タイムに参加するのは平民が殆どだし仕方ないと言えば仕方ないんだろうけど....参加しない時点で華姫に選ばれる資格ないんじゃないの?
表情には出さないがそう思ってしまう。結局貴族子女にとっては祭の趣旨なんてどうでも良く、より上との繋がりだけに華姫になりたいだけなのだろう。まぁ街の人達が祭を楽しんでるから別に構わないけど.....。やっぱり今後も極力貴族には関わらない方が無難かな。依頼に関しては仕方ないけど、それ以外では絶対関わらないわ!
ステージ上では4人の華姫が順番に前に出てきて告白タイムが始まっている。
「最初の華姫は花屋の看板娘のシェリーちゃんだ!彼女に求婚するのは誰だ~!」
「俺だ!」
「おお!!名乗りを挙げたのは料理人のサイラスだぁ~!」
「ちょっと待ったー!!」
.....ねる○んかよ.....
昔どこかで見た光景に私は苦笑いしか出ない。
いや本人達は至って真剣なんだろうけど.....
ちなみにこの公開告白でフラれた人はスッパリキッパリと諦めないといけないらしいが、全員がごめんなさいをされた場合のみ、リベンジが出来るらしい。今より良い男になって告白するんだとか。ちなみにマリッサさんから聞いた話しによれば、この祭で公開告白されて全員が御免なさいになった後に再度告白して結婚した人もいるらしい。
.....もう良いかな....
これ以上見る必要はないなと思い、他の人の邪魔にならないようにゆっくりと人混みの中から抜け出し、ステージから離れていく。
『もう良いのか?主』
「うん。後は同じような事しかしないから別に良いかなって」
他人の恋愛事情をじっくり鑑賞しても仕方がないと言うか興味ないと言うか....
まぁ1組でも上手く行けば良いよねって感じかな?
「ちょっとそこの貴女」
ん?
声のした方へ振り返れば貴族子女の華姫達が椅子に座ってお茶をしていた。ご丁寧にテーブルクロスの掛かった綺麗なテーブルセットを御用意されて。
ええ~……こんなバックヤード的な場所でアフタヌーン的な物をしてんの?
「そうよ、貴女よ。お茶のおかわりをお願いね」
いや、お願いされても。
「....私はお祭りの主催関係者でもないし、貴女方の召し使いではないのでお断りします....取り敢えず主催関係者には伝えておきますが」
そう言ってその場を立ち去ろうとする私に令嬢達は声をあらげる。
「何ですって!何よ平民のくせしてこの私に対してその口の聞き方は!」
「そうよそうよ!この方は華姫祭の主催をされてる辺境伯家所縁の子爵家のご令嬢なのよ!」
.....辺境伯家大丈夫??こんなのが縁故なんて...
しかも子爵家、自分の娘を華姫に選んだのか....
「.....だからなんですか?私自身は子爵家様とは無関係ですし、貴女方の屋敷に勤めている使用人でない限り命令される謂れはないですよね?そもそも平民だからと罵って、その平民のお祭りに出てる貴女方は何なんですか?不愉快なので失礼します」
反論したら絶対後で面倒な事になるとはわかってはいるけど、こう言う上から目線で命令してくるヤツ嫌いなんだよね!
一応礼儀としてお辞儀だけはしてその場を後にする。何やら後ろで騒いでいるが無視するに限るので、放置してその場を後にした。
勿論すれ違った祭の主催実行委員の人にお茶のお代わりの伝言はした。
その翌日、私は辺境伯家へと呼び出されたのだった。
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