第53話 閑話:シリウス・フラムスティード

俺の名前はシリウス・フラムスティード。

今は休業中だがSランク冒険者で種族はハイエルフだ。勿論カードの更新の為の依頼だけは受けているので厳密に言えば休業中とは言いがたいが。


現在はグレイス王国のレグルス辺境伯が治める領地にある要塞都市ミルトンの冒険者ギルドのギルドマスターをしている。


レグルス辺境伯とは冒険者時代の討伐依頼で知り合い懇意にしていた。レグルス辺境伯は夫人と子供が3人おり、性格も温厚で領民にも慕われている領主だった。勿論辺境伯と言う立場上、国境沿いでの争いや魔獣相手の戦闘になれば自領の騎士団と共に自ら先頭に立ち指揮をしている御仁だ。


10年前に要塞都市ミルトンが魔獣の大発生で打撃を受けた際にレグルス辺境伯から直々にギルドの立て直しを依頼され、今現在に至っている。


人間にとっての10年は長いが、寿命の長いエルフにとってはそれぐらいの時間は大した事でもなく、ギルドマスターの役割もそれなりに楽しんでやってきた。


冒険者を外から見るのと内から見るのとではやはり違いもあり自分の冒険者としての勉強にもなった。ただ、ギルド本部とのやり取りだけは俺でも苦手な部類に入った。何故ならメンドクサイの一言だろう。あいつらは自分で動かない癖に要求だけは一人前なんだ!文句があるなら自分達で動けと言いたい。


そろそろギルドマスターを降りて冒険者に戻るのも良いかも知れない。そう思っていた矢先に問題を起こした冒険者パーティが居た。


このギルドでは高ランクに入るBランクパーティの「紅き疾風」だ。彼らは自分達の取り巻きである女性達と一緒に度々問題を起こしていた。主に女関係でだ。なまじ4人共に顔が良いだけに寄って来る女だけに止まらず自分からも声を掛ける始末で、それに対して取り巻きの女達が「声を掛けられた女」の方に嫉妬から問題を起こす。


本当に馬鹿なんじゃないかと何度思ったか。


Bランクパーティと言うある程度実績を残しているから厳重注意で済んでいたが流石にこれ以上問題を起こせば降格もやむ無しだろう。


そう注意したにも関わらず取り巻き女が暴走し、新人の冒険者の少女が狙われシーフウルフをけしかけられ怪我をした。


信じられないことにこの少女が全てのシーフウルフを倒したのを見た時は正直驚いた。名前はリンと言うまだ10歳の少女の驚異的な魔法の才能に俺は久し振りに感動したんだ。


そう、この俺がだ。


それからと言うもの、俺はリンを冒険者として育ててみたいと思った。それとなくギルドの寮に入らせ指導する。リンは気がついていないみたいだがギルド職員のマリッサは何となく俺の行動に気がついてるみたいで協力をしてくれている。


そうしていく内にリンも段々と俺とマリッサには心を許してくれるようになったと思う。俺も今ではリンを妹みたいに可愛くも思っている。勿論ギルドマスターとして依頼の贔屓はしないが。


エルフの俺から見てもリンの潜在能力は未知数で計り知れない。


けれどリンなら最年少Sランク冒険者の記録を塗り替えるんじゃないかと今から楽しみで仕方ない。





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